《最強になって異世界を楽しむ!》雷帝1

「おっと、そういえば名乗ってなかったな。俺は雷帝と呼ばれている」

魔剣の前に立ちはだかる雷帝と名乗った大男は、ワタルたち3人を値踏みするように、今度は1人ずつじっくりと見ていく。

「かなりの実力者のようだ。し前に來た人間たちとは違うな」

3人の見た目──特にマリーの──に騙されず、ワタルたちを実力者と言った。

「貴方が魔剣を奪った大男でいいですね?」

「奪った、とは違うな。俺はここで魔剣を守るように言われている」

言われている、ということは誰かに命令されているのだろう。

この場所のどこかで見ているのか、とエレナは素早く周囲を見回す。

「安心しろ。この場所は俺しかいない。それで十分だからな」

「隨分な自信ですね」

「事実だからな。そうだな……ハンデをやろう」

「ハンデ?」

「俺は雷魔法を使うんだが、それは使わないでやる。前の冒険者のように、簡単に追い払っては面白くないしな」

雷帝はワタルたち3人を実力者だと判斷した上で、手のを明かしさらには、ハンデをやると言い出す。

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心外だと言い返そうとするエレナだが、マリーがそれを手で制する。

相手が本気を出さないというのなら、そのまま倒してしまえばいい。

そうすれば、仲間が傷付く可能も減り、依頼も楽にこなせるのだから。

「さて、そろそろ始めようか。楽しい殺し合いだ」

「2人とも、最初から全力でやります」

剣と盾を構えるようにして口元を隠したワタルは、2人にしか聞こえない小さな聲で、そう指示を出す。

2人ともこくりと頷き、それぞれ武を構える。

「いくぞ!」

そう言って一歩を踏み出した雷帝へ、エレナが疾走すて距離を詰める。

新しいスキルの加速により、初速から速度を上げてまるで消えたように見えたエレナは、雷帝の膝元へ粛清剣を振る。

「ぬう!?」

出鼻をくじかれた雷帝は、膝を3分の1近く斬られ、片膝を付いてきが止まる。

「水よ、刃となり、敵を切り裂け」

そこへワタルがこぶし大の水球を10個作り、水の刃に変化させ斬り掛かる。

2言の詠唱で魔法を使っていたワタルだが、3言にして口にする言葉を増やすことで、イメージをより鮮明にしていた。

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「この程度、淺いわ!」

の所々を切り裂かれた雷帝だが、本命の頭部を狙った剣による攻撃は、腕のバングルでしっかりと防いでいた。

水の刃による傷も淺いらしく、早くも立ち上がろうとしていた。

「座っていろ」

そう簡単には立たせないと言わんばかりに、エレナが橫から雷帝の頭を粛清剣の柄で毆りつける。

殺すのが目的の攻撃ではなく、制を崩すための攻撃で速度を付けたエレナの攻撃を、雷帝は避けられずにが大きく傾く。

「調子に乗るな!」

「やらせません」

雷帝もやられてばかりではなく、制を崩しながらもきの止まったエレナへ蹴りを放つ。

狙い通りで直撃するはずだった蹴りは、ワタルの盾によってお互いに弾かれ、防がれる。

ワタルは後ろへ吹き飛ばされるが、綺麗に著地しておりダメージは見えない。

雷帝は不安定な制で蹴りを放ち、それを弾かれたことで両手を地面に著いてしまう。

「大丈夫か?」

「ノクターンの時と比べたら余裕だよ」

エレナはワタルの隣へ駆け寄り、2人揃って雷帝を見やる。

「追撃をしないとは、チャンスを逃したな!」

「俺たちは火力擔當じゃないんですよ」

「そういうことじゃ」

ワタルとエレナが追撃をかけないことに疑問を抱きながらも、ゆっくりと雷帝は立ち上がる。

ワタルは雷帝の言葉を聞き、マリーへと合図を送る。

魔法陣を展開し詠唱を終えたマリーは、杖を雷帝へと向け、魔法を発する。

「押し潰せ」

使う魔法は土魔法。

雷帝が雷魔法を使うと言っているため、相が良い屬の魔法を選んでいる。

雷帝の橫から地面が盛り上がり、5mの壁となると雷帝を挾むようにして押し潰す。

「これで終わればいいんだけど……」

雷帝は確実に押し潰され、3人はそれを見ていた。

それでも、ワタルはこれで終わりとは思えずに、思わず聲をらす。

そして、その予は當たっていた。

「強いな」

土の壁に亀裂がったと思うと、次の瞬間壁が吹き飛び、崩壊する。

その中から雷帝が出てきたが、その見た目は最初とは異なっていた。

中世で使われるようなフルフェイスの鎧にを包み、左手には盾を持ち、右手には青い稲妻が走っていた。

「わしの魔法を壊すか……」

「手を抜いた非禮を詫びさせてもらう。お前たちは挑戦する資格がある」

後ろでマリーがショックをけているが、それも仕方がないだろう。

小さいとはいえ、魔法陣を使った魔法を傷一つなく壊されたのだ。

それがどれほどのことか、わからない3人ではない。

それぞれの顔は張で引き締まり、武を持つ手に力がこもる。

「俺は守り手として、全力で挑戦に応じよう」

ワタルたち3人の様子など気にせず、雷帝は跳躍し右手を振り上げ、ワタルとエレナに向けて落ちてくる。

跳躍して落ちるまでは、十分過ぎるほど時間があるため、2人はバックステップで雷帝の攻撃が屆く範囲から退き、著地の瞬間を狙う。

「なっ……」

「ぐっ……」

先程まで2人がいた場所を、雷帝の拳が襲う。

避けた、そう思っていた2人を突如鋭い痛みが襲う。

ワタルが雷帝を見ると、その拳に纏った稲妻が地面を伝わり、ワタルとエレナまで屆いていた。

痛みこそ戦闘不能になるほどではないが、稲妻により直する。

その隙を雷帝が見逃すはずもなく、ワタルとエレナへそれぞれ拳を放つ。

マリーが炎球を飛ばすが、盾に防がれ攻撃を止める事は出來ない。

「がはっ!?」

2人はいとも簡単に吹き飛ばされ、壁に激得し肺の空気が外へと出される。

こうにも稲妻の効果がまだ抜けず、は言うことを聞かない。

「やあっ!」

「魔導師が接近戦を挑むか」

トドメを刺そうとワタルへ近づく雷帝に、橫からマリーが杖で毆り掛かるが、鎧に弾かれる。

魔法では時間がかかるため、近接戦でしでも時間を稼ぐつもりなのだろう。

一般では、魔導師が接近戦を挑むなど愚の骨頂であり、考えられない行だ。

雷帝もそれはわかっており、鬱陶しいものを払うような仕草で、盾をマリーへぶつけようと振る。

「生憎、わしは普通の魔導師じゃないのでな」

そう、その話はあくまで一般の魔導師のものだ。

マリーは長い年月を生きており、そこらの魔導師とは実戦経験も、魔法の使い方の上手さも桁違いであり、近接戦も心得ている。

自らへと迫る盾を前にしても焦ることなく、杖で軽く地面を叩く。

その部分が瞬く間に盛り上がると、土の柱となり雷帝の腕の下から突き出し、軌道を逸らす。

「見た目と中は比例せんぞ」

小さなを活かして懐へもり込んだマリーは、がら空きの雷帝の腹に杖を向ける。

「吹き荒れろ」

その杖の先端に風魔法を発させる。

直後、雷帝のが一直線に吹き飛び、凄まじい音を當てて壁へと激突した。

ワタルとエレナは、既にを回復させていたが、思わずマリーの戦闘に魅ってしまっていた。

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