《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第四十二話 思わぬ誤算

「あの……、勝負してもらえませんか?」

俺は開始早々すぐ近くにいる冒険者に聲をかける。

「え……? やめておくよ。すまないね」

冒険者はそそくさと向こうに行ってしまった。……ハンデがあるわけじゃないし、指相撲で男と勝負しようとは思わないよな。俺は気を取り直して今度はおじさんに聲をかけた。

「俺と勝負してください!」

「無理だよ、無理無理。他を當たってくれ……」

おじさんにも逃げられてしまった。若者とは勝負したくないのだろうか?

その後も四、五人ほど聲をかけたが、ことごとく斷られてしまった。……嫌な予がする。たった三十分間しかないし、相手を選んでる時間はないのかもしれない。俺は焦る気持ちが抑えきれず、しかたなく鎧を著た強そうな男の騎士に聲をかける。

「俺と勝負してくれますよね?」

「……馬鹿を言うな。オーディン使いと勝負するわけないだろ」

その言葉を聞いて嫌な予は確信に変わった。ここに居る冒険者たちは、オーディン使いである俺の事を避けているのだ。

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「まずいぞ……。このままでは勝負できないまま終わってしまう」

俺はもどかしさを押し殺すために地面を蹴りつける。――その時、こちらに向かってレイチェルがやってきた。

「……ユート……うぁ……うぇ……ッグズ……」

両手で涙を拭きながら泣きじゃくっている。

「レイチェルじゃないか。そんなに目が赤くなるまで泣いてどうしたんだ? ……って聞くまでもないか。負けちゃったのか?」

レイチェルはこくりと頷いた。俺はレイチェルの頭をでて、

「負けちゃったのはしょうがない。俺がなんとかしてやるから安心しろ」

と言ってめる。でも俺も勝負できない狀況なんだよな、困った。……いや、待てよ。

「なあ、レイチェル? ヴルトゥームで俺の姿を変えることって出來たりしないか?」

「……幻覚でいいなら……ぐすっ……できるのである」

腫れぼったい目を抑えながらレイチェルは答えた。

「それじゃあさ、俺を小さなの子にしてくれないか?」

「……わかったのである」

レイチェルが召喚を呼び出すと、俺の姿は瞬く間にかわ……らなかった。なくとも俺から見える手足はいつものままだ。

「レイチェル、どういうことだ? いつもの俺のままじゃないか」

俺の橫をの二人組が通り過ぎる。

「くすくすっ、あの子あんな可らしいのに俺ですって」

「反抗期なのかもねー」

……ん? あの二人の會話、俺のことを言ってるのか?

「幻覚はあくまで幻覚、実際の大きさが変わるわけではないのである。ユートは自分の大きさが見えるほうが楽であろう? だからお主には幻覚をかけていないのである」

「まあ確かにそうか。でも自分がどんなになってるのか見てみたくはあるな」

「なんと!? もしかしてがあるのであるか? ……くくっ、面白い。休みの日にでも存分に幻覚で化させてあげるのである」

レイチェルはさっきまで泣いていたとは思えないほど急に元気になった。別にがあるわけではなかったけど、レイチェルも何故か喜んでくれているし、一回そういう遊びをしてみるのも悪くないかもな。

「よし、じゃあその時は俺と二人でスイーツカフェにでも行こうぜ。よろしくな」

「その姿でその喋りだとし違和があるのである。もっとこう、例えばエリーみたくだな……」

「しかたないだろ? 俺はどんな姿になっているのかわからないんだから。……取りあえずこの予選中は幻覚をとかないでくれな! それじゃ、行ってくる」

時間が惜しいのでレイチェルとの會話はそこそこにして、対戦相手の募集を始めた。

「おれ……いや、私と勝負してくれる優しい人いませんか~? きゃるルンっ☆」

自分の中で一杯のぶりっ子をして、周りの人たちにアピールをする。

「はぁはぁ。君名前はなんて言うの? 僕ファンになっちゃったかも」

「うおぉぉぉ! 俺が負けてあげるから付き合ってくれー! 手を握ってくれー!」

「吾輩は手を握ってもらえるだけでもよいぞ」

「俺だって手を握ってもらいたい! 勝負してぇぇ!!」

瞬く間に(変態)紳士たちが集まってきた。うぉ、ちょっと気味悪いけどこれはチャンスなんじゃないか?

「はいは~い☆ ユー子は一人しかいないんだから、焦っちゃだ・め・だ・ぞ♡」

俺がノリノリで投げキッスをすると、十人ほどの紳士たちは歓喜の雄たけびを上げて盛り上がっている。俺のにはなんともいえない高揚がふつふつと湧き上がる……なんだこの覚、これがアイドルの気分なのか? ……癖になりそうだ。

「一人ずつ私の前に並んでね。勝負はしてあげるけど、ちゃんと負けてくれないと怒っちゃうよ! や・く・そ・く……だよ♡」

「はぁ~、怒ったユー子ちゃんも見たいけど約束なら仕方ないな!」

「約束します! どこまででもついていきます!」

俺は紳士たちを整列させ、握手會ならぬ指相撲會を開始した。

――――――――――――――――――――

「えいっ☆ 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!(早口) わ~い! ありがとう、私の勝ちだね」

「負けちゃったよ! ユー子ちゃんは可いなぁ!」

俺は列に並んでいた最後の參加者を倒し、楽々とプレート十二枚を集めることに功した。予選開始時刻からは十八分が経過している。途中なかなか手を離さない不屆き者がいたので大分時間はかかってしまったが、十分な戦果だろう……ただしそれは個人として見た場合に限るが。

レイチェルはプレートを一枚失い、シルヴィアは増減なしが確定している。俺と合わせた三人だけの績を見ると、一人辺り四枚ずつ獲得しているチームよりも劣っている計算だ。これでは上位を取れるかは疑わしい。

「できればあと倍、それが無理でも五枚くらいは増やしたいところだな」

俺は勝負してくれる人を探して聲をかけるが、プレートをたくさん持っているからか敬遠されてしまう。……時間は殘り九分になってしまった。

「あなた、プレートをたくさんもっているね。わたしと五回勝負してくれる?」

寢耳に水の提案をしてくれる人が現れた。聲をかけてきたそのの子は、ゴシックロリータ服にを包んでいて、は小さく線も細い。ネームプレートも五枚ちゃんと持っているようだ。

「勿論いいぜ――じゃなかった、いいわよ!」

五回勝負っていうからには自信があるのかもしれないけど、俺だって切り札はまだ殘ってる。このチャンス、逃すわけにはいかないぜ!

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