《最強になって異世界を楽しむ!》満月の夜に
「エレナは傷だらけのを、無理矢理かしている狀態じゃ。早く止めないと手遅れになる」
「俺とレクシアできを止めるよ」
3人でエレナをどう止めるか的に決める前に、エレナが3人に向けて突っ込む。
本來の速度よりも早く、怪我人としてはありえない速度で突っ込んできたエレナを、ワタルとマリーは視認できなかった。
「やああっ!」
ガキィン!
先程と同じ金屬同士のぶつかる甲高い音が響き、レクシアがエレナを止める。
レクシアにはエレナが見えているのか、鍔迫り合いをしてどちらも引かない。
「水よ、包み込め」
きの止まっているエレナへ、ワタルが水魔法によってエレナの四肢へ水球を飛ばす。
水球は見事にエレナを四肢を捉え、ワタルが潰れない程度に水圧を上げていく。
傷を負わせることになるが、骨を折ればけないだろうと、そう思って水圧を上げていき、ボキッとエレナの骨が折れる音がした。
だが、ワタルの考えは甘かった。
エレナは四肢の骨が折れても、そんなこと意に介した様子もなく、再びワタルに向けて突っ込もうと前傾姿勢を取る。
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「電撃よ、走れ」
前傾姿勢となり一瞬止まったエレナへ、レクシアが電撃を地面を伝わらせ放つ。
エレナをそれを橫にき簡単に避けると、ジグザグと左右にきながらワタルへ向かっていく。
「くっ、おおお!」
ワタルはかろうじて盾でエレナを止めるが、普段のエレナとは段違いの力に後ろへ數歩下げられる。
「ワタル、しエレナを止めておくんじゃ。わしとレクシアで同時に電撃を放つ」
「わかった!」
マリーは魔法陣を展開し、レクシアも電撃を右腕に纏わせる。
ワタルはエレナを逃がさないよう、その両腕を摑むが、ワタルが逃がすまいと力を込めても、エレナの力の方が上なのか、振りほどかれる。
エレナはマリーの魔法陣の魔力を知したのか、ワタルとレクシアを無視し、一直線にマリーの方へ向かう。
両手の粛清剣を前に出し、すぐに突き刺せる狀態だ。
(やばい、間に合えっ!)
ワタルはマリーを守るため、全力で地を蹴りマリーとエレナの間にろうとする。
距離的にはワタルが近いが、敏捷の差は大きい。
マリーはエレナの行に反応できず、すぐに鮮が散った。
「かはっ」
エレナの両手の粛清剣は、ワタルの腹を貫いていた。
をしてマリーを庇ったワタルだが、その傷はどう見ても致命傷で、口からべちゃりと赤黒いを吐き出す。
それでもワタルは意識を手放さず、目の前のエレナを抱きしめ、言葉を伝える。
「エレナ、ごめんね。苦しかったのに、気付いてあげられなくてさ。でも、もう大丈夫だから」
息も絶え絶えになりながらも、最後には笑顔でエレナの目を見て、そう言った。
「「電撃よ、走れ」」
エレナにそれだけ言ってワタルが気を失った瞬間に、マリーとレクシアが同時に電撃を放つ。
ワタルを巻き込まないように慎重に放たれた電撃を、エレナはまったくけずに直撃する。
それでエレナも気絶したのか、ワタルと一緒にドサリと倒れ込む。
マリーとレクシアはそれを見るなり、すぐに走って駆け寄り、遠くからリナも走ってくる。
「2人は助かるよね?」
「エレナは大丈夫じゃが、ワタルの出量が多すぎる。急いで王都に戻るべきじゃ」
エレナは重癥が多いが、命に別狀はないだろう。
だが、ワタルの傷はが止まらず、今この瞬間もが流れ続けている。
「マリー、ワタルさんとエレナさんは!?」
「ワタルが放っておくと死ぬ。リナ、お主は回復魔法は使えるか?」
「使えるけど、今は魔力ないから難しいわね」
「では、わしが移中にできるだけ傷を癒そう。レクシア、移は頼んだのじゃ」
「うん。急ぐからね」
レクシアは瞳のを茶に変えると、行きとは違い5人全員がれるような、広い範囲を隆起させ移させる。
その速度は行きよりもずっと速く、この調子なら王都までそう時間はかからないだろう。
「絶対に死なせないから」
口調が素に戻るほど必死になり、マリーはワタルの傷を癒すために回復魔法を使い続けた。
***
ワタルは目が覚めると、真っ白い部屋にいた。
「……デジャヴ」
「また會いましたね、ワタルさん」
ワタルがその部屋を見てそう呟くと、背後から聲が掛かる。
聞き覚えのある聲に振り向くと、そこにはワタルの予想通りの人が椅子に座っていた。
「お久しぶりです。神様」
「そういえば名前言ってませんでしたね。私は神ハラル。ワタルさん、貴方は今死にかけています」
會うのは2度目の神、ハラルはワタルにそう告げる。
「俺は確か……あー、エレナに刺されたんでしたね」
ワタルはハラルの言葉を聞き、ゆっくりと自分がここに來る前のことを思い出していく。
仲間に刺されて死ぬなど、笑い話にもならない。
「死んだんじゃなくて、死にかけでしたっけ?」
「はい、その通りです。本當なら普通に死んでいたと思うんですが、マリーさんがワタルさんに回復魔法をかけて、延命をしています。リナさんも頑張っていますし、助かるかもしれませんよ」
「みんな……」
ワタルはもし戻れたら、仲間全員に心からお禮を言おうと、そう決める。
レクシアの名前は出なかったが、レクシアだって協力してくれているはすだ、そう考えて。
「あれ、でも何でここに俺を呼んだんですか?」
この部屋には基本的に、死んだ人間しか來ないはずだ。
ワタルは死んでいるわけではないので、この部屋に來るのはおかしい。
「ワタルさんに、し助言をしようかと思いまして」
「助言?」
「ワタルさんは異世界で頑張っているみたいですからね。そのご褒のようなものです」
神の助言というのは、かなり助けになるものが多いだろう。
が、ワタルはハラルにSっ気があると知っている。
そのため、し疑うような表になってしまう。
「なんですかその表は。もう教えませんよ」
「あ、ごめんなさい。教えてほしいです」
「そうですか、そうですか。ではお教えしましょう」
ハラルは満足そうに頷き、ワタルへ助言を言う。
「ワタルさん、今王都の近くに2つの大きな力があります。そのうち1つは、とても巨大で恐らく今のワタルさんたちではかなわないでしょう」
「巨大な力……」
そう聞いてワタルが真っ先に思い浮かべたのは、ノクターンやアラベスクと同じ魔王軍幹部たちだ。
今までは勝てたが、もしかするとあの2人は幹部の中でも弱い可能もある。
ハラルの助言には続きがあるようで、話は続く。
「ワタルさん、もしも自分でどうにもならないと思ったら、魔法陣を書いて、本の言葉を言ってください」
「魔法陣と本って、レクシアが封印されてた場所ですか?」
「……レクシア?」
ワタルがレクシアの名前を言うと、途端にハラルの顔が険しいものになる。
その顔は怒っているというより、嫌いな食べを食べろと言われた時のような表、つまり嫌悪だ。
「ワタルさん、今レクシアと言いましたか?」
「いや、聞き間違いじゃないですかね。俺はアレクシアって言いましたけど」
ワタルの本能がレクシアの名前を言ってはいけないと告げ、咄嗟に噓をつく。
レクシアは神殺しの魔剣で、ハラルは神だ。
相が悪いのかもしれない、そう思いワタルはハラルの前ではレクシアの名前を言わないことにした。
「それならいいんです。もう時間もありませんから、そろそろワタルさんには戻ってもらいますね」
「最後に質問なんですけど、あの本の言語ってわかります?」
「あれは天界の言葉ですよ。王都にも文獻があると思うので、多分読めると思います」
なぜハラルが本の容を知っているのか、その時のワタルは深くは考えなかった。
「では、ワタルさん。もうここには來ないことを願っています」
ハラルがそう言って微笑むと同時に、ワタルの意識を遠のいていき、やがて目の前が真っ暗になった。
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