《魂喰のカイト》19話 武屋開店
「おおお、やっぱり実際にってみると買った、って実が湧いてくるな」
「そうですね師匠! 僕もしワクワクします」
家を買ってしまった。
店で溜めた金貨を半分近く使ったのだ。
いやー、財布の中が減る覚ってどんだけ持ってても変わらないんだな。
ちょっとだけ憂鬱な気分になってしまった。
買った家と言うのは木造建築の一軒家だ。
サイズは小さすぎず大きすぎずで、王都の住宅街でよく見る大きさ。
だが、一般の家と違うところが1つ。
看板がかかっているのだ。
一応武屋兼住宅だからな。
看板には1本の剣が描かれており、ひと目で武屋だとわかるようになっている。
1階は3部屋あり、玄関からってすぐに開けた部屋とその奧の分かれる形で存在する2つの部屋だ。
すぐの大部屋はもちろん営業スペース。
ここで接客や販売を行うのだ。
奧にある部屋はってすぐの部屋に比べて2つに分かれている分だけ狹くて営業はできないので、武創造の作業場として使わせてもらおう。
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そして、2階は1部屋であり、広々としたスペースになっている。
ここは居住スペースだな。
誰か客人が來たときの接待用にも使えるだろう。
「おおおおお! すごい、ベッドがふかふかですよ師匠!」
階段を登り、居住スペースに移すると、ロシュがベッドをもふもふとりだした。
見ている限り質が良さそうだ。
これで俺も快眠できるな。
宿のベッドはあまり質が良くなかったのだ。
布も薄かったし背中も痛くなった。
その分、質が良いベッドが買えたことは本當に嬉しい。
ちなみにこのベッドは家を買うときについでに買ったものだ。
ベッドの他にも必要最低限の家は手配してある。
椅子や棚とかだな。
その他にも武屋として営業するためのカウンターも準備してもらった。
1階の営業スペースに、奧の部屋につながる扉を背にする形で設置されており、接客することができる。
端には開閉できる扉がついていて、ちゃんと行き來することができる。
そして、壁には剣や斧、槍を立てかけるための武棚もある。
さっき早速、紅ノ剣スカーレットなどの魔剣、魔槍を掛けてみたのだが、しっかりと様になっていた。
武屋の雰囲気は大分できてきたと思う。
外裝から裝までバッチリだ。
後は営業を開始するだけだな。
この家は店がたくさん開かれていた商業區に位置している。
ただ、大通りからは離れているのであまり人は來ないかもしれない。
それはまあ宣伝と実績でカバーだな。
離れてしまったものはしょうがないわけだし。
「武の在庫もないし開店は明日かな」
「そういえば、前から思ってたんですけど武ってどうやって仕れているんです? 師匠が作ってるって噂も聞いたことはあるんですけど作ってるところなんて見たこと無いですし……」
「それはまあ企業ってやつだな。――というかロシュの耳に屆くまで広まってるんだな、俺の店の噂」
「ええ、そりゃあまあ。質の良くて安い、って冒険者ギルドのメンバーからは評判ですからね。中には今まで倒せなかった魔を一刀両斷できたという話までありました」
結構な評価をいただけているらしい。
良い評価をしてもらえるのは製作者として嬉しいものがある。
もちろんがっぽり稼げるのも良いのだが、こういう人を喜ばせるやりがいのようなものもあるんだな。
最初は金のことしか頭になかったけど案外楽しんでたみたいだ。
「では、自分はそろそろ冒険者活に行ってきますね」
「了解。無理しない程度に頑張れよー」
朝の模擬戦が終わった後にこの新居に來たためまだ朝だ。
今から依頼をけても大丈夫だと判斷したんだろう。
ロシュはそう言い、俺の新居を後にした。
ちなみにロシュがわざわざこの新居に來たのはただの好奇心だ。
俺の店がどんなものか見に來たかったらしい。
さて、俺はとりあえず武を作って明日に備えようかな?
◇ ◇ ◇
ふう、このくらいでいいかな?
目の前には100近くある武。
最初に店を開いたときの大2倍の量だ。
なぜこれ以上作らないのかと言うと単純にスペースが無いからである。
もし武數が足りなくなったら後ろの部屋にって作ればいいので問題はない。
腹減ったな。
空を見上げると既に日は沈みかけていた。
武創造クリエイトウェポンで一瞬で作れる割になんで夜になるまで時間がかかったか。
単純な話だ。
晝休憩が長すぎた。
正直に言うと武を作った時間自は長くない。
1時間使ったか使ってないかくらいだ。
晝にしていたのは簡単に言うと王都観。
晝飯帰りにたまたまサーカス団を見つけたのだ。
接客用の公演を見ているうちに惹かれて、気づいたら貨を払って室の有料演技を見てしまっていた。
くそぅ、サーカス団の奴らもやりおるな。
あんなにすごい演技を見せてもらってもっと見たいと思わないわけないじゃないか!
まあそんなことはどうでもいい。
とにかく減った腹をふくらませるために夜の街に出ることにしよう。
家から出る。
通行人はそこそこ多いな。
まあ完全に日が暮れたわけじゃないしな。
そう思いつつ、歩いて行くと1軒の店が見えた。
高級志向。
パッと見て思いついたのはそんな言葉だった。
木でできてはいるが、質が良い。
なくとも他の定食屋ではこんなに高級あふれる木材は使っていない。
そして清潔がある。
ドアには汚れなんて1つもついていない。
素材の良さや清潔など、それらすべての要素が統合されて上品な雰囲気を醸し出しているのだ。
――ろう。
そうだ、今俺は十分なほど金を持っている。
別にってもおかしくないはずだ!
それにしくらい贅沢してみたい!
カラン。
扉を開けるとドアベルが鳴った。
その小気味よい音を耳に奧へと歩きだす。
店の裝は外裝と違いなく、綺麗だった。
天井から垂れ下がっている量が抑えられたランプがまたムードを作っている。
まっすぐ進むとカウンター席。
右手にはテーブルが置いてあった。
おそらく複數人用だろう。
とりあえずカウンター席に座る。
すると店主が聲を掛けてきた。
「注文はお決まりですか?」
店主はダンディで紳士なじのおじさんだ。
ブラウンの髪で、口髭を生やしている。
「えーと、初めて來たのでよくわからないんですが……オススメとかあります? お金は持ってます」
「承知しました。では”グレートボア”のステーキを」
そういい、店主は焼き始める。
すぐに香ばしい匂いが辺りに漂った。
手際よく調理されていく。
ボアだからおそらくイノシシのだろう。
あまり食べたこと無いな。
しっかりと堪能させてもらおう。
「お待たせしました」
調理が終わり、店主の聲掛けとともに俺のもとにステーキが置かれる。
ソレを見て思わずを鳴らしてしまった。
そうだ、今日は贅沢するって決めたんだ!
味しくいただこうじゃないか!
ステーキを一口サイズに切り分ける。
すると途端にが溢れ出す。
なんだ、これ!
すげぇ!
まだ食べてもないのにしちまったじゃないか!
日本じゃ見たことなかったぞこんなの!
そんな想を思い浮かべながらステーキを口に運ぶ。
――味いっ!!
味すぎる!
こんなに味い食べ初めて食べたかもしれない!
らかく、とろけるような食にサッパリとした風味。
そして何よりもの濃厚な味わいと旨み。
思わず周りのことなど忘れ、ステーキに沒頭してしまった。
「いい食べっぷりですね」
「うぐっ!?」
ものすごい勢いでステーキを食べていると隣から話しかけられた。
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