《最強になって異世界を楽しむ!》謁見

ワタルが目を覚ますと、目にったのは見知らぬ天井だった。

自分がなにがあったかは覚えているため、エレナに刺された辺りをると、包帯が巻かれており治療がされていた。

「目が覚めたみたいね」

聲のした方を向くと、カレンが資料を整理していた手を止め、ワタルへと近付く。

「他のみんなは大丈夫ですか?」

「全員無事だから安心しなさい。それより、自分の心配をした方がいいわね。五日間も寢込んでたのよ」

そう言われてワタルが自分の狀態を見ると、腕には點滴が刺され、他にも見慣れない裝置がいくつもあった。

「そんなに酷かったんですか?」

「あとし遅れてたら死んでたわね。仲間に謝しなさい。そろそろ來る頃だから」

カレンが時計をチラリと見てそう言うと、部屋の扉が開く。

「ワタル、心配したよ!」

「ワタルくん、目が覚めてよかった」

中にってきたのはエレナたち3人で、マリーはワタルを見るなり、ワタルに飛びつく。

レクシアもそれに続くように、マリーの上から飛び込んでくる。

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「ぐふっ!」

マリーもレクシアも重は軽いが、それでも傷口に飛び込まれ、激痛がワタルを襲う。

エレナはというと、視線をワタルに向けず、もじもじと落ち著かない様子だった。

「エレナ、どうかした?」

「いや……私は、ワタルを傷つけてしまったから……」

「そんなこと、気にしてないよ。助け合うのが仲間でしょ?」

「……ありがとうっ!」

エレナはワタルの言葉に極まったのか、目を潤わせると、他の2人と同じようにワタルに飛びつく。

「っっっっ!?」

エレナは見事にワタルの傷口にダメージを與え、ワタルは聲にならない悲鳴をあげる。

「傷口が開いたわね。そのままだと死ぬわよ」

「「「えっ」」」

「冗談よ。でも、また治療が必要ね」

4人の騒ぐ聲を耳にしながら、ワタルはゆっくりと目を閉じる。

痛みによる気絶だったが、ワタルにはその騒ぎ聲が心地よかった。

***

「ワタルさん、王様から城に來るようにとのことです」

「なんです?」

アラベスクとの激戦から1週間が経ち、ワタルもけるようになった頃、リナにもお禮を言おうと4人はギルドに行った。

そこでリナに開口一番言われたのは、思わず聞き返してしまうような言葉だった。

「ですから、この國の王様から、ワタルさんたちに城に來るように言われたんです」

「幹部の件ですかね……」

「そうですね。ヨナスさんが幹部を討伐したパーティを王様に聞かれて、答えてしまったらしいです」

王とは國で一番偉い。

そんな人から質問されれば、ヨナスも正直に答えなければならないだろう。

「心配しなくても、報奨とか貰えるんじゃないですかね。王様は優しい人ですから」

「リナさん、王様の人柄について教えてくれませんか?」

「いいですよ」

怒られることはないとわかっていても、會うのはこの國の王だ。

無禮を働けば、首を飛ばされかねないため、事前にリナから王の人柄などを教えてもらうことにした。

この國の王の名前は、アニマというらしい。

この世界では姓がないので、王でも名前のみだ。

普段接することもないので人柄は詳しくわからないが、噂では優しい人だとか、國民を兵としか考えてないとか、様々なことを言われているらしい。

「こんなところです」

「ありがとうございます。今から行けばいいですかね?」

「目が覚めたらと言っていたので、今からでいいと思いますよ」

「わかりました。行ってきます」

「処刑とかにならないよう、気を付けてくださいね」

リナから騒な忠告で見送られ、ワタルたち4人は王都の奧にある城へ、裝備を整えて向かう。

エレナは何故か粛清剣を持たず、一つだが。

「はぁ……」

「気が重そうじゃな」

「そりゃ王様だからね。変な事言ったら殺されると思うよ」

「「そんなことしたら私が王様を殺す」」

「あはは、ありがとう」

騒なことを言うエレナとレクシアの言葉を聞いて、し気が楽になったワタルは、前を向いて城へと行く。

もし仲間がピンチになったら、王様だろうと殺そう、そう心に決めた。

「ようこそ、ワタル様のパーティですね?」

「はい、そうです」

城に著くと、門を通る前に衛兵から顔は知られているのか、そう言われると中へ通される。

中はワタルが想像していたほど派手ではなく、調度品や壁紙が綺麗にまとまり、落ち著いた雰囲気を醸し出している。

「こちらです」

ワタルたちが通されたのは、その城の最上階、3階の奧の部屋だった。

一際大きなその部屋は、まさにファンタジー世界の王様が住むのに相応しい豪華な場所だった。

「そなたらが幹部を討伐したというパーティか」

部屋の奧の豪華な椅子に座るのは、これまた豪華なマントと王冠にを包んだ中年の眼の鋭い王、アニマだった。

その両隣には、いかにも腕の立ちそうな騎士が4人、王を守るように立っている。

「アニマ様、この度はお招きいただきありがとうございます」

ワタルが心の中で練習していた言葉と共に頭を下げると、他の3人も同じように頭を下げる。

マリーは張しているような素振りはないが、エレナとレクシアは若干顔が険しい。

「活躍はギルドのヨナスから聞いておる」

この流れは、リナの言う通り報奨が貰えそうだ。

ワタルがそう思ったのもつかの間、アニマから出た言葉は信じられないものだった。

「それは王都の兵の役目だ。余計なことをしてくれたな」

「……はい?」

思わずワタルが素で聞き返す。

「冒険者というのはいつもそうだ。出しゃばり余計なことをしてくれる」

「お言葉ですが、俺たちは命をかけて幹部を討伐しました。そんな言い方をされることはないと思いますが」

ワタルが言い返すと、王の近くの兵が腰の剣に手をかける。

「聞けば、仲間も人間以外の者ばかりらしいではないか。そんな者達を引き連れて、お前は魔王軍のスパイかなにかか?」

「っ、この!」

自分をバカにされるならともかく、仲間をバカにされるのは許せない。

夜想曲の剣を引き抜いたワタルに対し、既に臨戦態勢になっていた騎士達が、剣を引き抜きワタルたちへ走り出す。

だが、遅すぎた。

隣のエレナがいたと思うと次の瞬間には、騎士たちが地に倒れ伏していた。

その目はピンクから赤になっており、また暴走したのかと思ったが、理は保っているらしい。

「私の仲間を侮辱した罪は重いぞ」

エレナがアニマを睨みつけ、背後ではマリーが魔法陣を展開しており、完全に殺す気だった。

騎士達は素手だったため死んではいないようで、、き聲を上げている。

「ふっ、ふはははは! 素晴らしいな!」

「え」

突如笑い始めたアニマに、4人はキョトンとした顔できを止める。

「いや、すまなかった。この通りだ」

「え、ちょっ、頭を上げてください」

なんと、一國の王がワタルたちに頭を下げたのだ。

こんなこと普通なら有り得ず、ワタルは慌ててアニマに頭を上げるように頼む。

「わしが無禮を働いたのだ。謝るのは當然だろう」

「どういうことですか?」

「幹部を討伐したパーティというのが、どれほどのものか試してみたくなってな。わざと怒らせるようなことを言ってしまった」

狀況についていけないワタルたちに、アニマはさらに言葉を重ねる。

「どうだ、晝食でも食べながら話をしないか? ここではわしも肩が凝る」

そう言われ、扉からってきた兵士に、大広間へ案されるのだった。

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