《異世界で鬼になったので”魅了”での子を墮とし、國を滅ぼします ~洗脳と吸に変えられていく乙たち~》閑話2 トロイメライは終わらない・下

向かい合うチグサさんは、珍しく暗い表をして言った。

「ミリィがに飢えていることなんて、みんなわかっているはずなんですけどね」

わかっているんなら、お父さんやお母さんはどうして、わたしをお姉ちゃんと同じようにしてくれないんだろう。

「本當にそうなのかな……」

「ええ、初めて見た私にもわかったんですから。わかった上で、背負う自信が無いから、誰も応えようとしない。無責任です、最低でもミリィを産んだ親はその義務があるはずなのに」

「でも……わたしが病気になったのが、悪いんだよね。わたしが病気じゃなくて、他の子供と同じように外で遊び回れてたら、こんなに困らせなかったんだよね」

「そこまでまとめて、全てを抱きしめるのが家族というものです……と言うのは、高みなのかもしれませんね、私もそうでしたから」

「チグサさんも?」

それは意外な言葉だった。

チグサさんは、わたしを大きなで抱きしめてくれるから、てっきり沢山の人にされて生きてきたんだと思っていたのに。

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「誰もしてくれませんでしたよ、むしろ意味もなく憎まれていました。唯一してくれた人も、私を憎む人たちに傷つけられて、そして同じように私を憎むようになってしまった」

「そんなのひどいよ。チグサさんはこんなに素敵で、優しいのに」

そう主張するわたしに、チグサさんは困ったように、けれど嬉しそうに微笑んで、こつんとおでこをくっつけました。

「ミリィと同じですよ。ひょっとすると、だからこそ私は、あなたを見つけられたのかもしれませんね」

「同じ……?」

チグサさんとわたしじゃ全然違うのに。

だって、チグサさんはどうしてわたしなんかに興味を持ってくれるのか不思議なぐらい、高嶺の花なんだよ?

でも……噓は、言わないだろうし。

本當なのかもしれない。

かつてはチグサさんもわたしと同じで、ってことは――

「じゃあ、わたしも変われるのかな。チグサさんみたいに、素敵な人になれるのかな?」

「なれますよ。ミリィも生まれ変われば、お姉さんだって取り戻せるはずです」

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「でも、チグサさんはわたしを食べるんだよね?」

「ええ、ですが私が食べるのは、ミリィという”人間”です、あなたを殺すわけじゃない」

「……どういう、こと?」

まだわたしがいせいだと思うけど、チグサさんが言う言葉の意味をよく理解できなかった。

すると彼は、時折見せる、見ているだけでゾクゾクしてしまう妖しい笑みを浮かべると、わたしに顔を近づける。

そのままキスされるのかと、わたしが目を細めると――チグサさんは、鼻と鼻の先がくっつくぐらいの距離で止まる。

「食べると言っても々意味があるんです。例えばこうして、キスをすることだって”食べる”といいますし――」

チグサさんは、わたしとを重ねる。

いつもと同じ、とても幸せな時間――そう思って、目を閉じてうっとりとしていると、急に口の中に、今までじたことのない何かがり込んできた。

にゅるりと、っていて、ぬるぬるしていて、わたしは慌てて目を開くと、それが何なのか正を知る。

舌、だった。

チグサさんの舌が、わたしの中にっていた。

これも……キス、なの?

本當なら気持ち悪いはずなのに、それがチグサさんのものだと思うと、そんな気持ちは全部吹き飛んでしまう。

チグサさんの舌はわたしの舌を絡め取ると、涎をまぶすように全を舐めていった。

舌と舌がれるとぴりぴりして、まるで昨日、直接れてもらったときみたい。

気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。

頭の中がチグサさんへの想いでいっぱいになって、最初は戸っていたけれど、すぐに”もっともっと!”って歯止めがきかなくなる。

けれど方法をしらないわたしにできることはほとんどない。

チグサさんの背中に回した腕にきゅっと力を込めて、もっと深くつながることができるように顔を傾けるぐらい。

でも、それだけで、もっと奧までチグサさんがってくる。

「んっ、んんんっ……!」

ベロのっこがにゅるんってでられると、わたしのはびくっとなった。

なんだろ、今の……すごい、すごく気持ちいい!

好き、好き、好きっ、これ、好きぃっ!

チグサさんの涎がわたしの口の中にってくると、わたしはそれを、まるで砂漠でオアシスを見つけた時みたいに、必死になって舐めて、味わう。

誰かの涎なんて汚いだけだと思ってたのに、チグサさんだと……好きな人だと、こんなに、おいしい。

ああ、そっか、そうだったんだ。

このドキドキする気持ちは、”好き”だったんだ。

お姉ちゃんとも違う、チグサさんと一緒に居るときにしか出てこない、が締め付けられるような、痛くて、けどもっとしくなる不思議な気持ち。

そして、こんな風にわたしを求めてくれるってことは、チグサさんもわたしのこと好きなのかな。

きっとそうだよね、だって、こんなに気持ちいいをくれるんだもん。

チグサさんの味がする、飲み込むと、わたしの中の深いところにチグサさんがってくるみたいで幸せになる、頭が真っ白になる。

チグサさんに食べられるところを想像するだけでも、わたしの一部がチグサさんになれるってだけでも、死んでいいほど幸せなのに――わたしの中に、チグサさんがってくるなんて。

想像もしてなかった。嬉しい、嬉しい、嬉しい!

じゃあ……わたしがあげたら、わたしのよだれも、チグサさんの中に、っていくのかな。

そんな考えが湧き上がってきて、わたしはにゅるんにゅるんとチグサさんの舌に好き勝手気持ちよくされる中、涎をためて、チグサさんの舌に絡めた。

するとチグサさんは、をすぼめて、わたしの舌を吸い上げていく。

「ん、んふううぅぅっ! ふうぅっ、ちぐひゃ、しゃっ……はひゅううぅぅぅっ!」

「ん……じゅる……ちゅぱ、んく……ん、ふうぅ……っ」

うぁ……のんで、くれた。

飲んで、目を細めて、嬉しそうにしてる。

わたしの涎が……チグサさんの中に、っちゃった。

わたし、チグサさんの一部に、なっちゃった。

そう思うと、わたしのは一気に熱くなって、ふわふわして、びくびくする。

こらえるためにさらに強く、ぎゅってチグサさんのにしがみつくと、チグサさんはわたしを優しく抱きしめてくれた。

「ちゅぱ……」

さすがに疲れ果てて、が自然と離れる。

けど気持ちはもっとチグサさんと一緒になりたいって求めている。

その気持ちをしでも彼にわかってほしいと思って、わたしは気持ちもありったけ視線に込めた。

チグサさんもわたしをみている、赤い瞳がうるみながら、わたしをおしく見つめている。

「ちぐさ、しゃん……すき、れす……だいすき、れしゅ……」

わたしは舌っ足らずな言葉で、想いを伝える。

けない聲だけど、わかってくれたかな。

「私も、ミリィのこと好きですよ。この世に存在する他の誰よりも、ミリィのことをしている自信があります」

よかった……伝わってた。

えへ、えへへ、好き、だって。

じゃあこれで、チグサさんとわたしは、人なのかな?

いや……なんだって良いや。

チグサさんはわたしが好き。

わたしはチグサさんが好き。

それがわかれば、他のことなんて、どうでも。

「つまり、こういうのも、”食べる”というんですよ」

「今の、キス、が?」

「そうです。他にも食べるというのはんな意味があって――」

「ひゃんっ!?」

チグサさんの手がずるりとパジャマの中にり込んで、わたしのおでた。

昨日もられたけど、それは上半だったから。

でも……なんとなくわかってたけど……これって、えっちなこと、だよね。

「いやらしいことをして、ミリィを気持ちよくしてあげる。それも、”食べる”って言うんです」

「じゃあもしかして、わたしは、チグサさんに食べられても死なないの?」

「當然じゃないですか、こんなにおしい相手を殺すだなんて勿無い」

「じゃあ……食べられたら、どうなるの?」

「ふふふ……」

あ……またあの笑顔。

その顔を見た後は、チグサさんはいつも、わたしに素敵なことをしてくれる。

だから、今度もきっと素敵な何かを教えてくれるんだろう、って確信があった。

そして、彼の赤いが、艶かしくく。

「ミリィも私と同じ、吸鬼になるんですよ」

どくんと、心臓が痛いぐらいに高鳴った。

ぞくぞくぞくって、背筋に冷たいものが通って、が震えた。

同時に、わたしの顔は、笑ってた。

それはきっと、今までれ合ってきたことよりもずっとずっといけないことなのに――わたしは、”嬉しい”とじていた。

「わたしが吸鬼に……チグサさんと、一緒になれる?」

「一生……いえ、永遠にずっと一緒です。吸鬼になれば、他にもミリィを必要としてくれる仲間も居ますし、それに何より――お姉さんとも一緒に居られる」

そんな、都合のいいことがあるのかな。

ほんのすこし不安があった。

もしかしたら、チグサさんはとても悪い人で、わたしを騙してるのかもしれない、って。

でも――もしもわたしを騙していたとしても――この人になら殺されても良いって思った相手だから。

うん、別に、構わないよ。

「外を走り回れるようになって、今まで見られなかった景も沢山見られるようになるでしょうね」

「もう、いいよ。十分だから。お姉ちゃんももちろん大事だけど……チグサさんと一緒に居られるってわかっただけで、わたしの心は決まってるの」

寶石のように輝く紅瞳と向かい合いながら、わたしははっきりと宣言する。

「わたしを、吸鬼にしてください」

そう言って、今度はわたしからを重ねた。

そしてわたしから、上手くやれるかどきどきしながら、舌をチグサさんの口の中にれていく。

チグサさんもわたしの気持ちを汲んでくれて、必要以上には自分からこうとしなかった。

の中は、わたしよりし冷たくて、けれど唾の量はわたしよりずっと多い。

鬼ってこうなのかな、じゃあわたしも生まれ変わったら、もっとチグサさんのこと気持ちよくして、チグサさんの中に注ぎ込めるのかな。

そうなれたら、嬉しいな。

「ふうぅ、ちゅ……ふっ、ん、ちゅる……にゅ、む……はっ……」

きっとその時、チグサさんは手加減してくれてた。

必死に口の中をかき混ぜるわたしを慈しむように、包み込むように、ゆったりと舌を絡めてくれる。

もっと上手くやりたいなって悔しさもあったけど、されてるってじがして、そっちの幸せで頭はいっぱいになってた。

さっきの真似をして、涎をたっぷり絡めて舌を挿し込むと、チグサさんは自分の舌でそれを全部こそぎ落として、味わって、飲み込んでくれる。

これだけ全れ合っていると、がごくんと覚も越しに伝わってきて。

ああ、チグサさんの中にわたしがっていく――そう思うと、いているのはわたしの方なのに、わたしだけが気持ちよくなっちゃう。

「ごめんね……うまく、できなくて」

「そんなことありませんよ、ほら」

チグサさんはわたしの手を服の下から自分のに直にれるよう導きました。

れられたことはあっても、あまりれたことはない、チグサさんの

すべすべで、わたしの指先は震えてしまうほどぞくりとしたに包まれてしまいました。

「どきどきしてるでしょう?」

「あ……ほんとだ」

チグサさんの心臓は、わたしに負けないぐらい脈打っていて。

「気持ちよくなかったら、こんなにはなりませんよ」

噓なんかじゃ、ない。

ほんとに、わたしなんかで、気持ちよくなってくれたんだ。

それが嬉しくて……わたしの中にある好きって気持ちは、この瞬間にもっともっと大きく膨らんだ。

「それにしても、こんな所に出てくるなんて困りましたね。あとで隠しておかないと」

「何が?」

チグサさんはわたしの顔をみて苦笑いを浮かべている。

何か、変なものがついてるのかな。

すると、たぶんチグサさんの仕業なんだろうけど、棚の上に置いてあった手鏡が、黒い影に摑まれてわたしの方へと運ばれてくる。

そしてそこに映るわたしの顔を見ると――左目の下に、赤の、ハート型に悪魔の羽が生えたようなマークが刻まれていた。

「それは、ミリィがわたしのものになったっていう印なんです。そして同時に、”食べる”ための下準備が終わったという証でもあります」

やっとわたしは吸鬼になれるんだ。

その喜びを伝えようと口を開こうとすると、チグサさんはわたしの顔に浮き上がった印に指先でれました。

「んにゃあぁぁぁぁぁあああんっ!」

その瞬間、チグサさんがれた場所から、わたしの頭の中に直接響くような、強烈な快が走った。

思わずわたしは、今まで出したこともないような聲をあげてしまう。

「あらあら、ここだと脳が近いからすごいみたいですね」

「こ、こりぇ……なに……?」

「印は、それをつけた相手にられるととても気持ちいいんですよ。こんな合に」

「は、ひゃっ、ひああぁぁぁっ! ら、だめ、これぇっ、きもちいっ、気持ちよすぎてっ……わたし、あたま、おかしく、なるぅっ!」

わたしの反応がチグサさんの悪戯心に火をつけてしまったのか、彼は楽しそうに、わたしの印をクリクリと指先で弄ぶ。

わたしはをびくんびくんと震わせながら、仰け反って、たぶんチグサさんの腕に抱きしめられてなかったら、とっくにベッドに倒れ込んでたと思う。

けど、それは同時に逃げられないってことでもあって、狂いそうなほどチカチカしてゾクゾクする気持ちよさが、濁流みたいに頭のなかに流れ込んでくる。

「んあっ、ああぁぁっ、チグサ、さっ、お、ほひっ、ひぎゅううぅっ!」

「さて、それでは夢を見るように終わらせましょうか」

チグサさんが何を言っているのか、ぜんぜん頭にってこない。

でも――吐息が、首にあたるじが、微かに――

すると、じくり、と。

さらに強烈な覚――たぶん、何か鋭いものが、を突き破ってわたしの中にってきてる――それが、快に追加されてわたしを襲った。

「んく……んくっ……」

吸われてる、わたしの、大事な何かが。

「はひっ、ひいぃっ、ん、おおおぉっ……おご、あ、ぁぁっ……!」

気持ちよさと虛で、何もわからない。

わたしは栗の髪をかきしながら、與えられる膨大な覚に耐える。

けど……ああ、そっか、たぶんこれ……チグサさんが、わたしを、吸ってるんだ。

を――だから、やっと――吸鬼に、なれる。

なら何も怖がる必要なんて、無い。

れよう。

熱くて冷たい、痛くて気持ちい、チグサさんから與えられる全部を――

「んあぁぅ……あぁ、ぉ、んぅ……」

から力が抜けていく、死が近づいているような気がした。

でも、怖くはなかった。

命であるが吸い上げられるかわりに、他の何かが――たぶん吸鬼になるための何かが注ぎ込まれているから。

それは冷たかったけれど、に溫度なんて関係ない。

冷たくても、心があったかかったら、それでいいの。

チグサの気持ちが、ここに……詰まってる、から……。

――そしてわたしは、リセットされる。

意識は閉じ、まるで夢をみるようにまどろんで。

この心地よさは、きっとチグサさんが與えてくれるもの。

胎児が母親の子宮でゆらめくように、わたしは今、チグサさんの魂にゆられている。

作り変えられ――価値観が変わり――も別になって――けれどわたしはわたしのまま。

わたしは目を開く。

視界には、生まれたばかりの我が子を見つめるように、優しい顔をしたチグサさんが……ううん、”ご主人さま”が居た。

「ん、はぁ……ご主人さまぁ……わたし、ちゃんと半吸鬼デミヴァンプになれてますか?」

「安心してください。も、瞳のも、そしてあなたのも、ぜんぶ、私と同じですよ。もう、二度と離しはしません」

抱き合い、れる覚は、人間だった頃よりずっと鋭敏だった。

思わず「あはぁ」とため息をらしてしまうほど。

このままキスをしたら、印をられたら、わたしはどうなってしまうのかな。

「今宵は夜が明けるまでしてあげます。そして夜が明けたのなら――」

「明けたら?」

「邪魔者を、殺しに行きましょう」

邪魔者。

わたしと、ご主人さまと、みんなと、お姉ちゃんのを邪魔するもの。

大事なものがはっきり見えている今、わたしは迷わずにその3人を挙げた。

「お父さん、お母さん、そしてディック」

「その通り。いい子ですね、ミリィは」

「んぁ……ご主人さまぁ……」

頭をでられると、わたしのからへにゃりと力の抜けて、思わず笑ってしまいました。

この人がわたしの主さまなのだと、本能が理解してるんです。

ご主人さまは、そのまましなだれかかるわたしのを奪い、長い夜が始まりました。

◇◇◇

そして――わたしは、新しく家族になったアイ姉さまと一緒にディックをシャンデリアで潰して殺した。

そのあと、ご主人さまの計らいでお姉ちゃんの吸鬼化を見屆けて、気絶するまでご主人さまと、お姉ちゃんと、アイ姉さまとわたしでし合って。

家に帰ったのは晝頃だったかな。

そこで、お姉ちゃんだけを心配する両親を殺したの。

ご主人さまからし力を分けてもらって、影で、ばらばらにして。

お姉ちゃんがやったのはそこまでだったけど、わたしはなんとなくイライラしてて、憎たらしかったから、そのあと分割された両親のと骨を潰して回った。

最後に殘ったのは、もう人間だとはわからない何かの破片。

両親を殺したのに、びっくりするぐらい何の慨もなくて――その時、わたしは本當に、魂の底から、人間をやめたんだって実した。

わたしの家族は、人間なんかじゃないんだ。

同じ仲間である半吸鬼だけ。

わたしとお姉ちゃんは、だらけになった家を出て、世界一仲のいい姉妹みたいに手を繋いで、ニコニコ笑いながら教會に帰った。

大好きなご主人さまに、大好きなお姉ちゃん、そして他の大好きなお姉さんたちの指や舌が全を這いずり回って、気持ちよくしてくれるのを想像して――を震わせながら。

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