《魂喰のカイト》4話 異世界での名前
目の前にいるのは赤い髪をポニーテールにしている、可らしいの子だ。
それでもって、いきなり弟子にしてくれと言いだした子でもある。
「あ、すみません。私、ルティア=バーゼルと言います」
ルティアと名乗ったは丁寧にお辭儀をした。
と、ここで俺は戸う。
俺、名前ねーじゃん。
どうしよう。
「あー、ごめん。事があって名前が言えないんだ」
「え? ああ、はい。分かりました」
とりあえずごまかすことにした。
「それで、弟子にしてくれってどういうことかな?」
「実は私、魔法學園の生徒なんです。1週間後に卒業試験があるんですが――」
と言いかけたところで、ルティアと同じ制服らしきものを著た集団がやって來た。
男2人と2人だ。
「あー! 落ちこぼれのルティアじゃーん。またこんなところで下手くそな魔法の練習でもしてるのかなー?」
の派手な方が嘲笑を浮かべながら話しかけてくる。
ルティアはすっかりこまってしまった。
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「ぎゃはははは! いくら練習したって才能が無いんだから仕方ねぇだろ!」
「ほんと、練習するだけ時間の無駄だって。試験諦めておうちで泣き寢りでもしてたらぁ?」
「それ、言えてんな!」
なにやら好き放題に言っている。
うーん、どうやら同じ學校の同級生っぽいけど……どうしよっかな。
そう考えながらルティアの方を向くと、半泣きで悔しそうな顔をしながらうつむいていた。
――仕方ないな。
「あのさ、お前ら。あんまり人を下に見てると痛い目みるぞ?」
「あ? なんだてめぇ」
金髪蒼目の年が突っかかってくる。
でも、年下だからあんまり怖くない。
俺は一歩前にでて、宣言する。
「ルティアの師匠だ。それと、この子は落ちこぼれじゃないぞ? 試験だってきっと合格する」
「合格だってぇ!? あはははははは!!」
俺が言った後、4人は大聲で笑い出した。
指をさして地面に座り込んでいるやつもいる。
どうやら俺の発言がそこまでおかしいものだったらしい。
「ひ、ひひひひひ!あのルティアが、ひひ、ご、合格だってぇ!? 未だに中級魔法がろくに使えないようなやつがぁ!?」
「あっはっはっはっは!面白いこと言うなぁ! 黒髪のにいちゃん!」
「お前らが面白がるようなことを言った覚えはないけどな。俺はいたって本気だ」
「そんなスキルすらまともに持ってないやつ、どうしようもねぇって! ああ、なるほど! お前も雑魚だからわからないのか!」
この世界の基準は見てないから分からないけど、そんなことをほざけるくらいにはコイツも強いのか?
気になるな。
鑑定してみるか。
名 前:ビリー=マクレーン
種 族:人間
稱 號:魔法學園首席
スキル:【火魔法LV2】
【水魔法LV3】
【雷魔法LV1】
【剣LV1】
――ってお前が雑魚じゃねぇか!
首席でこれかよ!
こっちが笑い転げたいわ!
まったく……。
それはそうとルティアの方はどうなんだ?
落ちこぼれって言われてるくらいだからこれよりも低いのか?
ルティアの方に向きなおして鑑定を発する。
――あれ?
「まあいいや、やれるもんならやってみろよ。俺らは絶対に合格できないと思うけど!」
そんな捨て臺詞を吐いて4人とも去っていく。
はあ、こんな小が首席なんて魔法學園ってのは相當酷いところなんじゃないのか?
「あの、すみません。嫌な人たちに合わせてしまって……」
ルティアが申し訳なさそうに言ってきた。
「ああ、気にしないで。それと大事は分かった。り行きでも師匠だって言ったからにはできる限りのことをやらせてもらうよ。俺もちょっとカチンときたし」
カチンと來たのは事実だ。
あの舐めたガキどもを黙らせてやりたい。
「い、いいんですか!? 私、落ちこぼれですけど……」
ルティアはしゅんとした顔になる。
「ははは、自分で言って自分で落ち込むなよ。大丈夫、ルティアは落ちこぼれなんかじゃないさ」
「でも、さっきの人たちが言ってたように中級魔法も使えないし……」
「中級魔法くらいルティアならすぐに使えるようになるよ」
俺は確信している。
先ほどルティアを鑑定したとき、”魔力病”と名前の橫に書かれていたのだ。
《狀態異常:魔力病 の魔力が極端に減する病。現在は特効薬がある》
ということらしい。
ちなみにスキルの方はすべてビリーを上回っていた。
要するにこの病さえなければ首席はルティアだったのだ。
そのことを説明すると、ルティアは目を輝かせた。
「じゃ、じゃあ、治してしまえば合格できるんですね!?」
「ああ、そういうことになるな」
だが、問題はその薬の手法だ。
もしかしたら一般人じゃ手にらないものかもしれない。
だから俺が手助けをする。
「試験に介したりは出來ないけど、薬探しは手伝うよ」
「ありがとうございます! えーと……師匠?」
ルティアは俺の名前を呼ぼうとして困ってしまった。
名前が無いと不便だな。
いっそのことこの子に付けてもらうのもありなんじゃないだろうか。
師匠と弟子っていう間柄になったわけだし。
うん、そうしよう。
「俺、さっき言った通り事があって名前が無いんだ。良かったらルティアが付けてくれないかな?」
「えっ私がですか!? うーん……そうですね……”イルム”とかどうでしょう?」
「”イルム”……いいな。それでいこうか」
いい響きだ。
異世界では”イルム”として生きていこう。
「ふふ、じゃあイルムさんですね!」
「ああ、そうだな。よろしく、ルティア」
向かい合って笑いあう。
「よし、じゃあ早速街に行って特効薬とやらを探すか!」
黒翼を発させた。
「あの、さっきからずっと気になってたんですけど、その翼なんなんですか?」
「ああ、これ? 俺のスキルだよ。気にしないで、原理とかは俺もよくわかってないから」
だって邪神アンラマンユのスキルだし。
「ひゃっ!?」
ルティアを抱え上げる。
薬探しにどれだけ時間がかかるか分からないからな。
しでも早く街につきたい。
「街はどっちの方向?」
「あ、えーっと、あっちです!」
ルティアが俺に抱えられた狀態のまま、後ろを指さした。
「了解、しっかりつかまってろよー?」
「は、はい――って、ひゃああああ!?」
翼を大きく羽ばたかせて、浮遊する。
それに合わせてルティアが落ちそうになるが、必死に俺にしがみついた。
さっきも思ったけど風圧が凄いよな。
ヘリのプロペラの數倍ある。
「よーし、じゃあ移するぞ。まあ、あれだ。落ちないように頑張ってくれ」
「はっ、はいいい!」
俺の聲かけにルティアが必死な様子で返事をした。
大丈夫だろうか?
まあ、落ちたら拾えばいいか。
ルティアには悪いが、俺は快適な空の旅を楽しませてもらおう。
を前に倒してもう一度翼をはばたかせる。
ブオンという大きな音が鳴り、大きく飛翔した。
「きゃあああああああ!」
相當な恐怖験のようだ。
それもそうだよな。
こんな高度を高速で飛んでいるから仕方ないだろう。
俺はルティアのび聲を聞きながら街へと最短で向かった。
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