《魂喰のカイト》14話 ロシュとの野外散策

「で、どんな依頼をけたんだ?」

ロシュとともに王都の外の街道に出てきた。

天気は快晴。

見渡す限り澄んだ青空が広がっている。

今はロシュの案のもと、近くにあるという森にまっすぐ向かっている。

「ゴブリンの討伐です。し數が多くなってきたとかで……討伐依頼が出てたんですよ」

「へぇ、そうなのか」

數が多くなってきた、か。

もしかして魔にも蟲みたいに大量発生とかあるのかな?

もしあるのだとしたら冒険者の稼ぎどきだな。

いや、でもそれは危険と紙一重ってことになるのか。

普通じゃ手に負えない相手が大量発生したらたまったものじゃない。

「そういえばロシュって冒険者のランク? ってどのくらいなんだ?」

「僕ですか? 今はFですよ。まだ冒険者になって數週間ですからねー」

ロシュはそう言った後、ニヘラっと笑った。

「えっと、確かゴブリン數匹相手取ってもなんとかなる強さ……だったっけ?」

前にダンジョンについて訊いた冒険者の話を思い返しながら確認を取ってみる。

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「まぁ、そうですね。僕はFランクの中でも下位で一般人ぐらいの強さしか無いので3が限界ですが」

「3でも立派だよ。それに前までは武があんなのだったからな」

「そうですかね? ……いや、そうですね! 僕ならきっともっとできます!」

「うん、その意気だ」

ロシュは自分をい立たせ、ガッツポーズをとった。

実に微笑ましいものだ。

ロシュの様子にほっこりしつつも、2人で談笑しながら移しているうちに森についた。

どうやらこの森の奧に數匹のゴブリンが住み著いているらしい。

ぱっと見、小鳥のさえずる穏やかな森に見えるのだが……こんなところにも魔がいるのか。

「さ、りましょう」

「ああ、そうだな」

ロシュはこの森に何度か來たことがあるらしく、結構道に詳しかった。

俺の武を買いにくるための資金も、この森でたまたま拾ったものを売ったら高値で売れたからだそうだ。

まあ、確かに始めたばかりのFランク冒険者が依頼で稼いだ貨が大銀貨5枚ってのもおかしいよな。

さすがに裕福すぎる。

納得だ。

「ところでイルムさんは商人なんですよね? 頼んでしまった僕が言うのも何ですけど……戦闘とか、大丈夫ですか?」

「ああ、心配しないで。戦闘は結構得意だから」

「そうなんですね! じゃあ安心です、ともに頑張りましょう!」

なんたって兇悪なスキルを大量に持ってるからな。

暗黒魔法は敵が散するし、あまり目立ってないけど剣スキルなんかもとんでもない。

敵を前にしたら自然と斬り方が理解できてしまうのだ。

どうすれば斬りやすいか、綺麗に斬れるか、力のれ方、足の運び方、筋かし方……すべてが自然と分かる。

だけど、これに慢心してはダメだ。

ぶっちゃけ戦闘に関しては素人だから、スキルに頼ったゴリ押ししかできていない。

克服するには相手の行を読み、どう立ち回るかを経験していくしか無いだろう。

これから俺よりも強い敵と出會うかもしれない。

そのときは俺の経験不足という最大の弱點が浮かび上がる。

弱點を埋めるためにも、戦闘回數を重ねることも重要だな。

そう考えていたとき、微小な音が聴こえてきた。

「聲が聞こえるな」

「えっ? そうですか?」

「ああ、多分ゴブリンと……人? それとも何かの魔か?」

半神人デミゴッドになった特典の1つだろうか、俺の聴力は格段に増していたらしい。

薄々気づいてはいたが、ロシュと比べたことではっきりしたな。

地味に便利だろう。

「とりあえず行ってみましょうか。どうやらその聲がした場所はちょうど目的地のようですし」

「そうだな」

し足早に、かつあまり音を立てないように向かう。

の聲が聞こえた以上、油斷大敵なのだ。

しすると、聲がした近くまで來た。

今も茂みの奧でガサゴソと音がなっている。

「あの、イルムさん……その……もしも強い魔だったらすぐに逃げましょう。命が何より大事です」

「ああ、もちろんわかってる」

ロシュは慎重派のようだ。

いや、正確には違うのかもしれないが、なくとも無鉄砲ではない。

現実的な考えで好きだぞ、俺は。

理想や夢だけじゃやっていけないこともあるからな。

ロシュに返事をした後、茂みの奧を覗いてみる。

そこにいたのはゴブリンが3匹。

そして剣を持ったし大きめのゴブリンが1匹。

《魔:ゴブリン 非常に個數が多く、繁能力も高い。反面、戦闘能力は乏しく、一般人でも一対一で勝てる可能のある魔

《魔:ゴブリンファイター ゴブリンの上位互換。ある程度力を持ったゴブリンが自の格上を倒すことで進化する。剣に秀でており、一般人では到底太刀打ちできない》

なるほど、し強めのが1匹混じってるってことか。

さて、どうしよう。

そう思いロシュの方を見てみると、何かを凝視していた。

気になったので俺もロシュの視線の先を目を細めて覗いてみる。

視線の先はこちらに背を向けているゴブリンファイター。

そういえばさっきは鑑定だけして視線をそらしたのとゴブリンファイターが案外大きかったから気づかなかったけど、何・か・を抱えているようにも見える。

時折チラチラとその何・か・が見えるのだ。

なんだろう?

あれは。

しの間ゴブリン達のきを見つめていると、ゴブリンファイターが向きを変えたタイミングで『チラチラ見えていたもの』がはっきりと見えた。

――人だ。

瞬時に頭が冷える。

先程までの楽しい雰囲気は吹き飛んだ。

誰かの生命がかかってる。

それも既に敵の手の中にある生命だ。

落ち著いて行しなければ。

そう思った矢先――

――ロシュが茂みの奧へ飛び出した。

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