《魂喰のカイト》12話 店営業
さて、武は全部作り終わったな。
目の前にあるのは武の詰められた袋が3袋。
それぞれ15本ずつ剣と槍を詰めている。
ほとんどが特殊級ユニーク品であるけど、それぞれに準伝説級エピックを1本ずつ潛ませている。
目利きができるある程度の実力者なら迷わずに選ぶだろう。
袋を背負い、路地裏から出る。
し強い日差しに目がくらみそうになり、慌てて腕でを遮る。
路地裏には日が通ってなかったし、仕方ないことだろう。
店を開くための空間を探しに王都をし歩く。
大通りには無數の店が開かれているため、なかなか俺が開ける空間はない。
大通りはあきらめてし人がない場所に行くかなぁ。
そう考えていると、丁度今日の商売を終えたのか、店をしまっている人がいた。
まだ朝だよな?
そう思い商品があったであろう皿のようなものを見てみると、しだけ食べが殘っていた。
どうやら軽食を売っていたみたいだ。
こんなに早く売り切れるとは人気だったんだろうな。
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軽食屋さんが片付け終わったのをみて、店を開くために床に布をひく。
そこに商品となる剣と槍を並べて、俺の隣に紅ノ剣スカーレットと蒼翠ノ槍マラカイトを置いた。
さて、結構な人が通っているけど、俺の商品は目に留まるかな?
袋から出して並べる作業が終わり、數秒もしないうちに人が來た。
分厚い皮の鎧に鉄製の剣を持っていて、20後半くらいの男だ。
恐らく冒険者だろう。
「へぇ、いい武じゃないか」
「そうでしょう? 全部私が打ったんですよ」
「それは凄いな。これほどの剣が打てるなんてそれは名の売れた――むっ、この剣は?」
冒険者が反応したのは準伝説級エピックの剣。
シンプルな見た目だから分かる人にしか気づかれないと思ってたけど、いきなり発掘されてしまったらしい。
「その剣を手に取られるとはお客さん、腕利きですね?」
「ああ、一応Bランク冒険者をやってるんでな。カルロスってんだが、聞いたことないか?」
「ほう、かの有名なカルロスさんでしたか。開店早々あなたに來ていただけるなんてついてますよ」
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「そうだろうそうだろう」
ぶっちゃけ誰コイツ? 狀態である。
あまりにも自信たっぷりな顔をしていたので仕方なく合わせただけだ。
「それにしてもこの剣は良いな。さほど詳しくない俺でも目を奪われた」
「自信作ですので。実は並んでいる他の武よりも高能なんですよ」
「ほうほう、なるほど確かに周りの剣よりは――」
とカルロスが言いかけたときだった。
カルロスの視界に魔剣と魔槍がった。
うーん、本當はこの魔剣と魔槍を見て店に近づいてくる予定だったんだが。
もうし目立つところに置いた方がいいか?
そんなことを考えている中でも、カルロスは2本の異様な気配を醸し出す武を見て固まっている。
「なんだこの武はッ!?」
突然ハッとしたように目を瞬きさせると、大聲で言い放った。
それにつられて大通りを歩いていた冒険者がこちらを向き、ぞろぞろと集まってきた。
ざっと20人近く寄って來たな。
「これも私が打った剣で、最高傑作の2本なんですよ」
「凄いな、これは!」
カルロスは興を抑えきれないといったように言う。
周囲の冒険者も一目見ようとこちらにグッと押し寄せて、魔剣と魔槍を目にれた人から、『素晴らしい!』などと口々に賞賛している。
「ちなみに、値段は?」
カルロスが問う。
張した面持ちだ。
なんとしてでも手にれたいというのが表からも伝わってくる。
「殘念ですが、この2本は売りじゃないんですよ。まあ白金貨10枚積むと言われたらさすがに手放すとは思いますが」
「そ、そうか。さすがにこんな剣は売れんよな」
し落ち込んでいるが、同時に納得してくれたようだ。
「ですが、こちらの剣はすべて売りですので是非お買い求めください。すべて自慢の品ですよ」
ここぞとばかりに売りこむ。
すると、カルロスが迷わずに準伝説級エピックの剣を手に取りその軽さに驚いた後、俺に差し出した。
「この剣を買わせてもらおう。いくらだ?」
「金貨3枚です」
「ほう、安いな。良心的な価格設定だ」
そう言い、金貨3枚を手渡してくれた。
金貨を簡単に渡せるところをみるに腕利きであることは間違いないのであろう。
周りの目利きができない冒険者は高いだのなんだの言ってどこかに去って行ってしまうが、カルロスのように腕が良く武の価値がわかる冒険者は、周りとどの武を買うかまで話し始めている。
そう、うちの武は良心的価格なのだ。
他の店では特殊級ユニークでさえ金貨2~3枚とるのだ。
冒険者たちはまさかあの武が準伝説級エピックだとは思っていないだろうが、そこらの店より明らかに素晴らしい武を見て、金貨3枚は安いと判斷したのだろう。
ちなみに準伝説級エピックの武を持っている冒険者なんて街を歩いて鑑定してみてもいない。
大抵は普通級ノーマル、腕の良い冒険者で特殊級ユニークの下くらいだ。
つまり、とんでもない価格で準伝説級エピックを売ってしまったということなのだが、材料費も時間も全くと言っていいほどかからないので、こちらにデメリットはない。
むしろ早く売れるし『安くていい武を売る店』と宣伝もしてもらえるかもでメリットだらけだ。
「鞘はないのか?」
「あー、すみません。鞘はないんですよ。他の職人に作ってもらってください」
「そうか、了解した。いい買いだった」
そう言ってカルロスは去った。
鞘は武創造クリエイトウェポンでは作れなかった。
恐らく居合を前提とした剣を作るときは鞘まで武と認識されるため作れるけど、普通の剣では鞘は武じゃないから作れないんだと思う。
そこらへんは他の職人に作ってもらいたい。
安く売ってるんだし、割り切ってほしいな。
カルロスが去ると同時に一気に冒険者たちが群がってきた。
「おい! この武いくらだ!」
「この素晴らしい剣をぜひ私に!!」
「良い武だ! 相棒にさせてもらうぜ!」
「斧、斧は置いてないのかぁ!?」
一気に話しかけられても困る。
こっちは聖徳太子じゃないんだぞ!
とか考えてても仕方ない。
1人ずつ丁寧に対処した。
特殊級ユニークの武は大金貨1枚で売った。
こちらも良心的な値段だ。
普通の店では特殊級ユニークの中の下の能でやっと金貨1枚なのにこちらは最上位の特殊級ユニークで金貨1枚だ。
手にした冒険者はホクホク顔で帰っていった。
いいじに宣伝してくれるだろう。
これならすぐに個人店を持てそうだな。
武種も増やす必要があるな。
剣と槍だけだとさすがになすぎる。
今回請求されたのは斧だけだったが、同じ鉄製の武として大剣、短剣、槌、いろいろ用意を請求されそうだ。
もちろん杖や弓などの木製、明らかに鍛冶では作れないものも作れるため、そちらにも手を回していきたい。
「ありがとよ! こんなにいい武が手にるなんてついてるぜ」
最後の客が去った。
今日は完売だ。
俺の手元には魔剣と魔槍以外殘ってない。
予想よりはるかに上回る結果だ。
初日ということもあってしくらい武が余るかなと思ってたけど杞憂だったようだ。
手元にやって來た金貨は51枚。
日本円で5,100,000円。
こんなに儲けてしまっていいのだろうか。
材料費もかからなかったし、売上稅である3%を抜いても4,947,000も殘ってしまう。
一日でこんなに稼いでしまった。
ボロ儲けじゃないか。
金持ちになっても自分を見失わないようにしないとな。
日本で10,000円札が地面に落ちてた時と同じ。
これは誰かに試されてるんだ、っていう神と同じにして行こう。
まだ開店からあんまり時間は立ってないけど商品もなくなったし店を閉めるか。
そう思い立ち上がると、1人の男の子が走ってきた。
長が低く、い顔立ちをしている。
息も絶え絶えで俺の前に止まると、口を開いた。
「あの、僕にも武を売ってください!」
あー、もう武売り切れたんだけど……どうしようか。
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