《異世界で吸鬼になったので”魅了”での子を墮とし、國を滅ぼします ~洗脳と吸に変えられていく乙たち~》16 する乙の無謀なる戦い
私が教會を出て城に戻ると、自室ではレイアがくつろいでいた。
合鍵を渡した覚えは無いが、彼の魔法にかかれば鍵を開けるぐらい造作もないことなのだ。
ベッドで寢転びながら足をぱたつかせている仕草を見ると、やけにく見える。
外見からして、レイアはおそらく日向さんとそう変わらない年齢なのだろうが、しかし時折、やけに大人びた表を見せることがあった。
まさか私より年上ということは無いだろうが、魔と呼ばれているようだし、果たして見た目どおりの年齢だと思っていいのか。
『やあミヤコ、戻ったんだね。お先にくつろがせてもらってるよ』
テーブルの上に座っていた二足歩行の黒貓人形、リースが立ち上がり私に言った。
レイア自も、ゆっくりとを起こすと、ベッドの上に座ったままで無言でこちらを見る。
『その表を見る限りじゃ、いい気分転換が出來たようだね。やっぱり僕のアドバイスは正しかったろう?』
偉そうに張りながら言うリース。
反論はできない……だが、私が日向さんと遭遇したのはあくまで偶然だ。
「レイアのおかげかどうかは微妙だけど、良い気分転換になったかな。明日からも散歩は続けようと思ってる」
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『それはよかった。本來、市街でのの獨り歩きは推奨すべきじゃないけど、ミヤコなら心配ないだろうからね』
「いまいち実わかないけどね、でも確かに、そこらの人には負けるじはしないかな」
『むしろ、力加減を間違えて殺さないように注意しないといけないぐらいさ。ところでミヤコ、今日は市街のどこに行ったんだい?』
聞かれると思っていた。
しかし、私はもちろん日向さんのことは話さない。
王國は戦力をしがっている。
彼が教會に居ることを知れば、もしかすると日向さんを城に連れてこようとするかもしれない。
そうなれば――彼はまた、生徒たちと再會しなければならなくなる。
彼にとって、それはあまりに殘酷な仕打ちだ、信用されるどころの話じゃない。
「今日は散歩だけかな、明日以降に行きたいお店には目星をつけてきたけど」
『お店かあ。食べ? 洋服? 雑貨?』
「食べ、かな」
洋服や雑貨にも興味はあるけど、まだそれを楽しめるほどの余裕はない。
『じゃあ大通り沿いにあるお菓子屋さんがおすすめだよ、あそこのクリームパイがシンプルだけどとても味しいんだ! サクサクで、中には香りかなクリームがたっぷり詰まってて、焼き立てなんて食べた日にはもう……!』
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「……もしかして、買ってきてしいの?」
リースとレイアが同時に首を橫に振る。
どうやら買ってきてしいらしい、明日は忘れないように頭にれておこう。
◇◇◇
翌日、レイアに紹介してもらったパイを紙袋に詰めて、私は教會を訪れた。
禮拝堂にると、その広い空間には誰もいない。
しかし、ドアが閉じる音で誰かが來たのに気づいたのか、奧の扉から修道服を纏った2人があらわれた。
1人は日向さんで、もう1人は同い年ぐらいの見知らぬ。
裏で作業でもしていたのか、2人とも服がよれており、心なしか頬も赤い。
「ごめんね、もしかして忙しかった?」
私が立ち上がり聲をかけると、日向さんは珍しく苦笑いを浮かべた。
「いえ、そんなことはありませんよ。本當に來てくれたんですね、先生」
「約束したばかりだから。ところで、そっちの子は?」
日向さんの腕にしがみつく橙の髪をしたを見ると、目があった。
そして――なぜか睨みつけられる。
嫌われるようなことしたかな、私。
「彼はエリス、この教會で――」
「私はお姉さまの最の妹です!」
日向さんが言い切るより前に、エリスと呼ばれたがぶ。
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お姉さま、って……珍しい呼び方されてるんだなあ。
それに普通、自分では最とか言わないと思うんだけど。
彼の言葉を聞いた日向さんは案の定、また苦笑いを浮かべていたけれど、軽く息を吐くと、次は慈しむような表で言った。
「まったくもう……ええ、エリスの言うとおり。彼は私がこの世界で手にれた・・・・・、最の妹なんですよ」
その言葉に、エリスは嬉しそうに頬を緩めた。
「そう……なんだ」
詳しい関係はさておき、2人が親しい間柄であることに間違いはないらしい。
「エリス、私はしばらく先生と話をしますから、奧に戻ってもらってもいいですか?」
「わかった。今日のところは、お姉さまがそう言うなら」
不満げではあるものの、それでも素直に彼は日向さんの言うことを聞き、禮拝堂の奧へと消えていった。
それを見送った日向さんは、扉が閉まったことを確認すると、長椅子に腰掛ける。
私もその隣に座り、さっそく話題を切り出した。
「昨日言ってたナナリーさんとは別なんだね」
「エリスだけじゃありません、他にも何人か一緒に暮らしてるんですよ」
「へえ……」
あの日向さんが共同生活、しかも隨分と上手くやってるようで。
こう言うと失禮かもしれないけど、すごく、意外だった。
いくらいじめから解放されたとは言え、人間そんなすぐに変われるものだとは思ってなかったから。
「じゃあ多めに買ってきて正解だったかな。これ、町で味しいって噂のお菓子なの」
「いい匂いがすると思ってましたが、お土産だったんですね。ならありがたく頂きます、みんな甘いものは好きなので」
私は彼に紙袋を手渡す。
でご機嫌取りしてるみたいでちょっと嫌だけど、喜んでくれてるみたいだし、功かな。
そして私たちは、他のない話を始める。
失った時間と離れた距離を埋めるために。
もちろん、変な間が空いたり、私が言葉選びを間違って微妙な空気になることはあったけど、それは自業自得だから。
最初からうまくいくとは思ってない。
しずつ、また昔みたいな私たちに戻れるように、地道にやっていくしかない。
私にできる償いは、それだけだから。
◆◆◆
都が毎日教會を訪れるようになってから、ずっとエリスは不機嫌だった。
千草が取られるから、というわけではない。
元より彼はみんなものだ、特別エリスを贔屓している節はあるが、基本的に仲間全てをしている。
その大きなで、包み込むように支配し、快楽を與え、幸福を分け與えてくれる。
ある意味で絶対的な存在だったのだ、都が現れるまでは。
時折見せる憂いの表の理由ぐらいは、エリスにだってわかる。
あれは千草が、人間だった頃に置き忘れてきた想い出のせいだ。
エリスは、都と千草がい頃からの付き合いだったのだ、と千草自の口から聞いた。
その言葉で確信する。
おそらくそれが――千草の初だったのだろう、と。
そして初はまだ終わっていない。
再會によって再び火が點き、千草を人間だった頃の想い出に引きずり戻そうとしている。
それゆえの、憂い。人間じみた表。
エリスを含め、教會に住む全ての半吸鬼デミヴァンプに人間をやめさせたのは他でもない千草だというのに。
エリスは憤慨した。
千草にではない、それでも、自らのやっていることの意味を知りながらも逢瀬を繰り返す、都に対し。
いっそ千草が、都をあっさりと魅了して眷屬に変えたのなら、ここまで苛立ちもしなかっただろう。
だが彼は、都の手にれることすらためらった。
最初に抱きしめたきり、的な接を持とうとせず、そしてようやく何回目かの會時に自らの意志で手を握ったかと思うと――後悔しながらすぐに手を離した。
その景を覗いていたエリスは、今までじたことのない怒りを覚えたのだ。
嫉妬でもあったし、神を汚された、あるいは神を冒涜された、宗教めいた憤りでもあった。
とにかく、そのはもはやエリスの許容量を超えていたのだ。
「お姉さま、ごめんね。私、今日だけは言うことを聞かない悪い子になるから」
今宵も、千草はエリスのことをしてくれた。
千草相手なら、のどこをったって悅ぶようなエリスなのに、それでも全全霊を込めてを注いでくれる。
そんな彼を裏切るようでが痛むが、もはやそれ以外に選択肢は殘されていなかったのだ。
隣で安らかに眠る千草の額にキスをして、エリスは部屋を――そして教會を飛び出した。
タンッ!
外に出たエリスは軽やかに地面を蹴ると、近くの民家の屋の上に飛び乗った。
そして再び飛び跳ね、隣の屋へ、さらに隣の屋へ――と天より降り注ぐが淡く照らす夜の町を、疾駆してゆく。
屋上の上からだと、町の景がよく見える。
立ち並ぶ民家の向こう、遠くには、かつてエリスが暮らし、そして千草が連れ出してくれた廃棄街があった。
さらに別の向きには貴族たちが暮らす屋敷が立ち並ぶ住宅街、そして中央には王族の住む巨大な城が鎮座している。
エリスの目指す先は、その城だった。
城の周辺は堀に囲まれており、この時間には跳ね橋は上がっている。
もっとも、半吸鬼の能力をもってすれば、川を飛び橫斷することは容易い。
敷地への侵へ功したエリスは城の側方へ周り、上を見上げる。
そこには窓があった。
閉じているが、爪で鍵ごと切斷すれば問題はない。
しかしその時、不運にも見回りの兵があらわれた。
先手必勝――聲を上げられる前に殺してしまえば問題はない、とエリスは低い姿勢で素早く兵に接近する。
兵が彼の存在に気づいたのは、すでにエリスの一歩で首を刈ることのできる距離にまで近づいたタイミングである。
慌てて槍を構え突き出す兵だったが、エリスは飛び上がり宙返りしながらそれを回避。
兵の背後に著地すると、速やかに爪を振るい、的確に首を切り落とした。
ドサッ、とあっけなく兵は倒れる。
さほど音は出なかった、これならば死が見つかるまで騒ぎになることは無いだろう。
エリスは念のため兵の死を堀に突き落とすと、再び窓を見上げ――し助走をつけて、腰をかがめ、大きく跳躍した。
そして壁に爪を付きたてを固定、空いた方の手で窓の鍵を爪で切斷し、まんまと城へと侵する。
足音を殺しながら降り立つと、そこは城の2階にある廊下だった。
さて、ここからが問題だ。
実は、エリスは都の部屋の場所を知らない、持っているのは城に住んでいるということと、他の生徒と離れた場所に部屋があるという事実だけだ。
元々彼は、人間だったころからあまり後先を考えて行するタイプではなかった。
その日その日を必死に生きる廃棄街の人間に、後先を考えろという方が無茶なのだ。
それをフォローしてきたのが千草だったのだが、あいにく、今の彼は1人である。
を隠し、足音を殺し、兵に見つからないよう慎重にきながら、エリスは都の部屋を探した。
そんな彼の存在に、多くの兵は気づいていなかったが――ただ1人だけ、すでに知している人間が居た。
レイア・ハーシグ、城に住まう魔である。
そもそもなぜ、いくら深夜とは言え、王族を守るための城にエリスに対抗出來ない程度の兵しか配備されていないのか。
その答えは、彼の存在であった。
侵者が現れてもすぐ対処できるよう、常に城の全域を魔法で監視しているのだ。
『吸鬼だ。カミラは騎士が排除したと聞いていたけど、どうやら仲間が殘っていたようだね。つまり、ミヤコのはアレ・・の仕業だったのか』
水晶に映る、城を徘徊するエリスの姿を見ながら、黒貓人形が言った。
そして都の部屋にしずつ近づきつつあるエリスを見て、レイアとリーナが立ち上がった。
部屋を出て、向かう先はもちろん、エリスの元に、である。
場所の目星はつけていた。
都の部屋がある一階の離れのような場所、そこに向かう廊下を差し掛かる前に、広場のような空間があるのだ。
かつて置がわりに使われていた場所で、今でもその名殘が殘っていた。
レイアは薄暗いその場所でエリスを待ち、ほどなくして対峙する。
「の子……と、貓の人形?」
『隨分と好き勝手に僕らの庭を走り回ってくれたみたいだね、吸鬼』
「お互い様じゃん、私は私のパーソナルスペースを侵す不埒な人間を殺しに來ただけだから」
『ミヤコを呪詛で侵しておいて良く言うよ』
リーナの言葉は怒気を孕んでいる。
しかしエリスも同様に、都を守る彼を強く睨みつけていた。
「道をゆずるつもりは無いんでしょ?」
『お互いにね』
「だったらやることはひとつッ!」
エリスは鋭い爪をばし、臨戦態勢にった。
そんな彼を見て、レイアとリーナは同時に笑みを浮かべる。
『理解できないなあ、あのカミラですら、僕らより弱い騎士程度に負けて殺されてしまった。だというのに、どうして君のような影にも溶け込めない三流吸鬼が、僕らに勝負を挑もとう思えるんだい?』
「そのカミラってやつが誰かは知らないけど、私にはミヤコを殺さないと行けない理由があんの!」
『そっか、そうだったね。三流だからこそ・・・・・・・、力量差もわからないのか。なら死んで思い知りな、他人に寄生することでしか生きられない吸鬼が!』
もはや會話は立しない。
レイアの口元がかすかにくと、手のひらにが浮かぶ。
それを見たエリスが地面を蹴り、素早く彼に接近する。
『ミヤコは――お前なんかに渡さない!』
力と力がぶつかり合う。
衝撃音が轟き、深夜の靜まり返った城を揺らした。
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