「酷い臭いだ……」

『そうね……あ、私わからないんだった』

「はいはい。そい言うつまらないジョークはいいので。それより、今歩いてきた限りでは、これと言って牢屋に人はってませんね？」

『うん……もしかしたら、全員死んで……』

「…………ランは生きてます」

『わかってるわ』

沈黙が訪れる。と言っても、周りから見たらただの獨り言にしか聞こえないが……。

それからしばらく、ジンは歩き続けた。が、人っ子一人見つかりはしない。それどころか、魔族すら居やしない。

ジンは悩む。なぜいないのか？ なぜ魔力をじないのか？ 思うところは々あるが、ひとまずはランを探すことを優先した。

それから、探すこと五分。人の気配をじる。

『ジン、人よ』

「ええ。僕も気づきました。ですが、かなり弱ってませんか？ 気の大きさが小さい……」

『とりあえず急ぐわよ！ もし弱っているのなら、助けてあげましょう！』

「わかりました！」

ジンは人の気をじた所へ走り、その牢屋の前に辿り著く。そこには、弱りきって寢込んでいる、若者がいた。

「大丈夫ですか！？」

『かなり弱ってるわ！ ジン、早く手當を！』

「や、やってみます！」

ジンは、ユニークスキル、"龍神化"を発させ、作りたての魔法で、若者を回復させる。上手くいくかは、わからない。

「こ、こんなじか！？」

ジンは、両手を、弱りきっている若者に向け、その両手から、黃緑のが発生する。そのが、若者へと飛んで行き、の中へとって行く。そして次の瞬間、全から気が溢れ、意識を取り戻す。

「よ、良かったぁ〜！ 気が元に戻った！」

『良くやったわ！ それでこそ私のジンね！』

「実のない貴方には、僕はあげられませんー。観念しろー！」

『いいもーんだ！』

「う、ぅぅぅ……」

アホな會話をしていたジンは、若者が立ち上がったことに気づき、早速質問をする。

「いきなりですまん。だが、時間が無いから、単刀直に訊くが、ここで何があった？」

「え？ は、えぇ……。ここは、魔族に連れていかれた人間達が、監されるんだ。しかも、実験があるだの何だのと言って、人達を殺したり、には手を出したりと、外道で卑劣な連中の遊び道にされたりもしました……」

「なっ！？」

「私は、まだ順番が回って來てないと言うのもあったのですが、何よりが弱くて……って、あれ？ 何か、前よりもが軽い気が……ま、まぁいいです。とりあえず、この先にもまだ人はいると思います！ 是非、救ってあげてください。お願いします」

「わかった！」

バキンッ！ ジンは、檻をぶち壊し、ここで待機してるように指示をする。それに頷いた若者は、大人しく座る。

とりあえず、この先にもまだいるのなら、ランがどこかに居るのかもしれない……でも多分、頑丈なところに閉じ込められてるかもなぁ……。

それから、ジンは急いで駆け回り、弱っている人を片っ端から救っていった。

「……っと。これで、三十人目っと……一応全部回ったことになるか……ラン……」

「あ、あのっ……！」

「ん？」

若いが、ジンに聲を掛ける。

「た、多分、もう一人、し外見がおかしな、エルフのの方がどこかにいると思うんです！ あの方は、特に重要視されてるらしく、こんな檻よりも、頑丈な場所にれられてるはずです！」

「……！！」

それが本當なら、まだどこかにあるはず……。どこだ？ ……まさか、まだ地下が？

『それは無いわ。この下にそんな気配はじない』

「はぁ？ なら、壁の向こうに部屋があるとでも？ なら、じるのか？」

『……いや、何も……』

「考えてみろ。もし、向こうにあるとして、気をじたならお前の言葉を信じる。だが、壁の向こうがわからないんだろ？ なら、それは魔法か何かで覆われてるってことにならねぇか？」

『た、確かに……』

「それがわかればいい。とりあえず、床をぶっ壊すか、壁をぶっ壊すか、どっちがいい？」

『え！？ え、じゃあ、え〜っと……壁を壊すで……』

「はい來たァ！」

人を先に、一つドアの向こうへ移させ、左右の拳に、息を吹きかける。

「セイッ！」

次の瞬間、目にも止まらぬスピードで、ジンが壁だけを破壊していった。すると、途中、壁を壊したが薄かった場所があったので、そこに行って見る。

「はいビンゴ！」

そこには、さらに奧へと続く道があった。

「今から行くからなー？ ラン！」