《ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件》弓使いの赤い年
この休憩部屋で休むこと約1時間。
リューネの用意した軽食を食べた僕達は、適度にだらけて休んでいた。
あんまり休み過ぎても気が抜けてしまうし、そろそろ探索を再開しようかな?
リュークとリューネも、疲れが取れたように見える。
「さて、休憩もそろそろ終わりにして、探索を再開しようか!」
僕がそう言って立ち上がると、リュークとリューネも続く。
「了解しました!」
「わかりました」
「ええ、行きましょうか」
リーチェは眠っているアステルを抱いて立ち上がる。
あっ、忘れが無いように見とかないと……
「うん。忘れもないね。じゃあ行こうか」
そうして、僕達はってきた扉とは反対側にある扉へと向かう。
一応、パーティの橫を通り過ぎる際は、軽く會釈しておく。
同じ冒険者だし、もしかしたら今後お世話になる人かもしれないしね。
こちらに気付いた冒険者達が、たまに會釈を返してくれる。
すれ違う冒険者達をチラ見してみたけど、やはり1階層だからか僕達のような子供が多く見られた。
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武はシンプルな量産型のもので、防はきやすそうな皮の鎧という初心者っぽい裝備だ。
種族的には、やっぱり竜人が多くて、ちらほらと人間と獣人が混ざっているじだった。
どのパーティにも弓矢や杖を持つ人がいたな……
できれば僕のパーティにも後衛がしいところだね。
リーチェにも戦ってもらおうかな?
弱い魔法だけとか、弱い武を使うとか、何かしらの縛りを付ける必要があるけど……
「おい、待て!」
最後のパーティの橫を通り過ぎた後、僕達の後ろからそんな聲が聞こえてきた。
ん? 僕達に対して言ってるのかな?
なんかめんどくさそうな予が……
しぶしぶ振り返ると、赤い髪の竜人の年が立っていた。
全的に赤い年。
豪華な裝飾が施された赤い弓を背負っており、當てやマントなどの防も赤を基準として統一されている。
そんな彼は、リュークをじっと見つめていた。
「お前、もしかしてリュークか?」
目の前の年が、リュークにそう問いかけた。
どうやらリュークの知り合いのようだ。
「お前は……ウィーグレン!」
リュークが驚いた表で、ウィーグレンと呼んだ年を見る。
その顔には、やや嫌悪のが浮かんでいた。
「やっぱりそうか。……とすると、そっちはリューネか! お前らこんなとこで何してるんだ?」
「お前に答える必要はない。みなさん行きましょう」
リュークはそのままを翻そうとするが、ウィーグレンの手がリュークの腕を摑む。
「まあ待てよ。……親戚のよしみだ。お前らも俺の奴隷にしてやるぞ?」
「離せ! ……お・前・ら・も・とはどういうことだ?」
リュークは腕を振り払って、ウィーグレンを睨む。
「ああ。つい最近、子供の奴隷を買い占めたのさ。この休憩部屋にいるのは、ほとんど俺の奴隷だ」
初心者っぽい子供が多いと思ったら、このウィーグレンが連れて來ていたようだ。
それにしても、奴隷商館で子供の奴隷がいなかったのは、ウィーグレンが買い占めたせいか……
子供といえども、奴隷を買い占められるということは、そこそこのお金持ちなのかもしれない。
彼の裝備も整っているしね。
「どうして子供ばかりを?」
リュークはウィーグレンを不審そうな顔で見る。
そんなリュークを見てウィーグレンはニヤリと笑う。
「良い奴隷を厳選するために決まっている。今のうちに有能そうな子供を鍛えておけば、俺が獨立するときには使える配下となっているだろう。……見込みのないやつは、奴隷商に売り返せば金もある程度は戻ってくるしな」
育てるやつを厳選とか久々に聞いたな。
モンスター育ゲーム以來だぞ……
「その中に俺達も加えようと言うのか?」
「ああ。もうじきお前らも奴隷になるんだろう? 俺が買い取ってやるから安心しろ。まあ、お前の実力じゃあダンジョン攻略は難しいだろうがな……」
そう聞いたリュークは、むっとした表でウィーグレンを見返す。
「そんなことない! 俺は強くなってる!」
「へえ。じゃあ、久しぶりに戦ってみるか? お前が俺に勝てたことは1度もなかったと思うがな」
「くっ……!」
なんだこの狀況……
リュークとウィーグレンが口を開くたび、徐々に険悪なムードになっていく。
リーチェはしワクワクしながら見ていて、リューネは不安そうに様子を伺っている。
できるなら、さっさとここから出て探索を再開したいんだけどなあ……
「ねえ、リューネ。あの人と何かあったの? かなり険悪なじだけど……」
僕がそう言うと、リューネもこっそりと答えてくれる。
「はい。彼はウィーグレンという火竜公に連なる家系の者です。昔は仲が良くて一緒に遊んだりこともあったんですが、いつからか兄さんとすぐに口喧嘩するようになってしまって、それからずっとこんなじなんです」
「そうなんだ……」
リュークのライバルというじなのかな……?
でもまあ、奴隷になれというのは、リュークが怒るのも仕方ない気がする。
奴隷にならないために々と頑張ってたようだしね。
「とりあえず、タイミングを見計らって、さっさと休憩部屋を出ていくようにしよう」
「はい。そ、それと……あの、あまり耳元で話さないでもらえると……ぞわっとして、しくすぐったいです」
耳を赤くしたリューネは、照れたようにそう言う。
「あっ、ごめん」
僕達はそう談している間にも、リュークとウィーグレンの口論は激しくなっていく。
「ふん! まあ、お前はどうでもいい。俺がしいのは、リューネ……お前だ!」
「え、えっ?」
急に呼ばれたリューネはビクッと震え、戸った様子でウィーグレンを見る。
「ウィーグレン! お前なんかにリューネはやらん!」
リュークが聲を荒げて、リューネとウィーグレンの間にる。
「リューク、お前は黙っていろ! 止めたいなら力ずくで止めてみろ! まあ、お前じゃ俺には勝てないがな」
「なんだと! やってやる!」
「はっ! かかってこい。どれだけ頑張っても超えられないってことを教えてやるよ」
にらみ合う2人は、お互いの武に手をかけた。
口喧嘩まではいいけど、さすがに戦うってなるのは見過ごせないぞ……
「まあまあ、落ち著きなよリューク」
僕は頭にが上っているリュークの肩へと手を置く。
「リ、リーダー……」
しは冷靜になったのか、リュークはばつの悪そうな表を浮かべて僕を見る。
「リューネも大丈夫かい?」
「は、はい」
「なんだお前は? 部外者は引っ込んでろよ」
急に僕が出しゃばったことで、ウィーグレンは不機嫌な顔となる。
「一応、僕はリュークとリューネの主人ってことになってるね」
そう、リュークとリューネは、僕専屬の使用人ということになっている。
エウロスさんに貰った大金から、2人の給料を出すと言ったらこうなった。
「ほう……では、いくらならこの2人を譲ってもらえる? なんなら俺が連れてきた奴隷の中から、好きなやつを好きなだけ持っていってくれても構わないぞ?」
ウィーグレンは測るような目で僕を見る。
「それは魅力的な相談だけど、リュークとリューネを手放すつもりはないよ。この2人は僕の大事な仲間なんだ」
僕がそう言うと、ウィーグレンは面白くなさそうな顔になる。
「ふん。まあいいだろう。……だが、もし不要になったら言ってくれ。奴隷商よりも高く買い取ろう」
ウィーグレンは一方的にそう言って、を翻して去っていった。
「てっきり戦うことになるのかと思ったけど、話だけで終わったわね。それはそれで良かったけれど」
リーチェはし殘念そうにつぶやく。
「いや、何事も起こらなくてよかったよ……」
ウィーグレンがまだ理的で良かったよ。
リュークとのやり取りを見る限り、もっとグイグイくると思ったけど、案外あっさりと引いてくれた。
振り返るときにニヤリとし笑ってたような気がしたけど……
僕がほっと一息ついていると、リュークとリューネが寄ってきた。
「リーダー、ウィーグレンと戦おうとしてごめんなさい!」
「ルシエル君、兄さんを止めてくれてありがとうございました!」
2人そろって頭を下げる。
「いいよ。今度から気を付けよう。煽られても冷靜にね?」
「はい!」
でも、ウィーグレンはそんなに悪い奴じゃない気もするんだよね。
リュークのことを煽ってはいたけど、悪意があるようなじじゃなくて、ただじゃれてるようにも見えた。
あと、単純にリューネへと好意を抱いているみたいだったし……
もしリュークとリューネをどうにかしたいなら、あんなにあっさりと引かないと思う。
……とはいっても、念のため警戒はしておくけどね。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか。今日中に第1階層の踏破を目指すんでしょう?」
「そうだね。じゃあ気を取り直して先に進もうか!」
「了解です!」
「はい!」
こうして、ちょっとしたトラブルもあったが、僕達は第1階層の攻略を再開したのであった。
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