本日から連載します。

投稿ペースを安定させられるよう頑張ります。

近衛渡このえわたるは転移者だ。

高校で青春を謳歌……とは言えないがそこそこ楽しく過ごしていた渡は、學校の帰り道に車に轢かれそうになったを見つけ、飛び出してしまった。

次に気が付けば見たこともない真っ白な空間で、そこの椅子に座っていた。そこには神と名乗る銀髪のが居て、渡にこう言った。

「近衛渡、ここは死後の世界だと思ってください。貴方はを庇って死にました。しかし、貴方の死は私たちにとっても想定外です。よって、例外的に貴方を現実世界へと戻します」

渡は意味がわからなかった。だが、それでも混する頭で考える。自分は死んだが、死なれると困るから現実世界に戻れ。

そこまで整理できた渡は、神へとこう言う。

「あの……絶対に戻らないといけませんか？」

「戻りたくないのですか？　貴方の家族や友人がいるあの世界に」

渡のこの発言は神にとって予想外だったようで、そう聞いてくる。

渡の家族構は父母、そして渡の3人だが父は出張が多くあまり話す機會もなく、母とも最近はほとんど喋っていない。両親に謝はしているが、離れて寂しいとは思わない。

友人は人のにることが苦手な渡には、特に仲の良いと言える相手は居らず、こちらも問題はない。

「はい、あんまり戻りたいとは思えません」

「そう言われましても、渡さんを天國や地獄に送るようなことはできませんし……」

どうやら渡のような想定外の死は扱いに困るらしく、神は首を捻っている。

そこへ、渡は日頃から思っていたことを口にする。

「あの、神様。お願いがあるんですけど」

「お願い、ですか？　私にできる範囲であれば答えましょう。貴方は勇気ある行をしたのですから」

「現実世界じゃなくて、異世界に俺を送ってほしいんです。剣とか魔法が使えるような」

「異世界、ですか。……わかりました。私の管轄にも魔法の存在する世界はあります。そこへ貴方を送りましょう」

「え、そんなに簡単に決めて貰ってもいいんですか？　あ、いや俺としてはありがたいんですけど」

ダメ元で言った発言が簡単に通り、思わず渡は確認してしまう。

調子の良い時こそ、何かしらの落としがあるものだ。渡は疑り深い格で、決して調子には乗らないように心掛けてきた。

「先程も言いましたが、貴方の行は勇気がなければできない行、褒められるべきことなのです。ご褒があってもいいじゃないですか」

そう言って微笑む神に、渡は後を見た気がした。

「ありがとうございます！　神様！」

「喜んでいただけたなら良かったです。話を変えても大丈夫ですか？　貴方が今から行く世界の話です」

「大丈夫です。お願いします」

「貴方の今から行く世界は、魔法の存在する異世界です。その世界では魔王が存在していて、人間と常に爭っています。命の危険もありますから、気をつけてくださいね」

神からされた説明は、ありきたりなファンタジー世界の設定のように聞こえた。だが、それが今から行く世界の現実なのだから、しっかり聞いておかなければならない。

「ーーー本來は別の人間の方をその世界へ送り、魔王を討伐してもらう予定だったのですが、渡さんがその役目を擔ってくれるなら問題ありません」

「……ん？」

長々と続いていた神の説明の中に、何やら予想していなかった言葉が飛び込んできた。魔王の討伐など聞いていない渡としては、完全に不意をつかれた形となった。

「神様、魔王討伐なんて初めて聞きましたよ？」

「安心してください、なにも渡さんを手ぶらで異世界へは送りません」

不安や心配から話の途中に神へと話しかけた渡だが、その神の言葉を聞いてし安心する。

この場合に渡が貰うのは、チート能力や神だと相場が決まっている。

……普通ならば。

「渡さんには、こちらの剣と盾をお渡しします。決して壊れませんので、安心して使ってください」

神は厳しかった。

まるで子を崖の下に突き落とすライオンの親だ。現代っ子が剣と盾だけで生きていけると思っているのか。

「神様？　神様？　ちょっとそれはキツくないですか？」

「大丈夫です。私は渡さんを信じています」

何も大丈夫じゃない。

渡が神をなんとか説得しようと言葉を紡ぐ前に、神が行する。渡の足元に何やら複雑な模様の描かれた魔法陣が出現すると、渡のがり始める。

「1週間ほどであれば問題なく過ごせるお金もれておきますので、頑張ってください。渡さんに加護がありますように」

「ちょっ、話は終わってな」

そこで渡の視界は真っ白になる。

最後の神様の祈るような仕草が可かったな、などと呑気なことを思いながら、渡は意識を手放した。