《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第83話 ハシリューの星③
※無事第1部完結までPC力しました。書き溜めが80話(11/21時點)になってしまったので、投稿頻度上げます。
「初島さん、來宮さん」
驚く僕に、初島さんが囁く。
「‥‥部活とかでもそうなんですよ。‥‥最初にガツンとやっておかないと、図に乗るから。こういう男子は」
「そっスね」
この艦では僕がOKしてるからだけど、本當は男子、しかも高校生にこんな話は聞かせられない。ライドヒさんには聞こえないように言ってるよ。
「いや、ごめん。面目ないよ」
「いやいや暖斗くん。連攜とか『雲(ネペレー)』とか全部封印してんじゃね~スか。MKバフも。これじゃ暖斗くんのストロングポイント全部封印っス」
「ライドヒさん。私でいい? 3番筐にるから、指名が來たらけて。
Tシャツ姿の初島さんが筐にる。まだ濡れ髪をタオルでまとめたままだ。
「暖斗であれだからなあ。でどんくらいできんだ?」
そう言っていたライドヒさんは。
初島さんのUO-004、「ケラスフィア」に、――――瞬殺された。
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初島さんの戦法は徹底していた。まず、とにかく突撃で間合いを詰める。004番機の主武が刺突剣(エストック)だから、というのもあるけど。
ライドヒ機が砲撃してきても、曲線が特徴の盾でパリィする。トライアングル―オーボイド(たまご)型、逆三角形の盾(アスピダ)の、本來の使い方だ。
そして、反神経は互角。か、初島さんの方が早い。フェンシングスタイルでの集中力と、縦技能の差か。
とにかく、どんどん間合いを詰めて、エストックの程にったら加撃する。途中、ライドヒさんもエストック長中の無防備に気づいて、そこを狙う隙を見つけたけど、初島さんはそれも読んで避けてた。
確かに、エストック長中に反撃が來るなら読んで避けやすいや。
「や~。參った參った。ガチでくんだもんな~」
ちょっと悔しそうだったけど。
「でもライドヒさん、始めたばっかでこの練度はヤバイッス」
「だよね櫻。は~。お風呂上がりでまた汗かいちゃった」
「そうか? 帝都じゃあ負けなしだったんだけどな。やるな。お前(まー)ら。そのカッコもなんかっぽいしな」
ライドヒさんと彼達は、育會的なノリで意気投合していた。――ちょっと最後の発言が気になるけど。
「でもライドヒさん」
初島さんが僕の両肩を持って後ろに回った。
「あんまり詳しく言えないけど。マジの実戦で、ガチ軍隊ボコしてんのこの人だから。ウチのエースなめないでよ?」
彼の前で、ふたりに背中を叩かれた。
*****
翌朝、食堂に行こうとしたら、武道場から人の気配が。
「まだまだ、まだ高い。ライドヒさん」
「‥‥‥‥ってぇけっこうコレ、足にくんのな」
「もっと低くっス。そう、もっともっと。そう。そこで固定っス」
「‥‥やってんよ。けど既に足がガクブルなんだけど? おう! これきっちいな」
朝から、ライドヒさんがあのコンビと朝練やってた。フェンシングの。
なんか半になって腰を落して右手にサーベル。「構え」の姿勢で、講義をけてる。
結局、僕よりもあのスポ中コンビの方が相がいいみたいだ。兄貴を取られたみたいな気分だけど、まあ、いっか。
と、思ったら。
「まだDMT見てね~よ。案しろ。暖斗」
朝食の後、可能な範囲でだけど、DMTデッキの案と解説をさせられた。
*****
その後、ラポルトは、ベース・カタフニアに著陸していた。
この艦の最初の指令。目的地にして軍の資集積地。
さんざん「行く」って言って中々著かなかったこの基地だけど、Botの掃空も済んでいて、なおかつツヌ國もコンギラト條約機構軍も撤退してる今がチャンスなんだって。
資材の搬の手伝いをしようと思ったけど、「パイロットは休憩」アンド「ライドヒさんの相手」を申し付かった。
基地の大きさは地方空港くらいかなあ。あ、あくまで見える範囲だけだけど。走路とたぶん兵工廠みたいなかまぼこ型の屋がいくつも見える。
その基地周辺、ちょっと離れた所で、基地を見下ろす小山を、見しながらぶらぶら歩く。遠目に走路とかが見えて、重力子エンジンの駆音とか作業車の出す金屬音が遠く響いてきた。
「ま~聞いてたけどよ? その『ふれあい験乗艦』が、ここまで延びちまったってコトか。もう8月終わるけど、夏休みの宿題ど~すんだ? 帰ってやんの?」
「うん。一部は最初から免除なんだけど、だいたい終わってるよ。あと、2學期は9月から始めるの無理みたいだよね? だから大丈夫だよ」
「あ~~。それな。本土はけっこう大変なコトになってんぜ。サジタまた來てんし、それで俺の帰りの便も消滅したしな。まあ、戦爭とあれとどっちがイヤか、って二択だな」
「この基地に、ラポルトの今後の指示が來てたみたいだよ。朝メールが來たって附屬中の子が司令に挨拶に行ってる。もうどんな指示が來ても驚かないよ」
「‥‥‥‥ところでさ」
と、ここで、ライドヒさんに肩を叩かれた。
「‥‥わざわざこんな基地のはずれまで來たのは、あのハナシをするタメなんだけよ?」
ん? あのハナシ?
「お前(ま)? 彼いんの? あの15人の中でさ、手ぇ出したらダメな子いる?」
不意をつかれた。
「いやマジビックリしたわ。みなと市調べたら、首都圏には近いけどけっこうイナカじゃん? でもあの戦艦の子っちは顔面偏差高け~よな、異様に! 帝都知ってる? 帝都は人が多いってっけど、総數だから。分母デカいから。あんなに一か所に集まってんのはナカナカ無え。ど~~よ?」
また彼獨特の、質問のマシンガン攻撃だ。
「まあを言えばまだ中坊ってのがなあ。あとあの浜って子はパスでいいや。アレは俺の好みじゃ無え。でも他はイケてるよな。やべ~。やべ~船に乗っちまった」
一華ちゃんはいい子だよ、と反論したくなったが、會話が高速で追いつかない。
「ほら俺、『ハシリューの星』じゃん? だからあの村で子孫作んないとなんだけど、逆に外のヨメも何人かもらっていい事になってんだぜ? 4人以外で。羨ましいか? でもな~。あ~。あの中だったら、ひとりくらい選んでもいいアベレージだよな~」
明らかに僕の観とは違う、彼の思想。耳村の切り札だという立場もあるけど、他の絋國男子とも、なにかが違う、とじた。
「でよ!!」
そう言いながら、肩を組んできた。
「俺もさあ、暖斗のアレにまでちょっかい出す気はね~よ。昔ソレでめたしな。暖斗が言っといてくれれば、その子には手ぇ出さね~から。な? 俺筋通すから」
まるで、他の子全部には手を出す言いぶりだ。
「あ、第四席(ラスト)とかまではカンベンな。本命だけ教えてくれや。あん中にいればだけど?」
そう。あるの子がいて、A君はド本命の「第一席(ファースト)」に、そしてB君は、あのくらいのオンナだったらせいぜい俺の「第四席(ラスト)」だな。と言った。
そのふたりは壯絶な毆り合いのケンカとなった。僕の先輩の知り合いの話だけど。
紘國男子あるあるだ。
まあ、本気で好きな本命の子を、「第四席」なんて言われたら、そりゃ頭にくるよね。だから、男子同士でも、その辺の會話は地雷になってる。
今のライドヒさんの発言も、その辺の事のコトだ。そこまで優先順位の低い子はリストに上げるなよ? キープしすぎはダメだぜ? と。
「早く言えよ~。今さらだろ?」
彼に、急かされた。僕は唾を飲み込んだ。
※「よくある男子の會話だな」と思った そこのアナタ!!
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