《最強になって異世界を楽しむ!》小屋の魔1

「エレナは魔に會ったことある?」

「1度だけあるな。まだ私が魔王の部下だった頃に戦った。その時は私の他にも魔族がいたが、殘ったのは私を含めて5人だったな。相手は1人だ」

「魔族の軍勢を1人で追い込むって、魔はそんなに強かったの?」

「魔の使う魔法は人間や魔族と違ってな。魔法陣というものを使い、魔法の威力や範囲を上げている」

「魔法陣には注意、か」

との戦闘経験を持つエレナに注意點や特徴を教えてもらいながら、森へ向かう。

途中走ったこともあり、森はすぐに見えてきた。

「ワタル、この森に強い魔はいるか?」

「俺見たことないかな。し奧まで進んだこともあったけど、簡単に倒せる魔ばかりだったよ」

「そうか。ならそこまで警戒する必要もないな」

エレナはこの森にったことはないのか、ワタルにそう聞いて森の奧へとっていき、ワタルも橫に並んで一緒に歩いていく。

途中で魔が現れることもあったが、ワタルが構えるよりも早くエレナが倒していった。

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「かなり奧まで來たが……あれか」

「みたいだね」

特に危険な出來事もなく、歩き始めて1時間が過ぎたところでエレナが小屋を見つける。

ワタルもし遅れて見つけ、小屋の方へ歩いていく。

しかしそこは魔が住んでいると言われている小屋だ。簡単にはることはできないらしい。

ワタルとエレナが小屋に近付くと、小屋の周りにいくつもの小さな魔法陣が浮かび上がる。

そこから土で作られたと思われる人形が現れる。

「ゴーレムか」

「數が多いけど、強いの?」

「ゴーレムの強さは者の魔力、材質に影響される。しかし、私たちの敵ではない」

そこまで言ったところで、およそ20のゴーレムたちが一斉に襲いかかってくる。

「ワタル、下がっていてくれ。新しい粛清剣の使い心地を試したい」

「いいけど危なくなったらすぐ止めるからね」

「ああ、わかっている」

ワタルは言われたとおりに一歩下がり、エレナを見守る。

エレナは既に2本の粛清剣を抜剣して、迫り來るゴーレムを待ち構える。

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「雑兵に遅れをとる私ではない。すぐに終わらせてやろう」

1のゴーレムが目前まで迫った時、エレナはいた。

右手の剣を橫薙ぎに振るって目の前のゴーレムの首を斬り飛ばす。

エレナの速度についてこれるわけがなおゴーレムはそのまま倒れるが、その頃には既にエレナは次の行に移っている。

地を蹴り1番近いゴーレムへと突っ込めば、橫を過ぎ様に首を斬る。

ワタルでも殘像を追うのだけで一杯なのだ。ゴーレムたちがエレナを視認し、尚且つ反応することなどできるわけもなかった。

雙剣となり軽になった服裝から生み出される圧倒的な手數により、ゴーレムたちは躙され、ワタルの心配は杞憂に終わったのだった。

「もういないようだな」

「やっぱりエレナのきは目で追えないや」

「まだ制はできていないが、しはマシになった。このままレベルを上げれば、完全に制できるようになるだろう」

戦闘を終えて小屋に近づき、一応ノックをする。

れ」

すぐに中から返事が聞こえ、扉を開ける。

「人間と魔族とは、変わった組み合わせじゃな。わしに何か用か?」

そこに居たのは、に反してキラキラと輝いているように見える橙のショートな髪と同じの瞳をした、だった。

長は145cmほどで、フリルの著いた真っ白な服を著ている。

「ここに魔がいるって聞いたんだけど、君は何か知らないかな?」

目の前のへ、膝を曲げて視線を合わせてそう喋りかける。

「わしが魔じゃ」

「え?」

「だから、わしがこの小屋に住む魔じゃ。なにか文句でもあるか?」

「いや、だって……」

したワタルはエレナへ視線を送るが、エレナも驚いた様子で聲が出ていなかった。

「わしは長が止まっておってな。これでもお主らより年上じゃぞ?」

「あ、そうなんだね」

見た目が明らかにに敬語を使うことは抵抗があるのか、ワタルの話し方は変わらなかった。

「それで、どうしてここまで來たんじゃ?」

「ギルドの依頼でな。この小屋に魔がいるのか確かめることと、可能ならば説得をしろとのことだ」

「説得? わしにか?」

「そうだ。人間と魔の仲が険悪なのは知っているだろう。その魔とよりを戻すために、小屋の魔、つまりお前の方から魔に人間に悪意がないことを伝えてしいらしい」

「ふむ、なるほどな」

ワタルに代わり、エレナが魔との話を進める。

はエレナからの話を聞いて考える仕草を見せると、2人を互に見て何やら思い付いたように2人を見る。

「お主ら、小屋の周りのゴーレムは倒したんじゃろう?」

「倒したが、それがどうした」

「あのゴーレムはわしの魔法で作ったものでな。冒険者でいうとLv.50ほどの強さにしていた」

「あのゴーレムそんなに強かったんだ」

「そのゴーレムを全て倒したお主らに、頼み事があってな。それを聞いてくれればその依頼とやらもわしに出來る範囲でやってみよう」

「その頼みというのは?」

「この小屋のさらに奧にし開けた場所があってな。そこに巨大なゴーレムがおるんじゃが、暴走して近付いた生きを見境なく攻撃しておる。魔法で攻撃しようにも、魔法を使う者を優先的に攻撃するようで、わし1人ではどうにもならん」

は2人が頼み事を聞いてくれると確信したのか、容を詳しく話し始める。

「そこでじゃ、お主ら2人にそのゴーレムを引き付けてもらいたい」

「ちょっと待って。この森にゴーレムがいるなんて報は初めて聞いたけど」

「そりゃそうじゃろう。そのゴーレムはわしが生み出したんじゃからな」

「は?」

「この森でゴーレムの研究をしていたんじゃが、力作を作っている途中でし目を離したら、いつの間にか暴走しておった。わしの命令も聞かない狀態じゃ」

「それって君のミスだよね?」

「だから頼んでおるんじゃろう」

はなにか問題でもあるのか、という表でこちらに首を傾げてくる。

「暴走したのはお前の未さ、集中力の無さ、適當さ故だろう。自己責任だ」

「それはわかってるんじゃが、近くに知り合いもいなくてのう。1人じゃどうにもできんのじゃ」

「それはちょっと勝手過ぎるんじゃ……」

「やはり子供だな。責任というものを理解していない」

「う……」

ワタルとエレナに立て続けに正論を叩きつけられた魔は、一歩引くと顔をうつむける。

「だいたい、こんな場所でゴーレムの錬をするのが間違っている。他にも場所はあっただろう。そもそも、」

「し、仕方ないじゃん! 私は魔でも異端だから頼れる人もいないし、他の魔からは邪魔者扱いされるし! 人間も信用できないから何も信じられないの!」

エレナの説教の途中で、突然魔は子供のように泣きながらそんなことを言い始めた。

その姿は年相応で、神の不安定な小學生のようだった。

「うっ、ひっく」

「わ、悪かった。私も言い過ぎた」

「うん、わかってくれたならいいの」

それから1分ほど、魔が落ち著くのを待って改めて話をする。

「それじゃあ、わしに協力してくれるのかのう?」

「待て、聞き捨てならない言葉があった。魔の中でも異端とはどういう意味だ?」

どうやらこの喋り方が素らしく、のような口調からまたも老人のような口調に戻っていた。

「魔は二種類あって、1つは人間と魔族のハーフ。お主らが一般的に魔と呼んでいる方じゃな。もう1つは忌の技や魔法にれて、魔族のり魔へと変わり果てた元人間じゃ。後者は忌の魔と呼ばれていて、わしもそのひ1人じゃ」

「お前は他の魔から邪魔者扱いされる、とも言っていたな。それはどういう意味だ?」

はそれを聞くと言葉に詰まるが、ゆっくりと話し始めた。

「魔には里があって、そこではさっき話した人間と魔族のハーフの魔たちが暮らしておる。魔は仲間意識が強くてのう。忌を犯したわしを仲間とは認めなかったんじゃ。それで、わしは郷を追い出されるような形で里を出たんじゃ」

「それはつまり、他の魔へ伝言は頼めないと?」

「まあ……そういうことじゃ」

「話にならないな。ワタル、帰るぞ」

無慈悲にも帰ろうとするエレナを、袖を摑んで必死に魔が止める。

「ま、待つのじゃ! 他の魔への伝言は無理でも、お主らに協力はできる! この頼みが終わったらお主らの目的が達するまで協力する。だから行かないで!」

後半口調がブレながらも、魔はそう懇願する。

は優しいらしいエレナは、それを聞いて流石に放っておくのはよくないと思い、立ち止まる。

「ワタル、お前はそれでいいか?」

「俺はいいですよ。仲間が増えるなら、魔王討伐も現実的になりますし」

「と、いうことだ。ワタルが決めたことだからな。私もお前の頼み事とやらを聞いてやろう」

「そ、そうか! 自己紹介が遅れたな。わしの名前はマリーじゃ。わしの頼みをけてくれたこと、謝するぞ」

マリーはエレナの言葉を聞いて安心したように満面の笑みを浮かべると、名前を名乗り2人を問題の場所へと案するのだった。

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