《創の転生者〜最強魔導師の転生記〜》第8話 自分の力

翌日。日が昇ったばかりという朝早い時間から、僕とセレスさんは昨日の草原に來ていた。今日から鍛錬が始まるのだが・・・

「こんなに早いとは思いませんでした」

「鍛錬に緩いものなんてないわよ。私が直接指導するんだから、ビシバシいくわよ!」

僕は早起きなどは特に辛くない。もっと辛いことが朝から行われていたのだ。むしろ痛みで起こされないのでスムーズに起きることができる。

「まあでもよかったわ。朝から元気で」

「二度寢とかは基本的にしませんよ」

「・・・そうね。ユリエルが二度寢するのは考えられないわね」

なんとなく僕が言いたいことがわかったのだろうが、これから鍛錬を行うのにこんな暗い雰囲気ではいけない。そう思い、話を進める。

「それで・・・まずはどの屬からですか?」

最初にどの屬を使うのか。ちょっとだけワクワクしている。昨日インプットした知識がどこまで使えるのか楽しみだ。

「そうね・・・じゃあまずは風屬からいきましょうか」

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「風ですか・・・」

セレスさんの適正なのでなんとなく予想はしていたが、正直し落膽した。個人的には水屬を使いたかったのだ。

「なんか嫌そうな顔してるわね・・・まあいいわ。まず風のイメージだけど・・・で今風をじているわよね?」

「はい。かなり緩い風ですけど」

今現在、この辺りには緩やかな風が吹いている。この風をじているからいったいなんだというのだろうか・・・

「今から私はこの風を強風にするわ」

「え?強風に・・ですか?」

「そう、強風よ。飛ばされないように注意してね?」

そうセレスさんが言った途端、あたりの風が急激に強くなった。これはかなりの風圧だ。

しばらくすると風が止み、先ほどまでの緩やかな風に戻った。

「どう?これが屬魔法よ。あなたのルーン魔法なら再現もできるんでしょうけど、こちらの魔法ならできる人がたくさんいるから安心して使えるわ」

確かにすごいとは思った。ルーン文字に頼らなくても魔法が使えるようになるのだから、外で生きていくことになるならこれは習得しておいた方がいいだろう。

「あんまり強い魔法は魔力の消費が多くてあんまり使えないんだけど、ユリエルなら問題ないわね。何かイメージをしてやってみて・・・」

その時だった。

グルアアアアア!!!

何か大きな鳴き聲が聞こえた。と同時に、近くの木が丸ごと焼かれ、灰になった。一何が起きたのだろうか・・・と僕が狀況を理解できていないと。

「噓でしょ・・・なんでこんなところに・・・」

セレスさんがかなり狼狽していた。彼は先ほどの魔法からして、かなりの魔師なのであろうが、彼がここまで狼狽するとは・・・

そして、それは姿を見せた。黒い鱗のような質な皮に覆われた、金の眼球、そして口からは火のが吹き出ている。

おそらく、あのモンスターが周辺の木を焼き払ったのだろう・・・あれはいったいなんなのかは、セレスさんが教えてくれた。

「ブラックサラマンダー・・・こんなところにいるはずは・・・」

「ブラックサラマンダー?それがあいつの名前ですか?」

「そうよ。ブラックサラマンダーは口から火を吹き、に覆われているSSランクの化けよ」

SSランクというのは、モンスターの強さや危険度を表したランクの上から2つ目のランクらしい。確かに見た長 7メートルはあるだろう。

だが、僕は逃げるなどではなく全く別のことを考えていた。

「そうだ!!あいつを魔法の実験に使いましょう!」

「なにを言っているのユリエル!!あれはあなたに倒せるような奴ではないわよ!!私が全力でやってなんとか倒せるくらいなのよ!!」

つまり、セレスさんのランクはSSランクということか・・・道理で強いわけだと心思う。が、僕には関係ない。

「いざとなったらルーン魔法を使いますから大丈夫ですよ」

「それでも危険よ!?そもそも5歳の男の子が相手にするような相手じゃ・・・」

「行ってきます」

「あ、こら!!」

セレスさんの制止を無視して僕はブラックサラマンダーに向かう。あちらはこちらに気づいたようだが、脅威として見ていないようで興味を示さない。

これはかなりありがたいことだ。昨日得た知識から、やって見たいことがあったのだ。

この好機を逃さずに、ブラックサラマンダーに魔法をかける。魔力を知したのか、ブラックサラマンダーがこちらに炎のブレスを放とうとしているが既に遅い。チェックメイトだ。

「【絶対零度アブソリュート】」

瞬間。ブラックサラマンダーを中心に全てが凍結していく。本も、ブレスも、そしてサラマンダーのの中や、あたりの木々が、完全にきを止めている。風で揺れることもない。

し・・・威力が強すぎたかな」

一撃。たった一つの魔法でSSランクのモンスターがその命を散らせたのだ。そして僕のにも、氷や霜が付いているが冷たさはじない。僕の魔法だからだろうか。考えていると、セレスさんが見えたので駆け寄る。

「ユリエル・・・あなた一何をしたの・・・?」

最もな疑問だろう。あのブラックサラマンダーを丸ごと凍結させる魔法なんて聞いたことがない。僕は説明することにした。

「あの魔法ですか?あれは凍結魔法【絶対零度アブソリュート】です。あの一帯の気溫を限界まで下げて、原子核の運を停止させる魔法です。昨日思いついた魔法なので、完度は高くないですが」

淡々と今起こしたことについて説明する。しやりすぎてしまっただろうかと反省する。セレスさんは驚きすぎているのか、僕を見つめて固まっている。

いや、しだけ手が震えているようだ。こんな魔法は見たことがないと言うように。

恐怖を與えてしまったのかもしれない・・・

僕がそう考えなんて聲をかけようとした時・・・

「これ・・・あなたがやったのよね?」

「は、はい・・」

セレスさんは落ち著いた聲で僕に問う。僕は若干怯えながら返事をする。それに続いた言葉は

「あなたは天才よ!!」

「んんぐ!!」

力強い抱擁だった。

その後は散々褒めちぎられた後に、セレスさんは僕を抱っこしたまま家に向かったのだった。

ブラックサラマンダーの亡骸は、氷に覆われたままだった。

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