この國でギルド職員をやっている私は、今日も何時ものように太さん達の依頼クエスト出発を見送りました。

朝の冒険者達の依頼注のピークも一段落著いた私は、付の椅子に腰を掛けてし休憩を取ることにします。

しかし、無制限依頼フリークエストとはいえFランクの太さん達にはまだ迷宮を勧めるのは早かったですかね…けれどBランク冒険者を一撃でねじ伏せた太さんなら多分大丈夫でしょう！迷宮自も恐らくC級程度でしょうし。

多の不安を殘しながらもそう自己完結させた私は、後暫くでお晝休憩の時間の事を思い出し、仕事を代するために奧の休憩室にいる同僚に報せに行くことにしました。

ギルド會館は二階建ての建になっており、一階が依頼付兼、酒場になっており、二階はギルドマスターの仕事場兼、生活部屋として使用されている。

私は一階にある休憩室に行くために職員専用扉の鍵を認識魔法で開けて中にっていきます。

ギルド會館には數多くの冒険者の記録報が保管されているため、登録した職員の魔力を知して解除される特別な魔法が使用されているのです。

「あれ？システィラどうしたの？」

中にると、椅子に座った薄い藍セミロングの髪型のが、本を読むのを中斷して話し掛けてきました。

彼の名前はリーフラで、同期でった私の同僚です。

「どうしたのって、もうすぐで代の時間なんだけど？」

「えっ、本當！？本を読むのに夢中で気付かなかったよ…」

彼はし慌てた様子で読んでいた本を自のロッカーの中にれて、鏡でだしなみを整え始めました。

私も自分のロッカーから休憩中に食べようと思い、持參していたお菓子をロッカーから取り出し、テーブルの上に置こうとしていると、ふとリーフラからの視線に気付きます。

「えっと…、どうかした？」

「いやー、何か最近のシスティラは楽しそうに仕事をするなー、と思ってね」

「そ、そう？」

そう言われて、最近の自分の生活を振り返ってみると、確かに最近は職場に來るのが楽しみで、朝の調子も良いかもしれませんね。

「いやー、実は私、システィラをギルド職員にったのって迷だったかなーと、思ってたりもしてたんだけどね」

「えっ？な、何で！？」

「だって、よく男の冒険者に言い寄られてて、迷そうな表してたじゃない」

「そ、それは──」

咄嗟にリーフラの疑問を否定しようとしましたが、改めて言われると確かに最近の私はし疲れていたのかもしれません。

私は數年前まではAランク冒険者として稼いでいましたが、あるクエストの途中で大怪我を負ってしまい冒険者を続ける事が困難になってしまったのです。

その時はショックで家に引きこもったりもしてました。

そんな時に一緒にギルド職員として働かないかと提案してくれたのがリーフラでした。

冒険者としての生き方しか知らない私をってくれたことに、謝はしていても迷だと思ったことなんてありません。

「そんな…迷なんて思ったこと無いよ。リーフラがってくれなかったら私、落ち込んだままだっただろうし…」

「そ、そう言ってくれると、私も気が楽になるけどね…」

リーフラは私の言葉を聞いて、照れるようにそっぽを向いてしまいます。

──自分で振っておいて、自分で照れるなんてかわいいですね。

誤解も解けたようで安心していると、突然、リーフラが鼻と鼻が當たりそうな距離まで、ぐいっと近づけてきました。

「で？何が理由なの？」

「り、理由って言われても…」

リーフラにそう問われて言い淀んでしまいます。

けれど、自分の心の中では答えは出ているも當然でした。

十中八九、太さんです。

あの日、太さんと出會った時は、彼の神々しい程のしさを持ちながらも闇をじされるような神さに心引かれていました。

更にそのしさを鼻にかける事もない、禮儀正しさにも驚きました。

冒険者は仕事柄禮儀を知るものがないこともあり、貴族からは々疎まれている部分もあります。

けれど、私が一番驚いたのはその強さでした。

冒険者登録の前からBランクをねじ伏せる強さを持っていたのです。

結果的に私は助けられる事になりました。元Aランク冒険者ということもあり、守ることはあっても守られる経験なんて皆無だった私は、自分でも驚くぐらいに彼が魅力的に見えたのです。

そんな事を考えていると、リーフラは私の顔をニヤニヤと何かを悟ったかのように笑い始めました。

「…ふ～ん、その顔はズバリ、男ね！」

「なっ！な、なにゅお！」

痛っ！慌てて否定しようとしたら舌を噛んでしまいました。

「やっぱり！その慌てようは間違いないわね！で？どんな人なの？」

やはり、リーフラもなので事には興味を抱くのでしょう。

私も他人の事は面白く見れますが、いざ自分の事になると込みしてしまいます。

他人のはの味と言いますし。

けれど、ここで認めてしまうのも何か負けた気がするので、けして私は口を割りません。

「いいじゃな～い、教えてよ～」

「言うわけ無いでしょ…」

──バタンッ！

そんな事をやり取りをしていると、ギルド付の方から激しく扉が開かれる音がしてきました。

はぁ…また、暴な冒険者の方でしょうか？

そんな推測をしながらも、もし面倒事だった場合の為に私たち二人は様子を見に行くことにしました。

現場に著くとそこには、の至る所の傷からを流した男ギルド職員の姿がありました。

「ど、どうしたんだ！その傷は！」

私とリーフラは慌てて彼の元に駆け寄ると、傷の合を見て言葉を失います。

傷は切り傷などではなく、何か巨大なで叩きつけられたような損傷をけており、外傷というよりは部の傷の方が目立つようでした。

「安らかなる癒しを、授けたまえ──《上級治癒ハイヒール》」

リーフラがそう唱えると彼のが黃い魔力で包まれていき、しずつ傷が癒されていく。

ギルドにはよく大怪我を負った冒険者が倒れ込んで來る事があるので、即座に応急処置が出來るように、治癒魔法が使用可能なギルド職員が必ず一人は就いていないといけません。

リーフラはその中でも飛び抜けて治癒魔法の才能を持つギルド職員なんです。

…私も冒険者時代の頃はよく依頼で負った傷を治して貰ってました。謝の言葉しかありません。

リーフラが魔法を唱えて暫くすると、致命傷になり得そうな傷は無くなっており、朦朧としていた男の意識も微かに戻ってきます。

「気づきました！？誰にやられたんですか」

原因を突き止めようとし荒ぶった聲で問いただすと、男は震えたをかす。

「……め、迷宮の調査で…S級魔のミノタウロスを、発見した…」

彼は途切れ途切れにそう呟くと、伝えたことで安心したのか意識を落としました。

そういえば、彼は今朝に新しく発見された迷宮の調査に向かったギルド職員でした。

彼の手には急出用の碧くき通る転移結晶の欠片が握られていました。

主に未開拓の迷宮、高ランク魔の調査に向かう際だけに貸し出されるとても高価な代なのです。

何でも、數年前にとある迷宮から発見された聖に相當する結晶クリスタルを砕いた欠片を使用した魔導とのことです。

使いきりの魔導で、一度使用したら結晶が砕け散る仕組みになっていると聞いています。

私は彼の言葉を聞いて、顔からの気が一気に無くなるようにじました。

──迷宮でS級の魔が発見された？

彼の言葉が本當だとするのなら、迷宮依頼ダンジョンクエストに向かった太さん達は必ずその魔と遭遇することになります。

いくらBランクの冒険者を倒せる太さんでも、Sランクとなると話しは全く別になってきます。

基本的に冒険者はBランクになると一人前の冒険者と稱されるようになります。

それほどCランクとBランクには大きな壁が存在するのです。

更にAランクになると一流冒険者となり、Sランクより上は人外と稱されるほどの強さとなっているのです。

S級の魔なんて年に數回ほどしか目撃報が存在しないというのに…

「でも、その迷宮の依頼はさっき発行したばかりだから、今から回収すれば問題は──」

「もう遅いのよ…」

「えっ？」

「その依頼をけにいった冒険者がいるのっ！」

私は聲を荒げてしまいます。

もうし早ければ…、そんな後悔しても遅い気持ちが私の中に込み上げてきます。

「た、大変じゃない！早く助けに向かわないと！」

「S級なんて、私たちじゃ無理よ…」

リーフラは私の言葉を聞き、慌ててギルドから出て行こうとしますが、私がそれを引き留めます。

このギルドで一番の高ランク冒険者はAランクしかいません。

S級の魔なんかに太刀打ちできる筈もありません。

「じゃ、じゃあどうすれば…」

──コツ、コツ…

萬策盡きた──正にその時、ギルド會館の二階から階段を降りてくる足音が聞こえてくる。

「──一何だ、この騒ぎは？」

顔を上げると、そこにはショットヘアーのしい翡翠エメラルドの髪を持ったが佇んでいた。

「「ギルドマスター！！」」

私達二人は彼の姿を見て安堵します。

彼はこの國のギルドマスターでもありながら、Sランク冒険者の肩書きを持った方なのです。

『おいおい、誰だあの子供？』

『ばかっ、お前！あの人はこのギルドのギルド長だぞ！』

『は？あんな子供が？』

今まで私達の事を遠巻きに見ていた冒険者達からそんな話し聲が聞こえてきます。

「誰だ今、子供って言った奴は！」

「「「何でもございませーーん！！」」」

冒険者達は彼から放たれる殺気に畏してしてしまい、こちらから目を逸らし始めます。

勘違いするのも無理はありません。彼の長は130㎝程。

端から見ればにしか見えません。

「全く…さて、躾も終わったところで、話を聞かせてもらおうか？」

殺気を無くした彼はこちらにを向け、先程までの騒ぎについて問いただしてきます。

私はS級の魔が現れたこと、その迷宮に向かったFランク冒険者がいることを説明しました。

話の最中は、彼はの前で手を組んで私の話を靜かに聞いていました。

「ふむ…分かった。その冒険者の救出に私が向かおう。二人はS級魔の出現を王家に報告しておいてほしい」

「「はいっ！！」」

私達が強く頷き返事をすると、彼はギルド會館を後にします。

ギルドマスターが向かったのなら安心です。

彼の魔力は冒険者や王家に仕える宮廷魔法師以上の魔力量を持っています。

更には霊を使役することも可能な霊使い。

その強さから付いた二つ名は『霊の魔フェアリー・テイル』

ギルドマスターが出て行ったのを見送った私達は、ギルドに設置されている、王城との直通のやり取りを可能にする魔導を使用して、今回の報告を記した書狀を送ります。

ギルドマスターならS級の魔とも互角にやりあえるので、太さん達を救出して、撤退することも可能でしょう。

そんな希をにめた私は、ただの前で手を結び祈ることしかできませんでした───