《魂喰のカイト》8話 努力果の確認
「ううっ……ぐすっ、もう大丈夫です」
ようやくルティアが泣き止んだ。
軽く10分は泣き続けていた。
おかげで俺の服はぐちょぐちょだ。
だが、ここでそのことにれるほど俺は無粋じゃない。
「よし、ルティア。早速魔法、試してみるぞ」
「はい! 先ほどの草原が1番練習にいいので、そこに向かいましょう!」
ルティアは涙を拭き、期待と自信に満ち溢れた瞳で俺を見つめた。
そこには不安なんてとうにない。
「店主、調合をしてくれてありがとうございました。これからもなにかあったらここに來ますね」
「えぇ、ありがとうございまぁす。その言葉が嬉しい限りですぅ」
そう言って店主は顔をほころばせる。
本當にうれしいようだ。
「では、また」
「はぁい。またのご利用をお待ちしておりまぁす」
俺たちは店を出た。
それから歩くこと30分。
門を超えて黒翼を展開した後にルティアを抱え、數時間前に出會った場所まで戻った。
ちなみに空の旅が快適だとじたのはまたしても俺だけだったようだ。
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「イルムさん……歩いて行ってもよかったんですよ……?」
し疲れたような表でルティアが言う。
でも歩いて行ったら倍以上時間がかかるからな。
俺は意外とせっかちなのだ。
「とりあえず魔法使ってみたらどうだ?」
「あ、はい! そうですね。じゃあ試しに火魔法でも打ってみますね」
そう言ってルティアは手を前に構える。
その狀態で目を瞑り、一度深呼吸。
先ほど薬を飲んだときと同じ作だ。
癖なのだろうか。
俺がそんなことを考えているうちにルティアは瞑想を終えたらしい。
カッと目を見開いて腕に力を込めた。
即座に吹き荒れる火炎。
俺が出す闇の玉のようなものではなく、持続する炎。
その規模は大きく、炎に耐のない生がくらってしまったらひとたまりもないだろう。
數秒間その業火を放出したあと、ルティアは腕を下ろす。
「イルムさん、私、やりましたよ! いつもの9倍、いや10倍はでてます!」
どうだ、と言わんばかりの顔を見せてきた。
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俺はそれに対し、賞賛の言葉をかける。
「ルティアがこれまで努力してきたおかげだよ。実るのが々遅かったけど、これがその果だ」
そう、ルティアは努力をしてきていたのだ。
會って數時間の俺には詳しくは分からない。
でも、俺が出會ったときもこんな魔が出るような場所にわざわざ使えもしない魔法を練習しにきていた。
思い通りにいかないことを練習する苦の日々を送ってきたのは明白なのだ。
彼のこれまでの努力は今実ったのだ。
「本當に良かったですぅ……これで卒業試験も……!」
「きっとかるさ」
「はい! 絶対にかって見せます!」
ルティアの決意表明。
心配はしていない。
スキル上では首席のビリーってやつより全然上だしな。
そのあとも、ルティアは様々な屬の魔法を使っていた。
その顔は笑顔で、魔法を使うことが楽しくて仕方がないようだ。
本當に治ってよかった。
そう思った。
と、そこで俺にもやらなければならないことがあることに気づく。
そう、武創造クリエイトウェポンだ。
これは俺の今後にかかわる重要なことである。
そばで魔法をぶちかましまくっているルティアは置いておいてこっちはこっちのことをさせてもらおう。
概要はさっき鑑定で確認した通り、魔力を籠めて実の武を作るということだ。
暗黒剣並みは無理だろうが、俺の強力な魔力である程度の品質の武ができるんじゃないかと予測している。
果たしてどんな武ができるかな?
手のひらに魔力を集めて武創造クリエイトウェポンと念じる。
頭に思い浮かべたのは何の変哲もない鋼の剣。
籠めた魔力は俺の持っている魔力の1/100くらいだ。
手からのようなものが出てきて剣の形を作っていく。
俺はそのを握った。
數秒するとだんだんと手に持つに重みができてくる。
どんどんと剣が構築されていく様を見るのは不思議で、興味深かったので見ってしまう。
気づいたら既には鋼の剣へと変わっていた。
鑑定をしてみる。
《武:魔鋼の剣 作者メーカー:イルム 等級ランク:準伝説エピック 武創造クリエイトウェポンによって創造された武。注がれた魔力の純度が高いため希な魔鋼に変化している。命名はされていない》
はあああ!?
1/100の魔力で作った武が準伝説級エピックだと!?
伝説級レジェンドの1個手前じゃないか!
しかもイメージが鋼の剣でだぞ!?
まじかよ。
半神人デミゴッドの魔力ってすごいのな。
――もし、全力で武創造クリエイトウェポンをしたらどうなるんだろう。
ふとそんな考えが浮かぶ。
気になる。
すごく気になる。
特になにもないのに辺りを見回す。
いるのは気に魔法をぶっぱなす15歳にしては些か小さすぎる赤ポニーテールののみ。
ゴクリと生唾を飲む。
やってみるか……。
1度自分が思う最強を作ってみよう。
再び武創造クリエイトウェポンを念じる。
籠める魔力は殘り魔力の99/100。
全部使ったら何が起こるかわかったもんじゃないので一応1だけ殘す。
構築する武のイメージは魔剣。
き通った真紅スカーレッドの刀に漆黒の芯がっている。
持ち手は刀と一型。
り止めにグリップに包帯を巻くことも忘れない。
これらのことを頭の中でイメージをして一気に魔力を流し込む。
先ほどと同じようにが集まってきた。
だが、そのはどことなく黒く、禍々しい雰囲気を醸し出す。
――って、重いなっ……!
魔鋼の剣であるショートソードとは違って重い。
大剣と同じくらいあるんじゃないだろうか。
イメージしたのは長剣ロングソードなのにな。
と、そんなことを考えている間も形が構築されていく。
數秒経った後も、怪しいを時折出しながら変化を続けた。
それからしばらくたち、形が落ち著く。
しばらくと言ってもほんの數十秒だろう。
張して時間の流れが遅くじたのだ。
の中から魔剣と呼ぶにふさわしい暗黒の気に包まれた剣が顕現する。
構想通りのしい真紅スカーレットが日に照らされてる。
俺は恐る恐る鑑定を発させる。
《武:魔剣 作者メーカー:イルム 等級ランク:伝説級レジェンド 武創造クリエイトウェポンによって創造された武。七翼剣に匹敵する力を持つ、半神人デミゴッドにより鍛えられし剣。命名はされていない》
……作っちまったよ、伝説級レジェンド。
魔鋼の剣が準伝説級エピックな點でし予想は出來ていたのだが……本當にできるなんてな。
とんでもないな、このスキルクリエイトウェポンも、半神人デミゴッドの魔力も。
よし、決めた。
本格的に武屋を始めよう。
浮かない程度に強い武を作って売りまくればきっと大儲けできるし、裝備して旅をする冒険者の生存率も大幅向上。
いいこと盡くしだ。
やるっきゃないな!
俺はその日、武屋を開くことを決心した。
と、そうだな。
この剣に名前を付けておこう。
これだけの2振りの名剣に名前をつけないなんて罰があたりそうだ。
魔鋼の剣は……そうだな、魔人ノ剣デーモンブレードでどうだろうか。
魔力をけて刀が若干紫がかってるし、似合ってるだろう。
魔剣の方は紅ノ剣スカーレットだな。
紅い刀にマッチしている。
と、銘をつけたとき、二本の剣が鈍くった。
《武:魔人ノ剣デーモンブレード 作者メーカー:イルム 等級ランク:準伝説エピック 武創造クリエイトウェポンによって創造された武。注がれた魔力の純度が高いため希な魔鋼に変化している》
《武:紅ノ剣スカーレット 作者メーカー:イルム 等級ランク:伝説級レジェンド 武創造クリエイトウェポンによって創造された武。七翼剣に匹敵する力を持つ、半神人デミゴッドにより鍛えられし剣》
どうやら武の名前が認められたらしい。
もしも武屋を開いたとしてこの武はどうしようか。
人に売るには強すぎるよなぁ。
うーん。
あ、そうだ。
見本として飾っておくのはどうだ?
俺はこんなにすごい剣を作れるんだぞ、っていう証明にもなる。
いいな、それ。
と、俺が頭の中で計畫を練っているうちにルティアが駆け寄ってきた。
「イルムさん! 凄い魔法がいっぱ――って、なんですかその剣! すごく綺麗です!」
「お、嬉しいことを言ってくれるね。俺が作った剣なんだ」
「なんだか見ていると引き込まれそうです……鍛冶もできたんですね。やっぱりイルムさんは凄い人です」
どうやらルティアはこの2本の剣を鍛冶で作ったと勘違いしているらしい。
実際にはたった今スキルで作ったんだけどね。
だが、鍛冶で時間をかけて作ったと考えるのも仕方がない。
普通はこんな草原の真ん中で武を創造、それも一瞬でできるなんて思いもしないだろう。
変に話がこじれそうなので誤解は解かないでおくが。
「あはは、俺自の力じゃないんだけどな。利用はさせてもらってるけど」
そう言うとルティアは首を傾げた。
俺自の力じゃない、という言葉に引っかかったのだろう。
でも、俺が名前を失うほどの訳ありなことを知っているルティアは追及してこない。
ありがたい限りだ。
「よし、じゃあ王都に戻るか」
「ええ、そうしましょう!――って、そうでしたぁああ!」
俺に擔がれてから気づくルティア。
ふはははは! もう遅いのだよ!
俺は既に展開させていた黒翼を羽ばたかせて王都に向かった。
移の最中ルティアが後ろで泣きんでいたとかいないとか。
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