《最強になって異世界を楽しむ!》小屋の魔2
「ここじゃ」
マリーに案され森を歩いて數十分、言っていた通りの開けた場所に出る。
その中央に5mほどの大きさのゴーレムが佇んでおり、見ている限りではく様子はない。
「あれがわしの作ったゴーレムじゃ」
「俺とエレナはあれを引き付ければいいんだよね?」
「そうじゃ。わしが魔法を唱え始めるとわしを優先的に狙うじゃろうから、足止めして時間を稼いでほしい」
「回りくどいな。私たちで破壊してはダメなのか?」
「できるなら構わんが、見たところ2人とも剣士じゃろう。あのゴーレムは半端な理攻撃は効かんぞ」
マリーは誇らしげにドヤ顔で薄いを張りそう言った。
「すごいことかもしれんが、今回は完全に邪魔な効果だな」
「とりあえず全力でやってみる?」
「そうだな。壊せそうなら壊すか」
「頼もしいのじゃが、わしを守ることを忘れんでくれよ? 魔法陣を展開している間はけんからな」
他にも攻撃方法など、自慢げに話すマリーからゴーレムの報を聞き準備を終える。
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「私がかきす。ワタルはマリーとゴーレムの間にってくれ」
「うん、油斷しないようにね」
「わかっている。土のゴーレムとは違うからな」
それぞれグラムと粛清剣を抜剣し、ゴーレムを見據える。
マリーが詠唱を始めたらき始めるように決めていた。
「さて、始めるとするかのう」
マリーがの丈ほどもある杖を両手で前で持ち、詠唱を始める。
その足元に魔法陣が浮かび上がり、聞いたことのない言葉を紡いでいく。
すると、今までく素振りを見せていなかったゴーレムがゆっくりと首をかし、3人の方を向いた。
「魔の力作のゴーレムだ。相手に不足はない」
「マリーに攻撃はさせないよ」
エレナがゴーレムへと目にも留まらぬ速度で突っ込み、その右肩の関節目掛けて粛清剣を振る。
普通の敵ならこれで終わりだろうが、それほど甘い相手ではない。
エレナが振るった雙剣は裝甲の薄い関節を狙ったにも関わらず、ガキンッと鈍い音を響かせて弾かれる。
弾かれたことで姿勢を崩したエレナへ、ゴーレムの拳が放たれ避けることのできなかったエレナは後ろへ飛ばされる
「エレナ!」
「大丈夫だ、ダメージはない。それよりそっちに行ったぞ」
派手に飛ばされたように見えたが、粛清剣で防ぎ毆られた瞬間に自分から後ろに飛んだようで、すぐに立ち上がる。
ワタルが視線を戻せば、ゴーレムがこちらに歩いてきて右腕を振り上げていた。
「このっ!」
振り下ろされた腕を、前に出たワタルが盾で防ぐ。
衝撃で飛ばされるようなことはなかったが、ゴーレムは防がれたことも気にせずに左腕をアッパーのような低い軌道で放ってくる。
「グラム! 纏え!」
左手の盾は塞がれ、殘るは攻撃に使う右手のグラムのみ。
ワタルはかに練習していた魔法を使う。
グラムの先端に水球を作り出し、その水をグラムの刀に纏わせる。
「理は無理でもこれなら」
魔法と同じ効果を持った剣を、迫り來るゴーレムの左腕目掛けて振る。
ワタルのステータスであれば押し負けることもなかったが、ゴーレムは魔法に制がないという訳でもない。
グラムはゴーレムの拳を半ば斬ったところで止まり、どちらもきが止まる。
「ワタル、そのまま抑えていろ」
そこへ最初よりも速度を付けて跳躍したエレナが、ゴーレムの顔目掛けて粛清剣の柄で毆りつける。
ダメージはなくとも衝撃はあるようで、ゴーレムの巨がぐらりと傾き、後ろへ數歩たたらを踏む。
「いけそうだね」
「いや、様子がおかしい」
後ろへ下がったことで距離の開いたゴーレムは、右腕を上げて3人へ向ける。
その開いた掌の先に魔法陣が展開され、人間の大きさもある炎の球が放たれる。
「なっ!?」
「聞いてないぞ!」
警戒していたワタルとエレナだったが、聞いていなかった攻撃に完全に不意を突かれ、それぞれ左右に避けるのが一杯であった。
2人は制を崩し、遮るもののなくなったマリーへ再び炎の球が放たれた。
「グラム!」
今からいても間に合わないと判斷したワタルは、先程と同じ要領でグラムに水を纏わせる。
しかし纏わせる水の量は桁違いで、グラムは2mはあろうかという大剣となり、マリーへと迫る炎の球へと投擲する。
炎の球が大きいこともあってか、狙いは狂わず炎の球と水を纏ったグラムがぶつかり、炎は蒸発して大量の煙を生み出す。
「マリー、無事!?」
マリーの無事を確認するため、ワタルは慌てて大聲で呼びかける。
「そう焦るでない。お主らのおかげで準備は出來た。あとはすぐに終わるじゃろう」
晴れてきた煙の奧から姿を見せたのは、背後左右に魔法陣を展開させ杖をゴーレムへと向けているマリーだった。
「破壊するのはちと惜しいが、これも仕方ない犠牲じゃ。ぜよ」
ゴーレムが再三炎の球を放とうとするが、マリーの方が早い。
マリーが短くそう言うと、ゴーレムの周囲がチカッとり、大発が起こる。
ワタルとエレナは飛ばされないように地面に剣を刺し、風を耐え凌ぐ。
発が収まり、あとに殘ったのは巨大なクレーターと小さな破片を殘し、消し飛んだゴーレムだったものだけだった。
「ふむ、そこそこじゃな」
「俺たちまで巻き添えくらうとこだったんだけど」
「流石にそんなミスはせん。わしだって計算ぐらいはしておる」
「そんなことはどうでもいい。それよりも、あの魔法はなんだ。聞いていなかったぞ」
「それなんじゃが、わしにもわからんのじゃ。あのゴーレムにそんな機能を追加した覚えはない。わしだって驚いておる」
「なんだと?」
魔法についてエレナが詰め寄るが、マリーは本當に知らないらしく首を傾げる。
その様子は噓をついているようには見えず、3人は考え込む。
「あのさ、マリーはゴーレムを暴走させたことってある?」
「いや、あれが初めてじゃな。ゴーレムは基本的に作り手に忠実で、暴走など聞いたこともないのじゃが……」
「もしかして、俺たちの知らない第三者がマリーが目を離している隙に、ゴーレムをいじって暴走させたのかも。それなら、魔法を使えるようにしたりもできるんじゃないかな」
「それは不可能だ。ゴーレムなどの錬する魔法はゴーレムを壊すことはできても、乗っ取ることはできない」
ワタルは思ったことを口にしてみるが、すぐにエレナに否定される。
「それが常識じゃな。じゃが、その常識を覆すことが出來るのが忌の技じゃ。わしの他に忌の魔は2人いるが、そのうち1人は他人のゴーレムや召喚した魔を乗っ取ることができた」
マリーが言っていた3人の忌の魔。
その殘りの2人のうち片方が、今回の騒を起こしたのだとは言う。
「犯人の目星はついた。お主らについて行けば、その魔ともいつか會うかもしれんのう」
「それじゃあ」
「うむ。最初の約束通り、お主らの仲間として協力させてほしい。わしも忌の魔じゃ。役に立てるじゃろう」
「よろしくね、マリー」
「もう失敗はしてくれるなよ」
「じゃから、あの暴走はわしのせいじゃない!」
騒がしくも腕立つ魔、マリーを仲間にれて3人は王都へ戻るべく歩き出す。
それから數日後、クレーターのあった場所にはゴーレムの破片などの痕跡が全てなくなっていたが、3人はそれを知ることはなかった。
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