《ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件》フェアリープリンセスの激勵
屋敷の者達が寢靜まった後、ガレアスの執務室には4人の男の姿があった。
クリステーレ家當主であるガレアス。
クリステーレ家次期當主であるアレス。
ルシエルの専屬執事であるバロン。
そしてアレスの弟であり、今は亡きルーシェンの兄であるジェラルド。
ガレアスは、自が呼び出した3人を見渡して口を開く。
「さて、今回呼び出したのはルシエルのジョブについてだ。ジェラルドよ。話は聞いておるか?」
「ああ。仕事から帰ってきてすぐに兄貴から聞いた。ルシエルがテイマー系のスキルを授かったんだってな。……正直、最初は信じてなかったが、このメンツがこんな辛気臭せえ顔をしてるのを見たら信じるしかなさそうだ」
ジェラルドは顎に蓄えた無髭をでながら、吐き捨てるようにそう答えた。
「ジェラルド、し口が悪いぞ」
アレスがジェラルドを窘める。
「よい。それより話を進めよう」
ガレアスがそう言うとそれぞれがを正す。
「儂は、ルシエルをクリステーレ家から外すしかないと思っておる。……先の事件の影響で、テイマーのジョブは忌諱されておる。これから貴族としてはやっていけぬだろう」
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「父上、ルシエルを我が家で匿うことはできないんですか?」
アレスがガレアスに問う。
「アレスよ。あやつをここに縛り付けて隠したとしてもいずれはバレる。隠していた分だけ、バレた時の反も大きくなるだろう。我が家は良くも悪くも目立っておるしな」
「確かにな。俺はここにルシエルを縛り付けて隠すってのは反対だ。そんなの幽閉されてるようなもんだぜ。俺ならそんなの耐えられねえ」
ジェラルドがアレスの意見を否定する。
「……しかしっ!」
アレスの顔は暗い。
ルーシェンが亡くなった後、ルーシェンの代わりとしてアレスを見てきた。
もう自分の息子だと言っても過言ではない。
だからこそ、このままルシエルのことを放ってはおけなかった。
「兄貴もわかってるだろう?貴族である以上、授かったジョブは國に報告しなければならない。國相手に隠し通すのは無理だ。……兄貴、何も追い出して終わりって訳じゃないんだぜ? 今から俺たちが話すのは、ルシエルがここを出てどうするかだ。……し冷靜になろうぜ」
そう言われて、アレスはハッとする。
「すまない。し焦って……いや、かなり焦っていた。大事なのはルシエルがこれからどうするか……か」
アレスは目を閉じ、何かを思い返すように上を向く。
「かまわん。アレスよ。ルシエルのことを心配しておるのはお主だけではない。……なにせルーシェンのただ1つの忘れ形見だからな」
ガレアスの発言に全員が頷く。
アレスが落ち著いたのを確認し、ガレアスは話を続ける。
「……ルシエルはクリステーレの名を捨て、我が家から出て行く。これに反対の者はいるか?」
ガレアスは皆を見渡す。
「……いないようだな。では、ルシエルが出た後についてを話そう」
その後も夜遅くまで、話し合いは続くのであった。
▽▽▽
ガレアス達が話し合っている一方で、寢付けなかったルシエルはこれからのことを考えていた。
はぁ……
ベットの上で膝を抱えながら、僕は何度目かもわからない溜息をつく。
お爺様の言葉が、頭の中で繰り返される。
この國でのテイマーの印象は盜賊と並んで最悪だ。
ましてや、お主の父はテイマーによって殺されたも同然。
それでもお主はテイマーとしてやっていけるか?
ただ単純にテイマー、ドラゴンテイマーとしてやっていくなら自信はあった。
でも、この國でのテイマーの印象が最悪というのはつらい。
「父様はテイマーに殺されたも同然……か」
そして何より、テイマーが原因で父様が死んだということが悲しかった。
テイマーがデーモンを召喚しなければ……
テイマーが反を起こさなければ、父様は死ななかった。
前世の記憶が戻った今も、父様と母様と一緒に暮らせていたのかもしれない。
そう思うと、事件を起こしたテイマーは許せないと思う。
父様と母様がいなくて寂しい、悲しいという思いもある。
……でも、テイマーが好きだという自分もいる。
ゲームの中でだが、モンスター達と共に長して冒険して戦って……
たった3年間だったが、前世の人生の中でも夢中で楽しんでいた記憶もある。
「僕はただドラゴンテイマーになりたかっただけなんだ……」
「ならドラゴンテイマーでいいじゃない」
「っ! 誰?」
僕の呟きに応えるように聲が聞こえた。
聲がしたほうに振り向くが誰もいない。
そこにあるのは、ソファとテーブルだけ。
考え過ぎて幻聴まで聞こえてきたのか……?
「あら? 私のことがわからない?」
聲はソファから聞こえてきた。
ソファに目を向けると、おぼろげながらソファに腰かけたの子の姿が浮かび上がってくる。
その聲の主は、どこかからかうような顔をして、ルビーのような赤い瞳で僕を見つめていた。
の子の背中には、き通った海のような青い蝶の羽……
いや、妖の羽が生えていた。
「もしかして……リーチェ?」
僕がそう問うと、そのの子はムスッとした表でソファから立ち上がった。
そのきにつられて腰まであるややピンクをした銀髪が舞う。
長は10歳の僕と同じぐらいで大140cmほど。
薄緑を基準とした、白い裝飾がったドレスにを包んでいる。
「どうして曖昧に答えるのかしら? そこはスパッと言い切ってしかったわね」
そう言いながら、彼は僕のいるベットの前まで歩いてきた。
「久しぶりね。……いえ、この世界では初めましてかしら? 私はフェアリープリンセスのリーチェ。親なるあなたのしもべよ」
そう言って、リーチェは僕の頬に手をれて微笑む。
そして、頬をでられたと思ったらいきなり抓られた。
「いっ! 痛い痛いっ! ……リーチェ、いきなり何するんだよ!」
リーチェはムスッとした顔で、僕を睨んでいる。
「な、なんだよ……」
もしかして、レベルに差があり過ぎて反抗期になっているのか?
そもそも、リーチェってこんなツンとしたお嬢様系だったんだな……
もっとお淑やかなイメージだった。
「ウジウジして辛そうにしてるあなたを見たら、なんだかイライラしてきたのよ」
理不盡だ……
「そんなこと言われても、これから僕はどうしたらいいのか悩んでいるんだ……」
「そんなの答えはもう出てるでしょう? さっき言ってたじゃない。ドラゴンテイマーになりたかったって」
リーチェの赤い瞳が僕の瞳を捉える。
「テイマーが嫌われているなら、テイマーが見直されるようなことをすればいい。私達と共に人々を助けてきたあなたにならできるはずよ」
リーチェの手が僕の頬をでる。
今度は抓られることはない。
「それに弱かった私達を魔王と渡り合えるぐらい育て上げたんだもの。あなたはテイマーとしてやっていけるはずよ。あなたと一番一緒にいた私が言うんだから間違いないわ」
「リーチェ……」
僕のことをそう言ってくれるのか……
……そうだ。
僕はテイマーが好きだったからドラゴンテイマーを選んだ。
テイマーが嫌われているなら、テイマーが好かれるようなことをしよう。
父様が騎士として人々を守ったように僕もテイマーとして人々を助ける。
それで、もしテイマーが悪さをしようとしてたら僕が止めよう。
テイマーが失った信用を取り戻せるのはいつになるかわからないけど、力を持っている僕ならそれができるはずだ。
「ありがとう。リーチェ……」
安心したせいか僕の目から涙がこぼれる。
「えっ、な、なに泣いてんのよ! もしかして強く抓り過ぎた? ご、ごめんねっ? さすってあげるから泣かないでよ……」
泣いている僕を見て、リーチェはオロオロし始めた。
ゲームではわからなかったけど、怒ってくれたり、勵ましてくれたり、オロオロしたり……
リーチェってこんなに表かだったんだな。
「ぷっ、リーチェ慌てすぎ……大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。でも今度からは痛いのはやめてほしいかな?」
「わ、笑うなっ! せっかく勵ましてあげたのに……!」
照れながらプリプリと怒るリーチェを見ていると、なんだか元気が湧いてくる。
なんだかんだでリーチェとは、これからも上手くやっていけそうな気がする。
「これからもよろしくね。リーチェ!」
「……ええっ! こっちの世界でもんなところを一緒に冒険するわよ!」
リーチェのおかげで、この異世界で僕の進む道が見えてきた。
その道は真っ暗で茨の道かもしれないけど、リーチェと一緒ならどこまでもいけるだろう。
「あっ、でも基本的に私は手助けしないから。……だって、あなたはドラゴンテイマーなんだから、テイマーではなくドラゴンテイマーとして頑張らないとダメでしょう? あと、私が手助けしたらあなたのやることがなくなるもの」
……前言撤回、僕だけでは道の途中で迷子になってしまうかもしれない。
そんなこんなで、僕の記憶が戻ってからの異世界生活1日目が終わったのであった。
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