《悪魔の証明 R2》第152話 090 アカギ・エフ・セイレイ(1)
「アカギ君と俺を殺してしまえば、もう乗客はエリシナ以外にいない……そう考えると、彼の判斷はしおかしい。そんな素振りさえなかった」
「そうです。つまり、フリッツさんには、もう人を殺すつもりはなかったということになります。その証拠に、夜中僕が外に出たとき、フリッツさんは外にテロリストがいるからという理由で、僕を外まで迎えにきてくれました」
「……狀況から考えると、アルフレッドの行を気にした可能が高いな」
クレアスが僕の説明により抱いたのであろう推察を述べる。
「ええ、僕もそう思います。テロリストがいるという設定だからというのもあるのでしょうが、それよりフリッツさんは僕と一緒にいたアルフレッドの暴走に危懼を抱いていたはずです」
「そうなると、やはりフリッツさんはアカギ君を迎えにいったというより、アルフレッドがアカギ君を殺そうとするのを阻止しようとして彼を外まで追ってきたと考えるのが自然かもしれない」
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「クレアスさん、そうですね。これらから推測するに、フリッツさんは、乗客が複數人數生存しても問題ないというルールを信していたと思われます。そして、このフリッツさんが知るルールは実際ARKのルールに即している」
僕は強い口調で、そう宣告した。
「間違っているも何も、そのようなルールは知らない。その前に、アカギ君。テロリスト扱いされるのは、とても心外だわ。私はあなたを救ってあげたのよ。その事実を踏まえてのことなのかしら」
エリシナが語気を微弱に荒げて、反論してくる。
「エリシナさん、その通りです。確かに僕はあなたに救われました。ですが、あなたはテロリストです」
僕は脈絡なく彼をテロリストとして斷定した。
「アカギ君、それでは……なぜ、テロリストであるはずの私があなたを救う必要があるのかしら」
エリシナはし言葉を詰まらせながら、尋ねてきた。
もうし焦るかと思っていたが、まだ心に余裕があるのか表は先ほどとたいして変わらない。
彼の瞳を見つめながら、
「人數です」
と、即答した。
「人數とは?」
エリシナが発言の意図を確認してくる。
「単純なことですよ、エリシナさん。あの當時、あなたにはアルフレッドが仲間になるという確証がなかった。だから、僕とスピキオさんを助けたんです」
すぐにそう説明を返した。
「そう言われても、意味がわからないわ」
頭を軽く振りながら、エリシナは言う。
「わからないはずがありません、エリシナさん」
彼の臺詞をすぐに否定した。
「あら、どうしてかしら?」
しらばっくれるような言葉が、彼の口かられてくる。
ここまで來て知らないでは通させない。
スピキオのことを思うと、のに熱いものが自然と込み上げてくる。
「もし人數が減れば、自分が標的にされやすくなり、何かを畫策する前に殺されてしまう可能が高まる。エリシナさん、あなたはそう考えたのではありませんか?」
と、確認した。
エリシナはこれに言葉を返そうとはしなかった。
僕の目をじっと見つめてくる。おそらく僕の出方をうかがっているのだろう。
そう思いはしたが、僕は構わず獨白を続けた。・
「だけど、アルフレッドが仲間になることがわかり、かつテロリストの全容が見えたあなたにとって僕とスピキオさんは不要になった。ゆえに、アルフレッドが仲間になった後、たまたま後ろにきたスピキオさんを殺害するようアルフレッドに指示を出した」
と、結論めいた言葉を述べる。
「な……そんなこと……」
エリシナが聲を失った。
彼の顔はみるみるに蒼白へと変わっていく。
核心をついた推理だったのだろう、彼が今日初めて見せた揺だった。
今ここでブラフだ。さらなる噓をついてやる――
めきだった僕は、再び人差し指をエリシナへ突きつけた。
「先程は言っていなかったことなのですが、実は窓から、あなたがサイレンサー38式と拳銃をアルフレッドと換する現場を僕は見ていた」
と、クロミサの目撃報をさも自分のことかのように伝えてやった。
「そんなはずはない」
エリシナが強い口調で、否定しにかかってくる。
その表は先ほどとは打って変わり、僕に挑戦狀を叩きつけるようなじだった。
「いいえ、エリシナさん。これには裏付けがある。その裏付けとは――あなたが先ほどアルフレッドの頭を撃ち抜いたとき、あなたの持つ拳銃から音が鳴ったことだ」
僕は事実を述べた。
「……そう」
落ち著いた佇まいで、エリシナが相槌を打つ。
彼の振る舞いはし不気味だったが、気にせず推察の中核を告げることにした。
「これはあなたが、テロリスト、アルフレッドの拳銃を持っていたという証明に他ならない。サイレンサー38式を持っているはずのあなたが、わざわざテロリストの拳銃を使った。つまり、これが拳銃を換したという証拠であり、かつあなたがテロリストであるという最大の証拠です」
語りを終えた後、これでどうだとばかりに鼻息を荒くする。
だが、その僕の思いとは裏腹にエリシナは落ち著いた様子だった。
思いもよらぬこの彼の態度に、僕は一抹の不安を心に覚えた。
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