《悪魔の証明 R2》第154話 091 アカギ・エフ・セイレイ(1)

「――そうです。クレアスさんを連れ出して口裏を合わせることしか、アルフレッドとエリシナさんには道がなくなってしまったのです」

僕はクレアスにそう言葉を返した。

「口裏を合わせる?」

クレアスが薄い聲で、説明を求めてくる。

「僕が目の前にいてそんな相談をしても、クレアスさんが聞きれるはずがありませんからね。だけど、僕がアルフレッドに殺されていたとしたら話は違います。すでに僕が死んでいるとなれば、クレアスさんも相談に乗る可能がある。フリッツさんにARKだと言われたと証言してくれ、みたいなね。死んだ人間のために意地を張っても仕方がないですから」

憶測だが、ありえる話を述べた。

「俺はそんなこと……」

それを聞いたクレアスは、そう言って表が曇らせる。

「あくまで可能の話です」

苦笑いをしながら、注釈をれた。

「これとさっき言ったクレアスさんたちを発から逃れさせた件、アルフレッドを使い僕たちふたりがいる六號車を襲わせなかった件を合わせて考えれば、すぐにクレアスさんが生存者に選ばれていたことは想像できます」

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続けて、推察を述べる。

「俺が生存者に選ばれていた……」

解せない聲で、クレアスが言葉を返してくる。

発の時間をクレアスさんに教えたのは、無論、弾の被害をけさせないためです。 そして、六號車の襲撃を行わなかった理由は、クレアスさんが銃撃戦に巻き込まれることを憂慮したため。クレアスさんにアルフレッドの正がバレてしまう以前に、クレアスさんが死んでしまったら元も子もありませんからね」

「俺を死なせないために、エリシナは行してきたということなのか?」

「ええ、そうなります。となると、わざわざ戦力にならない僕を六號車ではなく外に出たときにわざわざアルフレッドが殺しにきたのも納得がいきます。外であれば、六號車で寢ているクレアスさんに被害が及ぶことはない。これらを総括すれば――テロ発生直前から今まで、エリシナさんは常にクレアスさんを生存させるよう仕向けていたということになります」

「エリシナが……なぜ、俺だけを……」

首を振りながら、クレアスはそう聲を零した。

頭が混しているのか、その先は言葉が続かないようだ。

一方のエリシナは、瞼をし揺らした。

「アカギ君、あなたはどこまでわかっているの?」

と、尋ねてくる。

「すべてです」確信めいた強い口調で答えた。再び口を開き、言う「すべてわかっているからこそ、僕はあえて斷言します。あなたは僕を殺す必要はない」

「いいえ、私はあなたを殺さなければならない。フリッツのルールは間違っている――生存者はひとりしか許されない」

エリシナは、そう斷言した。

「やめるんだ、エリシナ。きみはそんな人間じゃない。セネタルを救おうとしていただろう。俺は覚えている。きみは確かに僕とセネタルに向けて時間までに戻って來いと言った。そんなきみがアカギ君を撃てるはずがない」

手を前にかざしながら、クレアスが早口で捲し立てる。

「そんなこと……セネタルは……」

クレアスの臺詞がに響いたのか、エリシナは言葉を詰まらせた。

彼らのやりとりに構わずスピキオの手帳をポケットから取り出した。

すぐに口を開く。

「それでは、どちらのルールが合っているのか。第三者の報を持ってジャッジしてみましょう」

と、宣言した。

「そんなことができるのか?」

クレアスが驚いたように聲を荒げて確認してくる。

「ええ、できます。この手帳には、ARKのルールが記載されていますから」そう答えてから、容の説明を始めた「ここには、乗客は、必ず一名以上十名以下――つまり、人數は殘す必要があると書かれており、フリッツさんのルールとこの手帳のルールはほぼ合致していると思われます」

「手帳とフリッツさんが言ったことが合致している……エリシナ、こんな偶然はありえない。アカギ君が正しいんじゃないのか?」

クレアスが、エリシナにそう聲をかけた。

これに対し、彼は無言のままだった。

だが、髪をしかきあげ、僕の臺詞の先を待っているかのような素振りを見せる。

「そうですね、クレアスさん。ゆえに、乗客をひとりのみしか殘さないというルールの信頼は薄い。ということは、エリシナさんは間違ったルールに縛られていていたということになります。それは、地方により新たなルールが設けられるトランプの大富豪と同じ――そう、ARKのローカル・ルールです」

そう述べてから、手帳を開き中をクレアスとエリシナに提示した。

「私が間違っていると?」

それに目をやったエリシナが、聲を荒げながら確認してくる。

「ええ、そうです。あなたは間違ったルールの元いていたのです」

僕はそう斷言した。

次の瞬間、エリシナの視線が絡み合う。

隣から、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえてきた。意外なことに、その音を発生させたのはクロミサだった。

がよくわからない彼も、この狀況が切迫したものであると認識しているようだ。

「違うわ――私が間違っていたのは、あなたに銃口を向けたことよ」

そう言うと、エリシナは僕から拳銃の照準を外した。

「良かった、エリシナさん。わかってくれたんですね」

僕は大きく吐息をついてから、今しがたに抱いた想を吐した。

だが、ほっとしたのも束の間だった。

エリシナがおもむろに自分のこめかみへと銃口を當てた。

それを見たクレアスは、

「エリシナ、何をしてる。やめろ」

と、絶するかのように呼びかけた。

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