《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第五十二話 テンプテーション

教會から抜け出した後もローザが追ってきたが、次第に俺を呼ぶ聲も小さくなっていき、やがて聞こえなくなった。

「ここまでくれば平気かな」

たどり著いた場所は、家もまばらで閑散とした場所だった。

どうやら町はずれのほうまで來てしまったようだ。

「ローザに見つからないように、遠回りして帰るか……」

さすがにここまでローザが追ってきているとは思わないが、コソコソと忍び足で歩いてしまう。

しばらく歩くと、見知った顔の人が現れた。

「よお、シルヴィアにレイチェルじゃないか。巡回のクエスト中か?」

シルヴィアは返事をする代わりに、とてとてと近づいてきて俺のお腹の辺りにぽすっと頭を埋める。

「どうしたシルヴィア? 子ども返りか?」

「……ちがう」

シルヴィアはぷくーっとむくれながらも、顔を左右にごしごしと振って俺の腹をでまわす。一どうしたんだろう。

「レイチェルー! なにかあったなら教えてしいんだけど?」

し離れた場所で立ちんぼしていたレイチェルは首をかしげてハテナマークを浮かべている。

「いや、特に何かあったわけではないぞ……むしろ聞きたいのはこちらのほうである」

「ん? なにをだ?」

「なんというか、今日は妙にお主が男前で、まるで白馬の王子様のように見えるのである」

「そんな馬鹿な? いつも通りに顔洗っていつも通りの服を著てるだけなんだけど……って、もしかすると、うん、そういうことか」

「なにを一人で納得しているのだ」

レイチェルは悩んで曲げていた口を更に曲げて不思議そうにしている。

ちなみにシルヴィアはずーっと俺に引っ付いたままだ。

「あのさ、俺とローザで教會まで行ってギルド謝祭のオーブを取りに行ったのは知ってるよな?」

「勿論知ってるのである、やけに帰りが遅いと思ったらこんなところで時間をつぶしていたとはな」

「……時間がかかったのはそれだけが理由じゃないんだけど、まあそれはいっか。そこで手にれた俺の新召喚の効果が異を魅了させるって効果なんだよ」

レイチェルは「なっ!?」と驚いて自分の口元を抑える。

「まさかユートよ。私たち二人をその召喚で手籠てごめにする気ではあるまいな?」

「馬鹿っ、そんなわけあるか!」

手籠めって……。レイチェルはおこちゃまの癖にそういう言葉だけ知ってるのは謎過ぎるんだが。

「では何故我々を魅了させているのであるか? 正直わたしもお主に引っ付きたい気持ちを抑えられないのであるぞ……」

「すまん……。どうやらこの召喚――パールヴァティーは一度発したら解除できないみたいでな。ローザに使ってからずーっと全方位無差別に発しっぱなしになってるみたいだ」

ずっと黙って聞いていたシルヴィアがぽつりと呟く。

「……ずるい……ローザ」

「待て、なんでそこでずるいって発言になるんだ」

シルヴィアはこれまた返事をしないでぐりぐりと頭を押し付けてくる。

俺とシルヴィアでこんなやりとりをしていると、レイチェルがとうとう痺れを切らして俺の後ろから抱き著いてきた。

「こうしてやるのである」

レイチェルはシルヴィアの真似をして頭をグリグリ背中にこすりつけてくる。なんだこの狀況。

これ他の人に見られたら相當やばい奴に思われるだろ俺が。

「わかった二人とも、頭をでてやるからそれで勘弁してくれ」

「……一萬回……でて」

「わたしには一萬一回頼むのである」

「……それじゃあ……一萬二回」

変な張り合いが始まってしまった。といっても一萬回もでてたら日が暮れてしまうので、殘念ながらどちらの主張も卻下だ。

「百回くらいで許してくれ。……殘りはお前たちがクエスト終わってお家に帰ってきてからな」

そのくらいの時間になれば、パールバティーの魅了も切れるからなんとかなるだろう。

「……約束」「である!」

二人が上手く聲を合わせて念を押してきた。俺はハイハイと頷きながら、シルヴィアとレイチェルの頭を百回でた。

「よし、ここまで。あんまり遅くなるとクエストのお姉さんに怒られるぞ?」

二人はとても名殘惜しそうな顔をしているが、ちゃんと言うことを聞いて俺から離れてくれた。

ローザの時とは偉い違いだ。どうやら魅了による効果の度合いはかける相手によっても違うらしい。このくらいの魅了なら可いもんなんだけどな。

「それじゃあまたギルドで! 気をつけて行って來いよ~」

「……うん」

「またなのである!」

シルヴィアとレイチェルは仲良く手をつないでクエストに戻って行った。

さて、これからどうしたものだろうか。オンオフできない召喚というのは困りものである。

外にいると全く知らない人にも魅了をかけてしまうかもしれない。それは困るので、誰にも見つからないように自分の部屋に戻ることに決めた。

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