《魂喰のカイト》20話 青年との出會い
「ぐっ、げほっ、げほっ!」
やっべぇ、いきなりのことでに詰まった!
苦しい!
「あっ、す、すみません! いきなり話しかけちゃって!」
話しかけてきた人は申し訳なさそうに言い、コップに水を注いで渡してくれた。
すぐにけ取って水を流し込む。
詰まったステーキは水とともにしっかりと胃に落ちてくれた。
「うぐっ、はぁ」
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ、もう大丈夫です。すみません、心配掛けました」
「いいえ、ボクが悪いんですから」
そう言い、俺の隣に座っている青年は苦笑いを浮かべた。
どうやら俺がステーキに沒頭している間、気づかぬうちに隣の席に來ていたらしい。
ということは俺がステーキにがっついているところを見られたわけだ。
なんだか恥ずかしいな。
青年は金の、しウェーブがかった癖をしている。
顔立ちは中的で、多くも見えた。
き通った緑の大きな瞳が青年の端正さを引き立てている。
服裝は白を基調とした高価そうなもの。
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なくとも俺の著てる服とは素材からして違った。
こうしてしっかりと見てみると金持ちだなと思うのだが、パッと見ではそうは見えない。
変に飾られてないのだ。
あくまでも自然。
気取ってないことがわかる。
この青年を一言で言い表すなら――王子様、だな。
なんというか、オーラが凄い。
全的に安っぽさをじさせないのだ。
それにもかかわらず、らかい腰で、顔には落ち著いた笑みを浮かべる紳士でもある。
しかし、どこか儚げな雰囲気が漂う。
達観しているというか落ち著いているというか……。
妙に大人びている……かな?
絶対の子とかがキャーキャー言うタイプの人間だ。
俺なんかとはそもそも住む世界が違う。
よし、心の中では王子と呼ぶことにしよう。
「味しいですよね、そのステーキ」
王子が話を振ってくれた。
「そうですね。初めてこの店に來たんですけど本當に味しい。そちらは常連さんで?」
「ええ、まあ。結構お世話になってるんですよ」
と、會話をつなげていると王子の料理が運ばれてきた。
王子はありがとうございます、と一言言ってけ取った。
ではなくスープだ。
こちらも食をそそるいい匂いがしている。
どうやらこの店の料理にハズレはないらしい。
王子がスープをすくい、口に運ぶ。
その作は上品で、その容姿と合わさって様になっていた。
そこで王子の腰からカチャ、と小さな金屬音が鳴った。
反的にそちらを向いてしまう。
視界にったのは剣。
あまり過度な裝飾はされておらず、なんの変哲も無い剣に見えるが、ソレには騙されなかった。
剣から弱めだが魔力をじたのだ。
つまり、魔剣である。
魔力量と質からあまり強い部類ではないかもしれないが、それでも魔剣は魔剣であり、他者の持つ武は圧倒しているし、そう安々と手にるようなものではない。
思わず鑑定をしてしまう。
《武:長剣ロングソード 等級ランク:準伝説エピック 名のある鍛冶師と魔導師が共同で作した剣。鋭い切れ味に加え魔力のコーティングがされており、剣撃を魔力刃として飛ばすことができる。魔剣の末席に位置している》
うおっ、街で準伝説エピック持ってる人なんて初めてみたぞ。
というか、銘が無いんだな。
これだけの名剣ならあっても構わないと思うんだが。
もしかして名前はそう簡単につけるものじゃないのか?
「冒険者でもやってるんですか?」
これだけの武の用途が気になったので聞いてみる。
俺の質問に王子は、なぜいきなり冒険者ということになったのか、と一瞬戸ったが視線が剣に向いていることに気づいて納得した様子でこちらを向き直した。
「冒険者では無いんですが……まあ魔を狩る職業をしています」
へぇ、冒険者以外にも魔を狩って利益を出す職業ってあるんだな。
こんなにいい武を持ってるんだからきっと一流なんだろう。
そう思っていると、今度は俺の職業を訊かれた。
「一応武屋をやってるんですよ。……と言っても今までは店営業で、明日から店を開くんですけどね」
「ああ、なるほど。だから目利きできたんですね。実はこの武、わざと見た目を普通の剣に合わせてもらってるので、名剣だって気づく人はなかなかいないんですよ」
「わざと合わせてもらっている?」
「はい。あまり目立ちたくは無いので」
王子はそう言う。
目立ちたくないのに俺に剣のことを喋ったのは、武の鑑定をされて隠すことができないと思ったと同時に、俺が王子のことを何も知らないと見抜いたからだろう。
まあ王子のことを事前に知っていたら俺も何かしらの反応をしてただろうし、見抜けるよな。
武に銘をつけていないのは目立ちたくないから、というのも関係してるのかな。
しでも目立つ要素をなくしたいのだろう。
確かに銘がある武は珍しいしな。
と、ここでステーキを食べ終えてしまった。
「さて、食べ終わったのでこのへんで失禮しますね」
「あ、はい。先程は驚かせてしまってすみませんでした」
「大丈夫、気にしないで。店主、勘定お願いします」
店主はすぐに來てくれたので料金をしっかり払った。
料金を払い終わった後、王子はそうだ、となぜか聲の音量を落として話しかけてきた。
「ボク、リディル=ハートって言います。また會った時はよろしくお願いしますね」
「俺はイルム。こちらこそよろしく頼みます」
そう言葉をわし、王子――もといリディルが手をこちらに差しべて來た。
その手をとり、握手をする。
手を取ってもらえたことに、リディルは目を細めて笑みを作った。
その後、俺はまた來ます、と一言殘し、リディルに手を振って店の外に出た。
いい店だったな。
雰囲気良し、料理良し、民度良し。
金貨もまだまだもあるししくらいなら通っても大丈夫だろう。
時々來ようか。
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