《ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件》不穏なゴブリンの群れ

第1階層の後半部に存在する大部屋。

そこには、ウィーグレンと16人の子供の奴隷達がいた。

それに対して、ゴブリンの數は50以上。

ウィーグレン達は、ゴブリンの群れに完全に包囲されていた。

「ゴブリンがこんなにも!」

「うわぁぁぁ! 助けてぇ!!」

「ウィーグレン様! 囲まれてます!」

奴隷達の絶の聲が響き渡る。

「ゴブリンどもめッ!」

ウィーグレンは悪態をつきながら、右手に火の矢を生する。

背後の子供の奴隷たちを気にしながら、赤い弓に火の矢をつがえる。

「くらえッ!」

ウィーグレンが放った火の矢は、火のを散らしながらゴブリンを貫く。

傷口からは炎が上がり、ゴブリンの上半を焼き盡くす。

ゴブリンは倒れてのたうち回るが、やがてかなくなり消滅した。

1のゴブリンを倒したところで、ゴブリンはまだまだ殘っている。

強引に突破しようにも、奴隷達は逃げ切ることができないだろう。

まだ犠牲者は出ていないが、この狀況だと犠牲が出るのも時間の問題だ。

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ウィーグレンは、奴隷の1人へと指示を出す。

「カーティスッ! 他の奴隷を俺の後ろに集めろッ! ゴブリンどもに背中を向けさせるなよ!」

「はっ! パーティ1は右後ろ、パーティ2は左後ろで持ちこたえろ! パーティ3はウィーグレン様をお守りしろ!」

カーティスと呼ばれた人族の年は、その他の奴隷達を集め、ウィーグレンの背を守るようにして展開する。

その間にも、ウィーグレンは火の矢でゴブリンを打ち抜いていく。

「ゴブリンどもの數をある程度減らしてから強行突破を図る! それまで持ちこたえろ!」

奴隷達はウィーグレンの聲を頼りにゴブリンを倒し続ける。

……だが、倒しても倒してもゴブリンの數は減らない。

「どういうことだ? ゴブリンどもの數が減らない。いったい何が起こっている……?」

ウィーグレンは不審げに辺りを見渡すが、特に変わった様子はない。

ゴブリン、ゴブリン、ゴブリン……

見渡す限りのゴブリンの群れ。

「パーティ1! 負傷者を連れてこちらに下がれ! パーティ2もし下がれ! しばらくパーティ1を護衛しろ!」

辺りにカーティスの聲が響く。

カーティスは上手く指示を出しているが、奴隷に負傷者が出たようだ。

ゴブリン達との連戦で、奴隷達のきは鈍くなっている。

「魔法や矢を使うゴブリンがいないのは不幸中の幸いだが、これ以上持ちこたえるのは難しいか……」

ウィーグレンは、自の周りで戦っている奴隷達を見てそうつぶやいた。

「ウィーグレン様! 負傷者の數が増えてきました! ……これ以上は持ちませんッ!」

カーティスの悲痛な聲がウィーグレンへと屆く。

「くそっ! このまま死んでたまるか! 一か八か強行突破を図るぞ! 前にある扉を目指せ!」

ウィーグレンの指示で全員が一塊となり、前方にある扉へと突撃する。

前方のゴブリン達を倒しながら、ウィーグレン達は負傷者を庇うようにして扉へと進む。

「追いかけてくるゴブリン達を牽制けんせいしろ! 持ちこたえないと押しつぶされるぞ! 武を振り回すだけでもいい!」

カーティスは戦える奴隷達を指揮して、後方から追いかけてくるゴブリン達を牽制けんせいする。

「扉まではもうしだ! このまま突き進め!」

ウィーグレンは火の矢を放ちつつ、闘する奴隷達を鼓舞する。

……しかし、周りの奴隷達はもはや限界だった。

「ぐあっ!」

ウィーグレンの橫にいた奴隷が、ゴブリンの持つ剣に腹を突き刺されて倒れる。

倒れた奴隷の傷口からが溢れ、溜まりが広がっていく。

「このゴブリンがぁッ!」

ウィーグレンはびと共に火の矢を放つ。

火の矢はゴブリンの頭を貫いて炎をあげる。

頭を焼かれたゴブリンは倒れて、まみれの剣と共に消滅した。

前方の1人がやられたことで、他の前方のメンバーへの負荷も増える。

これにより、ウィーグレン達の進行も止まり、徐々に隊列が崩れていく。

「俺は簡単に死なんぞ! 覚悟しろ!」

ウィーグレンが新たな火の矢を生した時、背後から暴風が巻き起こった。

周囲のゴブリンが吹き飛ぶほどの暴風だが、ウィーグレン達は一切影響をけていない。

吹き飛ばされたゴブリン達は、そのまま地面に落ちて転がっていく。

ウィーグレン達はその景を呆然ぼうぜんと眺める。

「ウィーグレン! 無事か!」

ウィーグレンは、自分の呼ぶ聲の主を見て驚愕する。

「……リューク!?」

を手にしたリュークは、ウィーグレンのもとへと駆け寄る。

「なぜここに……? なぜ俺達を助けに……?」

信じられないという顔としたウィーグレンは、リュークへと問いかける。

「……遠い親戚のよしみだよ。それよりもゴブリンだ」

リュークはそっぽを向きながらそう答える。

ウィーグレンは何か言いたそうだったが、苦い顔をするだけで口にすることはなかった。

▽▽▽

「ありがとうリーチェ!」

リューネが風魔法で群がっていたゴブリン達をふっ飛ばしてもらった。

ゴブリン達が宙を舞うぐらいの暴風だったけど、僕達やウィーグレン達への影響はなかった。

リーチェさんさすがです。

「お禮をいうのはまだ早いわ。ここを乗り切ってからにしましょう」

リーチェはそう言って、ゴブリンが集していた一點を見つめていた。

何か変なものを見たのか、リーチェは不快そうな表をしている。

「どうかした?」

僕が問いかけると、リーチェはゴブリンが集していたところを指さした。

「今は消えているけれど、あの辺りに空間の裂け目があったわ。その裂け目からゴブリンを召喚していたのでしょうね」

リーチェは振り返って、真剣な表で僕を見つめる。

「以前、同じものを見たことがあるの。……ウロボロスの幹部のエキドナ。私達の魔導船を襲撃してきたが使っていたわ」

「えっ……」

もしかして、ウィーグレン達を襲っていたのはウロボロスなのか?

この部屋に何か重要なものがあるのか?

ウィーグレンにウロボロスから狙われる理由があるのか?

僕達を狙った罠にウィーグレンが掛かってしまったっていうこともありえるのか?

謎だ……

「確定というわけではないけど、ウロボロスが関わっているかもしれないということも視野にれておきましょう」

「そうだね。……だとすると、次に何か起こる前にダンジョンから出たほうが良さそうだね」

「ええ。さっさと彼らを救出して抜け出しましょう。……リューク達もゴブリンを一掃できたようだしね」

「ほんとだ。ゴブリンもあと數ってところだね。ウィーグレン達とも上手く連攜できてるし」

そう話していると、僕達のもとに相を変えたリューネが駆け寄ってきた。

何やら慌てている様子だ。

「ルシエル君! 重癥の子供にポーションを使ってもいいですか?!」

「いいよ。重癥なんだったら気にせずに使ってあげて」

ポーションはまだまだあるしね。

「ありがとうございます!」

リューネはそう言って走っていった。

「僕達も行こうか」

「そうね」

僕達はリューネの後に続いて走る。

ウィーグレンの周りに全員集まっているようだ。

僕達が合流すると、ウィーグレンが僕達へと歩み寄ってきた。

「リュークから簡単に話を聞いた。援護してくれて助かった」

「気にしなくてもいいよ。冒険者は助け合いが大事だからね。……それよりもこの部屋を出よう。また変なことが起こったら困るし」

僕がそう急かすと、ウィーグレンは深く頷く。

そこで、辺りが急に騒がしくなる。

「すごい! 死にかけだったのに完治したぞ!」

「一瞬で傷が治った!」

「ベリナス! 助かってよかった!」

「どれだけ高価なポーションだったんだ?! 100萬ゴールドはくだらないぞ!」

「リュ、リューネ! もしかして、貰ったポーションが間違ってたんじゃ……?」

「ええっ! そ、そんなっ!? ル、ルシエル君、ごめんなさい!」

そんな聲が聞こえてきた。

僕とウィーグレンは、何とも言えない表で顔を見合わせる。

「それよりも急いでこの部屋を出よう」

「ああ。そうしよう」

僕達はウィーグレン達と共に第1階層の奧へと歩みを進める。

全員無事で救出することができて良かったのだが、ウロボロスという悩みの種を抱え込むことになってしまった。

このまま何もないことを祈る……

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