《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第五十三話 個人差
なんとかあれから誰にも合わずに家の前までたどり著くことに功した。
「……遠回りをした甲斐があったってもんだな」
とりあえず一安心だがまだ問題は殘っている。どうやって俺の部屋にるかだ。
いつものように玄関からロビーを経由してるのはなかなかに危ない。
アリサやエリーがロビーにいる可能は高いし、場合によってはローザが戻っててロビーで待ち構えてるってことも考えられる。
幸いなことに俺の部屋は一階なので、ここは窓から直接俺の部屋にってしまおう。不用心ではあったけれど、たしか鍵はかけないで出かけた記憶がある。
「抜き足、差し足、忍び足っと」
周りに人がいないことを確認して慎重に部屋の窓の近くまで歩いた。すると窓の中から聞こえるはずのない聲が聞こえてきた。
「あぁ……。ユート君、ユート君、ユート君!! 好き!」
ローザの聲だ。ローザはひときわ強くパールバティーの魅了をけているから完全にキャラが崩壊している。
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「はぁ……。この枕ユート君の匂いがする! クンカクンカ! 早くユート君を抱きしめてあげたいわ」
もうどうしようもない。
俺の部屋にローザが侵しているのは予想外だったけど、ここで気付けたのは結果オーライだ。
方針を変えてプランBを使うことにしよう。代替プランの概要はこうだ。
呼び鈴を鳴らさないようにこっそりと玄関からロビーに侵して、誰もいないことを祈る。
そして二階にあるシルヴィアかレイチェルの部屋に急いで移して隠れる。
ロビーに誰かいると前提から崩れるから問題だけど、最大の問題児ローザが俺の部屋に隔離されているという事実がプランBを実行する俺の決意を固くした。
――ガチャリ
できる限り音を立てずに慎重に玄関を開ける。
そしてロビーを見ると――――誰もいない! 神は俺を見捨てなかった! ダッシュで二階への階段を上りシルヴィアの部屋の扉を開く、
「あんた、何してんの?」
「ひぃっ!?」
アリサから聲を掛けられ、思わずけない聲を上げてしまった。
「ちょっとシルヴィアに貸してた本を取りに……」
「だからって勝手に人の部屋、しかもの子の部屋にるなんて本當デリカシーないわね」
アリサは呆れまじりのため息をこぼす。
「私が代わりに取ってきてあげるわ。なんて本?」
「いや、やっぱ本はいいや。急を要するじゃないしな! あはははっ……」
これはめんどくさいことになった。しかしおかしなことにアリサの様子はいつも通りに見える。
――よし、ここは今咄嗟に考えたプランCで行こう!
「アリサ、頼む! しばらくでいいんでお前の部屋に匿ってくれ! 事は後で話す」
悲壯漂う表で脇目も振らず土下座する俺を見て、アリサはただ事ではないとじたようだ。
「なによ急に……。変なことしないなら別にいいけど。でもわたしに手を出したら極刑だからね!」
「ありがとうアリサ! アリサのおかげで俺の貞は守られた!」
「はあっ? 貞? 馬鹿言ってるとれてあげないわよ。……ほら、こっちにきなさい」
アリサにグイっと手を引かれて部屋に連れ込まれる。
アリサの部屋はピンクで統一された部屋の裝飾、四大霊のぬいぐるみ、ハート型の小、などのもので一杯の子力抜群のファンシーなところだった。
「そういえばお前、意外と可いもの好きだったもんな」
「意外ってなによ、可いもの好きで悪かったわね! ちなみに嫌いなものはガサツでデリカシーのないあんたみたいな人よ!」
アリサは聞かれてもいないのに俺が嫌いだと主張してきた。
「もしかして、パールバティーの効果がもう切れてるのか……?」
俺はちょっと魔力を込めてパールバティーの姿を顕現させた。まだ効果は続いているようだ。
「なに、そのの召喚? これがあんたの新召喚ってわけなの?」
「そうだぞ。パールバティーっていってな、異を魅了する加護があるらしい」
アリサは口を押えて「なっ!?」と驚いている。この反応、デジャヴである。
「あんた、見損なったわ! そんな召喚で私を惚れさせようだなんて……。馬鹿でスケベで変態だけど、そんなことまでするとは思わなかったわ、最低!」
アリサは泣きそうな目をしながら俺を両手で押して部屋から追い出そうとしている。
「ち、違うんだアリサ! 誤解だ。このパールバティーはオンオフができない暴走気味の召喚で、一度試しに使ったらずーっと効果が止められなくて困ってるんだよ」
俺の必死の弁解を聞いてアリサは泣き顔から今度は顔をカーっと真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
「え、そうなの。わたしを惚れさせようとしたわけじゃなかったのね……」
アリサは早とちりしてしまった事に後悔しているようだ。
「いや、でも不思議だよなぁ。なんでアリサには魅了が効いてないんだろう」
俺の率直な疑問にアリサは同意する。
「確かに、いつもと変わった様子はないわね。そのパールバティーっていうのがそんなに強い効果じゃないんじゃないの?」
「そうなのかな、ローザの変わりようは驚くほどだったけどな」
「ふーん、個人差があるのかもしれないわね。まあいいわ、持続時間が切れるまではここにいていいから。あ、部屋のものにったら殺すから覚悟しておきなさい!」
「へいへい、デリカシーなくてガサツな俺でもそのくらいは分かってますよ」
いつも通りの軽口を叩きあいながらアリサと二人でしばらくの間過ごしたのであった。
――――――――――――――――――――
そしてついにパールバティーの効果が切れた。
「お、ようやく終わったらしい。助かったよアリサ、サンキューな」
「そ、終わったならとっとと出て行きなさいよ。こっちはあんたの顔を見過ぎて頭が痛くなってきたんだから」
俺はアリサのツンな態度に苦笑いを浮かべながら部屋を後にした。
それと同時に一階の俺の部屋からローザがフラフラの足取りで出てきた。
「お、ローザ。なんか辛そうだな。大丈夫か?」
「『大丈夫か?』じゃないわよ! ああ、わたしったらなんてことをしてたのかしら……」
魅了にかかっているときに行ったことを覚えているようで、ローザは顔を抑えて悶え苦しんでいる。
「それにしてもローザがあそこまで積極的に俺を求めてくるとはな、俺の事好きすぎるだろ」
「あのね、パールバティーの魅了の度合は元々の好度と相関関係はないという研究結果がでてるのよ。ユート君は変な勘違いしないように!」
「そうなんだ。そいつは殘念」
「あ、でもね。研究にはもう一つ結果が出ていてね、例外的に本當に心から好きあっている者同士の場合にはパールバティーの効果は出ないらしいわよ。……お姉さんを落としたいならもうし頑張る事ね!」
心の奧が覗かれたようでドキッとしてしまう。好きあっている者同士には効果がないだって? ……そんな馬鹿な、あり得ないだろう。
俺は頭では否定しつつも、心臓の鼓が高まっていくのをじるのであった。
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