《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第四十九話 決意

「わかった、シスターの件は俺の方でいてみる」

「本當にありがとう。これが私の住所だから、進展があったら訪ねてきて」

さやかは俺の右の掌を両手でぎゅっと包み、住所の書かれた紙を渡した。

「それじゃあ俺は仲間のところに戻るから」

「ええ、また」

俺とさやかは一本杉をはさんで逆の方向にそれぞれ歩き出した。

「遅かったのであるな。……逢引あいびきであるか?」

レイチェルはまだ待っていてくれたようで俺に聲をかける。

「逢引っておいおい……。おこちゃまの癖に何故そう言う発想がでてくるんだ」

「――おこちゃまとは失禮な! わたしは十分大人なのである!」

レイチェルは両腕を後ろにばし、顔だけをツンと前に出して頬を膨らませている。

「わ、わるかったって」

「それなら二人で何をしていたのか言うのである」

「あんまり俺を困らせるなって。ウィル・オ・ウィスプ饅頭を二セット買ってやるから勘弁してくれ」

「なに、二セットであるか!? それは楽しみであるな。うむ、シルヴィアたちにもし分けてやろう」

レイチェルは目をキラキラ輝かせて饅頭を貰った後のことを想像している。

……なんとか誤魔化せたようだ。

その後表彰式を終えたアリサたちと合流して家まで帰り、疲れ切った俺たちはすぐに眠ってしまうのであった。

――――――――――――――――――――

翌日の朝。

「そういえば予選通過で貰えるオーブは誰が使うことにするの?」

ローザが朝食のフレークを食べながらみんなに尋ねる。

「わたしは別にいいわ。シルフで十分だし」

「……わたしも……いい」

「わたくしも遠慮しておきますわ」

「わたしも大丈夫である」

みんながみんな譲り合ってしまい、微妙な空気が流れる。

「ユート君は? いつもなら真っ先に『俺がガチャる!』って手を挙げてきそうなのに」

「……え? ああ、俺も別にいいよ」

ローザは目を細めて俺をじっと見つめたかと思うと、頬に手をばしてつねってきた。

「――痛っ、なにするんだよ急に」

「なんかユート君様子が変よ? やけに今日は口數がないし、偽かもしれないから確かめてみたの」

「偽ってなんだよ……。俺はれっきとしたユートだよ」

「……なにか悩みがあるならお姉さんに相談してみなさい?」

……俺がさやかの件で悩んでいるのを勘付かれてしまったのか?

「他のみんなもユート君の相談なら喜んで聞くわよね?」

ローザの言葉にアリサ以外のみんなはこくりと頷く。

「わたしは別にあんたが悩んでいようがいまいが関係ないわ。……でもこんなしょぼくれた顔した人間がうちのギルドマスターってのも頼りないわね。召喚の儀でいつもの調子に戻るならさっさとやってくれば?」

アリサは俺の方を見ずに言う。これは勵ましてくれているのだろうか? てか俺しょぼくれてるように見えてたのか。

「うん、じゃあオーブはユート君が使うことにしましょう。さ、もう食べ終わっているようだし教會に行くわよ」

ローザが勝手に決めて立ち上がり、俺の手を引っ張る。

「ちょっ、本當にいいのか? みんながいいっていうなら甘えちゃうけど」

「……ユートが元気になるなら……それでいい」

シルヴィアは心配そうに俺を見て言った。レイチェルとエリーも同様に心配そうにこちらを見ている。

「良い仲間をもってよかったねユート君! それじゃ教會までいっちゃお~」

ローザは俺を引きずって玄関の方に歩き出した。

「わかったってローザ、自分で歩くから。……みんなありがとな」

食卓のみんなが俺を笑顔で見送ってくれた。……アリサは笑顔じゃなかったけど。

――――――――――――――――――――

「ユート君? 昨日の予選會が終わってから様子が変だけど、何かあったの?」

教會へ向かう道の途中、再度ローザは俺の心配をしてくれた。

「…………」

俺が返事に困っているのを見て、ローザはふふっと笑う。

「言えないことなのね? それなら無理に言わなくてもいいわ。でも覚えておいてね? わたしはいつだってあなたの味方よ。なんせ異世界放浪者の案役のローザさんだからね」

ふざけた調子で話してはいるが、ローザの目は真剣で優しい。彼が本當に俺の事を心配してくれていることがじられて心が痛い。さやかの為とはいえ、ローザやみんなを裏切るようなことをしてもいいのだろうか……いや、よくない。ギルドのみんなや異端審問機関を裏切るような形じゃなく、もっといい解決方法があるはずだ。

「ローザ。今はまだ言えないんだけど、今度きっと話すから」

「うん、お願いね。……それにしても何か急に男らしい目つきになったわね」

「か、からかわないでくれよ」

「ふふ~ん、照れちゃって可い」

ローザと俺はそれからしばらくたわいない會話を続けるうちに、教會へとたどり著いた。

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