翌朝、わたくしの前に姿を現した2人は、もはや事の香りを隠そうともしませんでした。

首元の赤い跡も、汗ばんだも、潤んだ瞳も、起きてすぐに抱き合ったのか、あるいは昨晩から一睡もしていないのか――

「おはようございます、ナナリーさん」

普通に笑って挨拶をしているだけのはずなのに、チグサさんの表にっぽさをじてしまうのは、わたくしの考えすぎなのでしょうか。

赤い瞳も、まるでの炎が滾っているよう。

わたくしは、昨晩に不埒な妄想をしてしまった恥じらいから、真正面から彼の顔を見ることができず、俯きながら返事をします。

「お、おはようございます……」

そんなわたくしを見て、チグサさんは「ふふ」と艶かしくに人差し指を當て、微笑みます。

そしてこちらに歩み寄ると、また昨晩のように両手を広げ、抱きしめて――頬にふわりと、らかくしっとりとした何かがれました。

今のはまさか……、でしょうか。

「朝の挨拶です、お気に召しませんでした？」

戸い恥じらうわたくしを見て、彼は小悪魔のように囁きました。

「いえ……そういうわけでは」

むしろ嬉しかった、とはさすがに言えませんでしたが、言い訳のしようが無いほどに心臓が高鳴っています。

これだけ著していると、火照る溫も、高鳴る心音も、越しにチグサさんには伝わっているのではないでしょうか。

「もー、お姉さまばっかりずるいんだから。私だってナナリーに挨拶・・したいんだよ？」

「奪った覚えはありませんよ、エリスもしたらいいじゃないですか。構いませんよね、ナナリーさん」

わたくしが返事をするより先にエリスさんは腕に抱きつき、そのらかな肢を服越しに押し付けました。

腕に絡みつくの膨らみをやけに意識してしまいます。

同じだというのに、わたくしはなぜこのような気持ちになっているのでしょう。

しかし、やはり、その下にある素が昨夜もチグサさんの手ででられたのかと思うと――意識せずにはいられません。

「おはよ、ナナリー」

エリスさんはそのまま耳元でそう囁くと、耳たぶにキスをしました。

舌先を出していたのか、ったがあたり、思わず「ひゃっ」と高い聲で鳴いてしまいます。

そんなわたくしを見て、彼は「ナナリーは、可いね」とウィスパーボイスで語りかけるのです。

こんなに近く、耳元で話しかけられると――ただそれだけで、が熱を帯びていきます。

酒に酔ったようにくらくらして、チグサさんとエリスさんの甘い香りがさらにそれを助長して、わたくしはしずつ正常な判斷力を失っていきました。

「こんなに真っ赤になってしまって、ナナリーさんはこういったれ合いに慣れていないのですね」

「それは……わ、わたくしに限った話では……」

「私たちが慣れさせてあげます。さあ、を委ねてください」

「あ……ぁ……」

チグサさんの指先が首筋にれると、そこから鎖骨をなぞるように移していきます。

その繊細でらかなタッチに、ただでられるだけでゾクゾクと肺を震わせながら、小刻みに呼吸を繰り返すことしかできません。

彼に気を取られていると、今度はエリスさんの手がわたくしの部へとびていきました。

「ナナリーってやらしいしてるよね、りがいがあって……好きだよ、私」

至近距離で謂われ、同時に吐息が耳をくすぐることで、”好き”という言葉の深みが増しているのでしょう。

まるで自分がの告白をされているのではないかという錯覚に陥り、そのままおをでられても、嫌どころか、自分のが求められているようでむしろ嬉しいほどでした。

時折、手のひらに力がこもり、軽くみしだかれると、わたくしはからはしたない聲をらしてしまいます。

「こんないやらしいを持て余しているなんて勿無いです、もっと使わないと・・・・・」

「使う、なんて……そんな……」

チグサさんの手がにびていきます。

それを見ているだけで、近づいていく度に、わたくしのの高鳴りはエスカレートしていくのです。

確かに、昔から発育は良い方でしたが、こんなことをするために今のになったわけではありません。

しかし――チグサさんに言われると、それも、悪くないような気がしてきます。

飲み込まれてしまう。

危険な兆候だと、理はわたくしに警告しているというのに、それ以上の、彼にれてしいという求がどこからともなく吹き出してきて、止まらないのです。

手のひらがを持ち上げるように當てられると、わたくしのは張からか一気に強張ります。

「大丈夫、何も心配はありません。私を信じていればいいんです」

至近距離から流し込まれる薬めいた聲は、わたくしの脳に直接響き、染みてゆきます。

「力を抜いてください、そう、そう……そのまま、全部、私たちにまかせて……」

魔法のような言葉にわれて、張はそのまま、わたくしのから力が抜けていきました。

「気持ちいでしょ？　それでいいの、ナナリーは好きなだけ気持ちよくなっていいんだよ」

エリスさんの言うとおりです……こんなに、られているだけで心地よいのに、なぜ拒む必要があるというのでしょうか。

「ナナリーさん、本當はずっと、誰かに甘えたかったんですよね。寂しさを埋めてくれる誰かを探していたんですよね」

「そ、それは……」

昨日と同じように、違うと言いたかったのですが、うまく言葉が出てきませんでした。

拒めないほどに、すでにわたくしの心には、チグサさんがり込んでいたからです。

「違うなら違うと言ってください。ナナリーさんがそう言うのなら、私ももうしませんから」

「いえ……あの、わたくし、は……寂しいです。チグサさんのように、誰か甘えさせてくれる人を、待っていました」

「ふふ、そうですか。つまり、悩みを持ちかけられるばかりで、誰もナナリーさんのことを理解してくれなかったということですね？」

「その……通り、です」

「でも、私たちは違う。ナナリーさんの心を満たすことができる」

チグサさんの、言う、通り。

こんなに……がいっぱいになっているのは、とても、久しぶりで。

いえ、初めてなのかもしれません。

誰にだって……彼にだって……こんなにも、わたくしの中を満たすことはできなかった。

「ナナリーは、今まで1人で沢山頑張ってきたんだね。えらいえらい」

エリスさんがわたくしの頭をでました。

子供の頃、母に抱きしめられながら、褒められた時のことを思い出します。

気づけば、わたくしは子供のように無邪気に笑っていました。

「頑張ったんだから、もういいんだよ。もう頑張らなくていいの」

「もう……がんばら、ない……」

「そう、私たちと一緒になろう？　一緒に、沢山幸せになろう？」

一緒に――幸せに――それは、どういう？

「知っているんですよ。昨夜も、その前の夜も、ナナリーさんが私たちの部屋の前にいたこと」

「ナナリーは聞いてたんだよね、私たちのあの聲を」

わたくしのから、さっとの気が引いていきました。

うそ……盜み聞きしていたことが、気づかれていたというのですか？

でしたら、なぜ、糾弾もせずにこのようなことを？

「そんなに落ち込まないでください、確かに聖職者の覗きはいかがなものかとは思いますが、私たちは嬉しかったんですよ」

「嬉しい？　それは、どういう――」

チグサさんの手がわたくしの頬にびます。

その手のひらに込められた力に従い、彼の方を向くと、至近距離にあった顔がさらに近づいてきました。

「ま、待ってください、チグサ……さっ……」

そして、れる。

それは一瞬の出來事で、夢ではないかと思うほど儚く、しかしに殘ったが確かに現実なのだとわたくしに教えてくれます。

……キス、されてしまいました。

わたくしが、チグサさん、に。

「出會った時から、素敵なだと思っていたんです。私は、ナナリーさんのことが好きです」

耳元での告白。

わたくしの心臓はさらにうるさく跳ね出して、もうこののドキドキがによるものなのか、狀況に流されたせいなのかもよくわからなくなっていました。

ですが……キスをされて、嬉しかったのは、間違いないのです。

わたくしは……わたくしも、チグサさんの事が……。

「ダメだよナナリー、お姉さまのことばっかり見てちゃ」

「エリスさん？」

今度はエリスさんの手がわたくしの頬にびてきます。

そして彼の方へし強引に引き寄せられたわたくしは、振り向いた瞬間に再び、を奪われたのです。

同じキスでも、し、が違いました。

ひんやりとしてらかい部分は変わりませんが、チグサさんのよりはし弾力があって、溫も微かに高いような気がします。

「私も好きだよ、ナナリーのことが」

また、至近距離での告白。

ほぼ同時に、2人のしいからの告白をけて、わたくしはどうしたらいいのか全くわかりませんでした。

混のさなか、それでもチグサさんは追撃の手を緩めません。

「こんなにしくて、可らしくて、好きにならないわけがありません」

「も心も私だけのものにしたいな」

「ずっとれ合っていたい、死ぬまで永遠に傍に居たいのです」

「ナナリーも好きって言って。ほら、ね？」

わたくしは促されるままに、その言葉を口にしました。

「好き……です」

「誰のことを、ですか？」

「チグサさんと……エリスさんが、好き、なのです」

2人は嬉しそうに笑い合うと、気づけばまたわたくしはチグサさんと向き合っていて、を奪われていました。

今度はれるだけでなく、押し付け合う、熱的な接吻。

いえ、だけではありません。

チグサさんの舌先にをノックされ、それに反応して口を開くと、中に舌がねじこまれました。

彼の舌はわたくしの口を躙し、唾を塗りたくるようにチグサさんの味を広げていきます。

わたくしもどうにか、しでも彼に気持ちよくなってもらいたい、と必死に舌をかしますが、いかんせん経験の差がありますから、大した反撃はできませんでした。

頬や舌の裏側、口蓋に至るまであらゆる場所を彼に躙されたわたくしは、2人の舌の間にかかった銀の橋を、息も絶え絶えに、ぼんやりと眺めています。

し休まなければ、頭がどうにかなってしまいそう。

そう思っていた矢先に、今度はまたエリスさんの方を向かされて、を押し付けられて、舌を挿し込まれて。

未だチグサさんの味が消えない口の中を、今度はエリスさんがかき混ぜていきます。

そのきは、し暴力的で、支配されているようで被、とでも言うべき何かが満たされていくのを実していました。

自分の中で、違う誰かの同士が混じり合う、未知の。

ともすれば、気持ち悪いとも思えそうなその狀態を、わたくしは悅びながらけれていました。

だって、好きなのですから。

好きな人のものなら、何でも嬉しいものではないですか。

「はぁ……ぁ、あぁぅ……う、ぁ……」

「ふふふ、ナナリーったらけちゃってる」

「よほど気にってくれたようですね」

「あぅ……は、い……とても、素敵、でした……」

本心から、葉うのなら力が続く限り、何度でも繰り返したいと思っています。

そしてそれをめば、きっと2人は葉えてくれるでしょう。

「チグサさん、エリスさん……」

……それなら。

「さっきのを、もっと……して、いただけませんか？」

わたくしは、ありったけの勇気をもって言いました。

本來の自分なら絶対にしないようなおねだり。

恥ずかしくて死んでしまいそうでしたが、2人は慈しむように穏やかに微笑むと、耳元で囁きました。

「もちろんです。ナナリーさんのお願いなら、いくらでもしてあげます」

「何回だって、意識が飛ぶまでしてあげる、ナナリー」

その宣言通り、すぐさまチグサさんとの口づけがはじまりました。

それが終わるとエリスさんがわたくしのを貪り、唾を流し込み、またチグサさんがわたくしの中をかき混ぜる。

何度も、何度も、「しています」「してる」と繰り返し囁かれながら、わたくしは、も心も溶かされていったのです。

もはや、彼たちとの間に、心の壁は一切ありません。

むしろ自分から、なにもかもをさらけ出したいと思うほどです。

何度目かわからないキスを終えた時に、ふとチグサさんがわたくしに問いかけました。

「ナナリーさんは、処ですか？」

その問いかけの意図はさておき、わたくしはすぐに答えました。

「はい……婚前渉など、したことはございません」

廃棄街の人々の常識はわかりませんが、なくともそれは、市街に住む貴族にとっては當然のことでした。

「よかった、処の方が味しいですから。きっと、私に捧げるために取っておいてくれたんでしょうね」

味しい、という意味はよくわかりませんが――わたくしは、こくりと頷きました。

きっとそうです。

あの時、駆け落ちした彼との関係を持たなかったのは、きっとこうしてチグサさんとエリスさんに出會って、捧げるためだったのです。

「お姉さま、そろそろ」

「ええ、そうね。行きましょうか、ナナリーさん」

それが何を意味するのか、知らないわたくしではありません。

この神聖な教會で――そんな理由は抑止力にすらならず、むしろ背徳がわたくしの理を脆くする有様でした。

すでに頭の中は、昨晩聞いたあの聲、想像した景、その中に自分自が混ざることでいっぱいになっています。

そんなわたくしが、まさかそのいを拒むことなど、あり得るわけがないのです。

「はい……わたくしを連れて行ってください。あなた方の、寢室へ」

2人と寄り添い合いながら、わたくしは寢室へとわれてゆきます。

もはや朝食も、教會を開くことも、人々の助けになることも、何もかもがどうでもいい。

チグサさんにでられ、エリスさんに弄ばれる、その至福に比べれば、その他の有象無象がなんとちっぽけなことか！

腰に這わされた2人の手が直接にれることを想像しただけで、今すぐにでも頂きに上り詰めてしまいそうで。

張り詰めた糸のようにギリギリにまでを膨らましたまま、ついにわたくしは、夢にまでみたあの寢室に足を踏みれるのでした。