《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第三十話 対峙の時

部屋を一つ進むと、寶石による華麗な裝飾がなされた扉の前にたどり著いた。……おそらくこの先がマスタールームだろう。

「――モガディシュ! 例のシスターを連れてきたぜ!」

役の男は扉に向かって大きな聲でんだ。

「……時間通りか。待っていたぞ」

モガディシュの聲と共に鍵を開ける音が聞こえ、ゆっくりと扉が開かれる。

「お初にお目にかかります、モガディシュ様。わたくしが今日の召喚の儀を擔當する――エリーと申しますわ」

エリーは舞踏會でもするかのように、シスター服のスカートをたくし上げて挨拶する。

「……堅苦しい挨拶はいらん。中にれ」

モガディシュはそう言って部屋の中に二人を案した。

「……あら、それでは失禮いたしますわね」

エリーと案役の男は部屋の中へとって行く。それを見て俺も一緒に中にった。

――部屋の中はまるでオーブの販売店のようだった。壁に備え付けてある棚の上にはずらりとオーブが並べられている。

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「……早速だが儀式を始めてもらおうか」

モガディシュはどっしりとした低い聲で言った。

「……その前に、報酬の確認をさせていただいてもよろしいですの?」

エリーが催促すると、モガディシュは部屋の隅に置いてある袋を持ち上げ、エリーの前にどさっと放り投げた。――袋の口には大量の金に輝く貨が見える。

「……約束の百萬ソルだ。儀式の報酬としては破格であろう」

「……確かにけ取りましたわ。――それでは儀式を始めますわね。どのオーブをどなたがお使いになるのか教えて下さります?」

モガディシュはフッと笑うと、

「――ここにあるオーブを全て俺に使え」

堂々とした口調で言った。

「――なんだと!? おい、モガディシュ! 気でも狂ったか!? 俺とお前で半分ずつ使うって決めただろうが!」

役の男が抗議すると、モガディシュは無言で腰に下げている漆黒の剣を抜き取り――一閃、瞬きする間もなく男を切り伏せた。――しぶきが舞い、男は聲すら上げずに倒れこんだ。……確認するまでもなく、即死である。

「……お行儀の悪いこと」

エリーは男の死を一瞥して言った。

「使いっぱしりをしたくらいで俺と同じ立場になったと思うとはな。……分不相応なみを持った男の末路などこんなものよ」

モガディシュは剣を鞘に戻しながら、傲然ごうぜんたる態度で言った。

「……あなた。もしかしてわたくしにも同じことをするつもりではなくて?」

エリーはモガディシュを害蟲でも見るような目つきで睨んだ。

「……安心しろ。さすがに組織を敵に回すつもりはない」

「賢明ですわね。――ならよろしくってよ」

……組織? 何を言っているんだ? それよりも何だって人が死んでいるのにこいつらは冷靜でいられるんだ。俺は男の死のほうに目をやった――生まれて初めて見る他殺。――當たり前だ。俺は今まで日常の中に生きていた。

高まる心臓の鼓を抑えきれずにに手を當てる。――抑えろ、焦ってはいけない、チャンスは一回だ。失敗は許されない。

焦る気持ちとは裏腹に、は驚くほど冷靜にいた。俺はモガディシュの後ろまで音を立てずに近づくと、オーディンを召喚する。

――時が止まって見えた。モガディシュとエリーは何かを話しているようだが、俺には何も聞こえない。もはや音は必要ない。――必要なのは、確実に仕留める一撃だけだ。

俺は全神経を指先に集中させ、モガディシュの首筋目掛けて手刀を振り下ろした。

「――うっ!?」

モガディシュは小さくうめき聲をあげると、前方に倒れこんだ。

「――何事ですの!?」

エリーはモガディシュが倒れたことに驚いて聲を上げる。

俺はサルガタナスを解除して姿を表すと、エリーのほうを見て言った。

「――くな。こいつはオーブ盜難と殺人の罪で俺が連行する。――お前も抵抗するようなら眠ってもらうことになるぞ」

強気な態度で喋ってはいるが、実はまだ張で心臓がバクバクとなっている。

「……ふーん、教會の差し金ってところですわね? ……でもそれにしてはあなた――隙だらけよ!」

エリーはそう言って目を見開くと、俺のからだに異変が起こった。

「――なっ!? が……かない!?」

見るとエリーの後ろには髪の一本一本が蛇でできている怪の姿が浮かび上がっていた。――あれは妖怪ゴルゴンの一人、メドゥーサか!?

「……わたくしがだからってなめていたのかしら? ……せっかく隠れて行していたのに、肝心なところで姿をあらわしてしまうなんて稽ですわね」

エリーは最初に見たときの上品な印象とは打って変わって殘忍な表を浮かべている。

「……くっ……け! いてくれ!」

俺は必死にかそうとするが、ぴくりともかない。――ここまでかと諦めかけたその時、部屋の扉が勢いよく開かれた。

「……稽なのはあなたの方ですよ――シスターさん」

「――誰ですのっ!?」

エリーが振り向くよりも早く、アデルが槍を元に突き付けた。

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