《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第八話 マーケットプレイス

俺たちはこの一帯で一番人気があるという町の酒場に向かっていた。

「あーっ! もうやってらんないわ!! 今夜は飲むしかないわ、付き合いなさいよね」

ローザの聲が夜の街道に響く。

中級冒険者任命式の後、神父にローザを俺たちのパーティーに加えてもいいかと聞いたらあっさりとOKがでたのだ。

しかし、どうやらローザは引き留めてほしかったらしく、いつまでもぶつくさと文句を言っている。

「神父様ったらわたしがどれだけ教會に貢獻してるか、まったくわかってないのよ」

「まあまあ落ち著いて、冒険だってきっと楽しいぜ?」

俺はローザをなだめる。

「ところでローザさんってさ、冒険者じゃないけどダンジョンにることってできるの?」

俺は聞きそびれていたことを尋ねる。

「あー、それは大丈夫。教會関係者はどこのダンジョンにもれることになってるわ。もっとも、今迄行ったことなんてないけどね。……あ、あとね、これからは仲間としてやっていくんだから、ローザさんじゃなくてローザって呼んでもいいわよ?」

「それじゃあ遠慮なくそう呼ばせてもらうよ」

「アリサちゃんと、シルヴィアちゃんもね?」

ローザがそう言うと、アリサが答える。

「シルヴィアはともかく、わたしまでちゃん付け? なんか恥ずかしいわね……まあ好きに呼んでくれて構わないけど。よろしくねローザ」

シルヴィアも続けて挨拶をする。

「……ローザ……よろしくね」

そんなやり取りをしていると、目的の町に辿り著いた。

「お、見えてきたな」

夜にもかかわらず店が立ち並び、賑わいを見せている。

町のいたるところで青白いが輝き、どこか幻想的な雰囲気を醸し出していた。

「…………綺麗」

アリサは町の景に見とれ、うっとりとした表を浮かべている。

「ウィル・オ・ウィスプ……あのは一つ一つが霊なのよ」

ローザが説明する。霊なんてのもいるんだな。

「よお! 兄ちゃん。いいもんあるから見てってくれよ」

店のおっちゃんに聲をかけられる。

見ると、剣や杖、ナイフに斧、様々な武が並べられている。

「……武か。そういえば前から買おうと思ってたんだよな」

俺は興味を惹かれ、一つ一つ手に取り品定めをする。

イフリートを召喚しているときには杖が良いだろうけど、効果が切れたら邪魔になってしまう。そう考えると取り回しが楽なナイフ辺りが無難だろう。

「おっちゃん、これいくら?」

刃と持ち手の間に小さな寶石をあしらったナイフを指さして言う。

「三萬ソルだよ」

ソルとはこの世界での基軸通貨のことである。

中級冒険者昇進のご祝儀が十萬ソルだったので、このナイフは結構なお値段だ。

「高いな……。アリサ、このナイフどう思う?」

ナイフ使いのアリサに聞いてみる。

「ちょっと貸してみて」

アリサはナイフを手に取り軽く素振りをする。

「うん、わるくないんじゃない?」

アリサがそういうならきっとそうなんだろう。

よし、決めた。

「おっちゃん、これ貰える?」

「まいど! 大事に使ってくれよな」

俺は三萬ソルを手渡し、ナイフを買った。

「……わたしも……しいものある」

突然シルヴィアが口を開いた。

「これ……いくら……?」

シルヴィアは青いオーブを指さした。

「そいつは百萬ソルになるねぇ」

シルヴィアは値段を聞くと、帽子で顔を隠してしょんぼりとしてしまった。

……百萬だって!? そんな高級品なのかこれ?

「一何に使う道なのさ?」

「……それは召喚の儀につかうよ」

俺が誰に向けるでもなく聞いてみると、ローザが答えてくれた。

「そうなの? でも俺が見たのとはも大きさも違うな」

十連召喚の儀で使っていたオーブはもっとずっと大きくて、虹のように輝いていたはずだ。

「召喚のに使うオーブにはいくつか種類があるのよ。この青のオーブは一しか召喚できないのだけど、水に関わる召喚を必ず手にれることができるわ」

「なるほどね」

ピックアップガチャみたいなものか。

「シルヴィアは水の召喚にこだわりでもあるの?」

いまだにしょげているシルヴィアに聞いてみる。

「……水の力は癒しの力。……わたし……みんなをもっと助けたい」

うん、シルヴィアは天使だわ。

「金貯めるの、頑張ろうな」

「……頑張る」

俺とシルヴィアは誓い合う。

「ねえ、ギルド資金を貯めるのが先ってこと、忘れてないでしょうね?」

アリサがじろりとこちらを睨んで釘を刺す。

「わ、忘れてないってば」

「その顔は……忘れてたわね? いいわ、お金を貯めるための心構えをたっぷり聞かせてあげるから。そろそろ酒場に行きましょ」

「行きましょ!行きましょ! わたしも冒険者の心構えを一晩中聞かせてあげる」

待ってましたと言わんばかりに、ローザも乗ってきた。

あんたはただ酒が飲みたいだけだろ。

てか一晩中って、オールする気かよ。

「ほら、早くしないとおいてくわよ!」

アリサとローザはいつの間にか酒場に向かって歩き出している。シルヴィアも慌てて後を追う。

……今夜は賑やかな夜になりそうだな。そんなことを思いながら、俺は酒場へと歩みを進めるのであった。

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