《異世界で鬼になったので”魅了”での子を墮とし、國を滅ぼします ~洗脳と吸に変えられていく乙たち~》7 影を落とす

朝食を終えると、わたくしたちはしばし食卓でお茶を啜りながらくつろいでおりました。

聞きたい話もありませので、ちょうど良い頃合いだと思い、彼たちに訪ねます。

「あなたがたは、なぜ廃棄街から逃げてきたのですか?」

「ナナリーが知ってるかどうかはわからないけど、し前に市街で兵士の死が見つかったでしょ?」

「ええ、確か――廃棄街の人も一緒に死んでいたと聞いておりますが」

「それが私の知り合いでさ、ゴタゴタに巻き込まれて、殺されそうになったから逃げてきたってわけ」

簡単に”殺されそうに”と口にするエリスさんを見て、やはりわたくしの廃棄街への認識は間違っていなかったのだと実します。

そうさせたのは、治安維持のための人員も確保せず、隔離したまま見捨てた貴族たちや、わたくしたちのような一般市民の責任でもあるので、だからといって彼たちを軽蔑することはできませんが。

「ナナリーが拾ってくんなかったら今頃死んでたかも、ほんとありがとね」

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「いえ、禮には及びません。聖職者として當然のことをしたまでですから」

善人のような顔をしてそう言い切る自分に、反吐がでそうでした。

一度は廃棄街の人間を見捨てたことがあるというのに、どうしてわたくしは自分の非を認めず、いつまでも良い人を演じ続けようとしているのでしょう。

そもそも――わたくしは、聖職者ですら無いと言うのに。

「お姉さま?」

ひとり思いに耽っていると、エリサさんのチグサさんを呼ぶ聲で現実に引き戻されました。

気づけば、前に座っていたはずのチグサさんの姿が消えています。

どこへ行ったのかと確認する前に、わたくしのは、再び背中から彼に抱きしめられていました。

は、ひんやりとした、しかし命の脈は確かにじられる不思議なです。

さらに抱きしめたまま、手のひらをわたくしの手に重ねてきました。

先ほどの表を見て、落ち込んでいると思われたのかもしれません。

だとすると、彼は純粋にめようとしているだけのはずなのですが、どうしても昨晩の出來事を思い出してしまいます。

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部屋かられるエリスさんのぎ聲、そしてそこには――チグサさんも、居たはずなのですから。

「ほんと、お姉さまはスキンシップが好きだよね」

「エリスはいつもこうするだけで笑ってくれますから、悲しい顔をしていたナナリーさんも笑ってくれるんじゃないかと思いまして」

「そんな顔、していましたでしょうか」

「はい、してましたよ。寂しそうにうつむいてました」

「そう……ですか。でしたら、その、あ、ありがとうございます。ですが、わたくしは……」

「慣れてませんか、こういうの」

耳元で囁かれると、ぞくぞくとした覚が背筋を通っていくのです。

先ほどまでは嫌悪すらあったの含んだその聲も、いつの間にか慣れてしまったのでしょうか、むしろ心地よくじてしまっています。

れ合うから伝わる、ぴりぴりとしたを震わすようなくすぐったさもまた、を預けてしまいたいと考えるほどに蠱的でした。

これは、正常なことなのでしょうか。

チグサさんの行の是非ではなく、そのようにじてしまうわたくしの覚は、果たしてまともな狀態なのでしょうか。

「ナナリーさんは、ひょっとすると、寂しかったのではないでしょうか」

「わたくしが……寂しい?」

チグサさんは、指先でわたくしの手をでながら、そう語りかけてこられました。

そんなことは、考えたことすら無かったというのに――彼の言葉は、まるで滴り落ちた蜂のようにねっとりと、わたくしの心の中に染み込んでゆきます。

しかし、わたくしにも自分の意志と言うものがあるのです。

それは違う、と明確に首を橫に振りました。

「寂しくはありません、街のみなさんがいつも気にかけてくださいますから」

「そうなんですね、街の人々が。例えば、普段はどのような話をしているんですか?」

「主に悩み相談、ですね。わたくしがこの教會に住まうことになったきっかけも、それが始まりでしたから」

「と言うと?」

「わたくし、本當はシスターなどではないのです。行き場を無くして、廃墟になっていたこの教會に勝手に住み込み、いつの間にか悩み相談をけるうちに真似事のように聖職者になってしまいまっただけなのですから」

行き場を無くした原因が駆け落ちの失敗だと知ったら――街の人々は、それでもまだ、わたくしのことを慕ってくれるのでしょうか。

その事実をひた隠しにしたまま生き、その恩恵をするわたくしは、果たして聖職者と呼ばれるべきなのでしょうか。

「つまり、今は悩み相談の見返りで暮らしているんですね」

「そう、ですね。そういうことに……なります」

というのは無償で分け合ってこそです、ギブアンドテイクでは本當の繋がりとは言えません。やっぱり寂しいんですよ、ナナリーさんは」

「ち、違います、それはっ」

「そうやって焦るのが証拠です。心の底では、無條件で通じ合える誰かを探し求めているんじゃないですか」

この場所に住むようになってからというものの、親しい誰かは居ても、友達と呼べる相手はいませんでした。

いつも相談を投げかけられるばかりで、わたくしから誰かに相談するということもありませんでした。

そう考えると、確かに――チグサさんの言うことは、正しいのかも、しれません。

わたくしは、寂しい。

この広い教會の中で、ずっと一人きりで生きてきて、寂しかった……。

ですが、わたくしがそうなってしまったのは、寂しさを埋める誰かに出會わなかったからです。

それとも、わたくしの耳元で甘く囁くあなたが、その役目を擔ってくださるとでも言うのでしょうか。

「素直に認めると、案外解決手段はすぐに見えてくるものです。無理しないでくださいね、ナナリーさん」

そう言うと、チグサさんはあっさりとわたくしからを離し、元の席へと戻ってしまいました。

「え? あ、はい……」

予想と違う行を取ってしまったチグサさんに、わたくしは気の抜けた返事しかできませんでした。

……わたくしは、今、何を期待していたのでしょう。

ただめてくださっただけではないですか。

だというのに、おふたりがそういう関係だからと言って、自分も狙われているのではないかと勝手に邪推して、期待して。

自分勝手な思考を悔やみ、自己嫌悪の沼にまた沈もうとしていると、椅子に座ったチグサさんはわたくしの心を見かすように言いました。

「辛くなったらまた言ってくださいね、抱きしめるぐらいならいくらでもできますから」

「お姉さまが居なかったら私でもいいよ、ナナリー」

なら今すぐにでも、と甘えてしまいそうになる自分を振り切り、わたくしは力なく笑顔を浮かべながら「ありがとうございます」と彼たちに告げたのでした。

◇◇◇

それから、わたくしと彼たちとの共同生活が本格的に始まったのです。

廃棄街の人間ということもあってか、あまりわたくし以外の人間の前に姿を現したがらない2人は、もっぱら掃除洗濯炊事など、裏方の仕事をこなしていました。

3人になるとどうしても食料の減りは早くなりましたが、幸いなことに2人とも食でしたし、家事は格段に楽になったので、わたくしとしては非常に助かっています。

しかし、困ったこともあります。

2人の――特にチグサさんのスキンシップが、今朝の一件をきっかけにエスカレートしているのです。

スキンシップが好きだ、とエリスさんが言っていましたし、特別な意味など無いのでしょうが、どうしても昨夜の出來事が脳裏をちらついてしまいます。

チグサさんは、わたくしのことを、どう思ってれているのでしょうか。

夕食を終え、お風呂も済ませた後、自室でくつろいでいると、ドアをノックする音が二度響きました。

「どうぞ」と返事すると、姿を現したのは、風呂あがりらしいチグサさんでした。

潤いのあると、り気を帯びた黒髪、そして上気した

見ていると、妙な気をじてしまいます。

「どうしたのですか、チグサさん」

は無言のまま微笑んでいます。

そのままベッドに腰掛けたわたくしに近づくと、頬に手をばし、ほんのりと冷たい手で包み込みました。

まるで口づけでもするようなり方に、わたくしの溫が一気に上がっていきます。

後ろから抱きしめられる分には平気なのですが、さすがに正面かられられるのは耐えきれません。

わたくしはその手をやんわり振り払おうと頬に手をばすと――気付けば、振り払うどころか、その手を重ねていました。

……あれ、どうして?

自分の意志とは異なる行を取るに戸いを隠せません。

そうこうしている間にも、手を重ねたことで”許された”と思ったのか、チグサさんの顔が徐々に近づいていき、れる寸前で、わたくしは両目をぎゅっと強く瞑りました。

その直後――

こつん。

額にぶつかる、い何か。

恐る恐る目を開くと、そこには目を閉じたまま、額同士をれ合わせるチグサさんの姿がありました。

「ナナリーさん、今日もお疲れ様でした」

微笑みながら彼が告げたのは、今日一日のわたくしをねぎらう言葉。

ああ、こうして優しい言葉を伝えるために、わざわざここに來てくれたと言うのに。

わたくしは、なぜ――そこまで、彼のことを警戒してしまったのでしょう。

額を離したチグサさんは、こちらの表を見て困ったような表を浮かべられていました。

當然です、彼の善意は、わたくしのせいで歪められてしまったのですから。

「……ごめんなさい、また困らせてしまったみたいですね」

謝意を口にするチグサさんに、わたくしの罪悪は膨らむ一方でした。

「いえ、悪いのはわたくしの方です。チグサさんはわたくしのことを考えて、労いに來てくれたというのに……それを疑うような真似をしてしまったのですから」

「疑う?」

「……廃棄街の人間だから、と差別的に見ていたのかもしれません」

懺悔の意味も込めて、わたくしは素直に心境を吐しました。

これで許してもらえないのなら仕方のないこと。

しかし――

「それなら仕方ありませんよ、急に押しかけたのは私たちの方なんですから。そうやって苦しんでくれる分だけ、ナナリーさんは優しいと思います」

はわたくしを一切糾弾することはなく、むしろ優しく抱きしめながら、”あなたは優しい”とまで言ってくださったのです。

聖職者になるなら、わたくしなんかよりずっと、チグサさんの方が向いています。

ふわりとしたらかなと、が熱くなるような、獨特の甘い香りがを包み込みます。

もはや躊躇う必要もなくなったわたくしはその心地よさにを任せ。

が「エリスが寂しがってしまうから」と部屋をさるその時まで、わたくしとチグサさんは、ベッドの上で抱き合っていました。

◇◇◇

その日の夜、偶然――いえ、自然と目を覚ましたわたくしは、”が渇いた”と口実をつけて部屋を出ました。

そして臺所へ立ち寄る前に、ふらりとチグサさんとエリスさんが眠っているはず・・の部屋に向かいます。

聖域に土足で踏み込むような罪悪に酔いながら、震える足取りで、ゆっくりと、ゆっくりと、床をきしませぬように扉の前までたどり著くと、

「はあぁ、ああぁ……」

こらえきれず、聲混じりの吐息をらしながら、わたくしはぴたりと、扉に耳を寄せました。

中から聞こえる音は――これだけ近くにいるとより鮮明で、まるでわたくし自がその部屋の中の登場人のひとりになったかのように錯覚するほどです。

「お姉さま……そこ、だめ……っ」

「エリスは可いですね。ほら、いい子だからその手を退かして」

「お姉さまぁっ……」

今夜も、チグサさんとエリスさんはし合っていました。

音と聲だけで、何をしているのかまではわたくしにはわかりませんでしたが、それだけでも、わたくしにとっては狂うに十分過ぎる刺激で。

わたくしの頬は、自然とはしたなく、にやついておりました。

も熱く、耳や首筋まで紅させながら、自分の肩を抱き、張り付くように扉に耳を當て、呼吸を震わせる。

きっとわたくしは今、聖職者にあるまじき恍惚とした表を浮かべているのでしょう。

それを理解してもなお、わたくしはそれをやめようとはしませんでした。

しています、エリス。ずっとずっと一緒ですよ、永遠に、私が可がってあげます」

あぁ――なんて羨ましい。

心の底からそう思いながら、2人の事が終わるまで、わたくしは彼たちの部屋に張り付いていたのでした。

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