《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第五十四話 裏切り

教會への襲撃があった翌日。まだ日が昇って間もないころに俺は家を出た。

確かめなければいけないことがあったからだ。

開店前の準備で慌ただしくしている商店街の道を歩く最中、さやかから貰った紙を広げる。

「さやかの住所はこの通りの先、だな」

俺はヘルヘイムを甘く見ていた。悪の組織であることは認識していたが、所詮竊盜団だと高を括っていたのだ。しかし昨日の襲撃で俺の認識は変わった、必ず倒さなければいけない相手であると。

住所の場所までたどり著くと、そこには家というには立派過ぎる建があった。例えて言うなら小さなお城みたいだ。

――チリリリリィン

家の前に設置してある呼び鈴を鳴らすと、玄関から執事服を著た男が現れた。

「弊ギルドに用でいらっしゃいますか?」

「はい、さやかを呼んでしいのですが」

ここは家ではなくてギルドだったのか。うちのギルドも家とギルドを兼ねてるから同じような形かな。

「失禮ですが、お名前は?」

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「ユートって言えばわかると思います」

「承知いたしました。々お待ちください」

執事は玄関のドアを閉めてさやかを呼びに行ったようだ。それにしても執事がいるなんて凄いな。うちのギルドでも雇ってみようかな……いや、そんなに予算はないか。

そんなことを考えていると、再び玄関のドアが開いた。

「ユート、二日ぶりかしら。早かったわね。シスターの目処はついたの?」

「あー、ここで話すのもなんだし部屋にいれてもらえるか?」

さやかは二、三度手招きをして中にるように促した。それに従い俺も中へとっていく。

「いらっしゃいませ、ユート様」

「どうも、おじゃまします」

先ほどの執事とすれ違った際に挨拶をされた。名前を憶えられてしまったが大丈夫なのだろうか、そもそもこのギルドはヘルヘイムと関係はあるのだろうか。

モデルルームのようなほとんどのない綺麗な部屋に案されて、執事から二人分の紅茶が出される。その後一禮して執事は部屋から出て行き、部屋には俺とさやかの二人きりになった。

「ここ、さやかの部屋なのか?」

「そうよ、何か気になる?」

「いや、やけにないなと思って」

さやかは紅茶をすすると、目線をし上の方に向けたまま返事をする。

「この世界に未練を殘したくないの、絶対に元の世界に戻るって決めてるから」

決意のこもった口調ではっきりと言った。彼の意思は固い。

「それで、シスターの件はどうなったの?」

一昨日と同じような無表で俺に聞いてくる。悪気はないのだろうけど、詰問されているようでちょっと怖い。

「……実はその件はまだなんだ。すまん。今日は俺の方から質問があってきた」

さやかはほんのしだけ視線を落としてがっかりした様子を示したが、すぐに元の表に戻って聞き返す。

「いいわ、何でも聞いて」

「昨日の教會襲撃事件について知っていたのか?」

「……知っていたわ」

「何故教えてくれなかったんだ、もうしで犠牲者がでるところだったんだぞ」

「あなたに伝えるにはいくつもの障壁があったの。ごめんなさいね」

さやかはすまなそうに肩を落として、再び紅茶のカップに口を付けた。

「さやか、一つ提案がある。教會に降伏してくれないか」

「……何故?」

「これ以上君に悪事に加擔してほしくないんだ。それに、降伏したからって酷い待遇をけるわけじゃない。エリーを知ってるか? 彼は今教會の監視下の元しっかり更生している」

「……あなた、わたしの目的を忘れたの? 虹のオーブが手にらなければわたしはもう生きている意味なんてないのよ。虹のオーブを手にれるためには組織にいるしか方法はないの」

「そんなことはない。俺たち異端審問機関はヘルヘイムを殲滅するつもりだ。そうなったら虹のオーブは元々売っていた店に返卻されるはず。そこで正當に購すればシスター探しに苦労することもない」

「お金はどうするの?」

「……俺が何とかするさ」

ヘソクリは結構溜まっている。適正価格で市場に出回る時がくれば、一つくらいは買うことができるだろう。

「わかったわ。どの道あなたに協力してもらうしかすべはないし……その要求を呑むわ。でもただ降伏するだけじゃあまり意味がない……わたしが教會のスパイになってあげる」

「スパイだって?」

「そうよ、わたしはヘルヘイムの幹部。ヘルヘイムについての報をその立場から橫流しすれば殲滅も楽になるでしょ?」

「確かにそうだな……。危険は伴うと思うけど、お願いできるか?」

さやかの目をしっかりと見つめながら返事を待つ、その時、

――バタンッ、部屋の扉が急に開けられた。

「……困りますね、そんな簡単に組織を裏切られてしまっては」

扉を開けてってきたのは――執事だった。

「さやか!? もしかしてこのギルドって……」

「違うわ! このギルドは組織とは何も関係がない……執事のエルハイムだってわたしが組織にる前からここにいたのに!」

「さやかお嬢様、あなたは組織を甘く見過ぎている。私を組織の人間でないと決めつけたのは早計でしたね……この街のいたるところに組織の人間はいるのですよ。……まだあなたが土のエリート召喚士になっていなくて本當によかった。今なら私でも簡単にあなたを捕えることが出來る」

エルハイムは挑発的な笑みで俺たちを見據えると、召喚を行った。

エルハイムの足元には人形のような大きさの小人が八、九……十も現れた。なんだこれは? ――こいつら全部で一つの召喚ってことなのか? 俺はルーペを構える。

『Bランク召喚獣 コロボックル』 ●●●●●

アイヌの伝承に登場する小人。

赤ん坊程の大きさではあるが、非常に機敏に

狩猟が得意とされる。

コロボックルの加護をけたものは、

のコロボックルを自由にることができるようになる。

【召喚持続時間:二時間】

「今までにないタイプの召喚だな。でも……」

「でもBランクだから怖くないとでも思ったのなら、とんだ馬鹿野郎でございますよ。捕えよ、コロボックル!」

エルハイムが號令をだすと、召喚されたコロボックルの群れは蜘蛛のようにすばしっこく床を這いずり俺とさやかの周りを取り囲んだと思ったら、瞬く間に俺たち二人を擔ぎ上げてしまった。

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