場外では兵の死が、城では倒れているレイアが発見された――そんな報せを私がけたのは、翌朝、目を覚ましたあとのことだった。

昨日は々と考え事をしていたせいかなかなか寢付けず、まだは重いが、そんなことを言ってる場合ではない。

私はすぐさまレイアが休んでいる部屋に向かい、そして思っていたより元気そうな彼の姿を見て安堵した。

「良かった、レイアが無事で」

「ミヤコ……」

顔は良いし、外傷もない。

けれどその割には表に力が無く、揺れる瞳で私を不安そうに見ていた。

と、いうか――

「あれ、レイアが……喋ってる！？」

私の指摘に、レイアは恥ずかしそうに口元を布団で隠した。

彼の聲を聞いたのは、ひょっとすると初めてかもしれない。

もしかして、誰かに襲われてリースを破壊されたんじゃ――と思ったんだけど、部屋のテーブルの上には黒貓人形が置いてある。

どういう心境の変化なんだろう。

「チグサ・ヒナタに……會ったよ」

「な……じゃあ、もしかしてレイアを襲ったのって日向さんなの？　でも、どうして！？」

「昨日言った通り、ミヤコは……魅了の呪いを、けてたから。その吸鬼が、チグサ、だったんだと……思う」

日向さんが吸鬼であることは、昨日、レイアに魅了に関する説明をけた時點で察しがついていた。

けどそれは、彼が城に侵した理由じゃない。

「もう一人、仲間が居たの。エリスっていう吸鬼。たぶんそいつは……ミヤコの、命を狙ってて。そいつを、倒そうとしたら現れて」

「仲間を助けに來たってこと？」

確かエリスさんって、日向さんのことを”お姉さま”って呼んでた子だったはず。

その人が、私を狙ってたっていうのは――つまり、嫉妬だったのかな。

日向さんはただの友達だって言ってたけど、私にはあの距離がただの友達のものだとは思えなかった。

だからこそ、わざわざ城に侵してまで助けに來たってことじゃないかな。

「うん……たぶん。それで結局、私は全然敵わなかった。チグサはすごく、強くて。他の吸鬼とは、比べものに……ならなくて。やろうと思えば、ミヤコだって……どうにか、出來たはずなのに。でも、無事だったってことは……助けに來ただけじゃなくて」

レイアはその結論を言葉にするのをためらった。

でも私には十分伝わっている。

止めに來たんだ、私を殺そうとするエリスさんを。

「チグサから、伝言も……頼まれたの」

「伝言って、私に？」

レイアは無言で頷く。

それはおそらく、彼にとって屈辱的なことだったはずだ。

なぜならレイアは――吸鬼を強く憎んでいる。

彼の故郷は、家族や親友ごと、吸鬼に滅ぼされているからだ。

それでも、私へ伝えるべき言葉だからか、たっぷりと間を置いて、葛藤を経てから、はっきりとした口調で日向さんからの伝言を伝えた。

「ごめんなさい。今までありがとう、みゃーねえ」

その言葉を聞いた瞬間――雪解け水が溢れるように、私のに、懐かしいが去來した。

忘れていた、罪悪と共に封じていた気持ちが、一気に戻ってきたのだ。

「チグサは、別れの言葉だって言ってたよ。だから、もう――ミヤコはあいつに會わなくていいの」

レイアの震える聲には、彼自の願が幾分か含まれているように思えた。

もう會わないでしい。

いや――本來なら、日向さんが吸鬼だと明らかになった時點で、私は彼に會うべきではないのだ。

たとえそれが、三度彼を裏切ることになったとしても。

「ミヤコが會おうとしなければ……あいつは、たぶん、會いに來ないよ」

「うん、私もそう思う」

「だから……ねえ、ミヤコ。お願いだから……」

レイアは泣きそうなほど弱々しい聲で言った。

「そんな顔、しないでよ。まるでチグサに會いたがってるみたいだよ？」

「……」

「私とミヤコは、友達だよね？　私より、吸鬼を選んだり……しないよ、ね？」

「……」

「ねえ、ミヤコ……黙ってないで、”うん”って言ってよぉ！　あいつら、吸鬼だよ？　人間じゃないんだよ？　人を殺すの、全部殺すの、だから、だからっ！」

「……ごめんね、レイア」

私がそう言うと、今まで絶えず私に語りかけていたレイアは、ぴたりと喋るのを止めた。

目を見開き、表に絶を満たしながら、ただただ私を見つめるだけ。

「確かに、吸鬼は信用できないよね。レイアの話を聞いて十分理解してる、人間を殺す危険な生きだってことも」

「だったらぁ！」

「でも、ね。それ以上に――私は、日向さんの……ううん、ちーちゃんのそばに居たいの。例え人間じゃ無くなったとしても、それが私にできる唯一の罪滅ぼしで、そして私自のみでもあるから」

「わかんない、全然わかんないよぉ！」

「理屈じゃ説明はできないかな、それが”好き”って気持ちだから」

それを自覚し、覚悟した今、もはや私に恐れるものは何も無かった。

これぐらいの気持ちが、先生と生徒だった頃にあれば、もっと早くにちーちゃんのことを救い出せたかもしれない。

あのクラスから彼の手を引いて連れ出して、私も校長に辭表を突きつけて、2人で暮らそうって。

きっと大変だけど、それでも幸せで、吸鬼になんてならなくても、私は私の力でちーちゃんに笑顔を取り戻せたかもしれない。

後の祭りだ、何を言ったってもう遅い。

今の私にできることは、もう――私の方から無理矢理にでも、あの子に寄り添うことだけだ。

「じゃあね、レイア。一緒に過ごせた時間、すごく楽しかったよ」

あまり長居しすぎても、それはそれで殘酷だ。

私はあっさり彼の橫たわるベッドから離れると、部屋から出ようとした。

「待ってよぉ、ミヤコ。わかった、私……頑張るから、今よりもっと、ミヤコに好きになってもらえるように頑張るからぁっ！」

ドアに手をかける。

「わ、わかった、顔も変えるよ？　だって、聲だって、きっと魔法ならできるもん！　私が、チグサになるから、ねえ、ねえミヤコぉっ！」

そのまま開き、部屋の外に出て――ぱたんと閉める。

「やだぁっ、やだあぁぁぁっ！　ミヤコ、お願いだから行かないでっ！　もう私から、これ以上、大事なを奪わないでよおぉぉおおおっ！」

部屋の外にいても、レイアの悲痛なび聲は聞こえてくる。

私は殘酷だ。

そんなこと、ちーちゃんにしたことを考えればとっくにわかりきったことだけども、改めて思う。

けれども――だからって、私の気持ちがレイアに傾くことはない。

ただただちーちゃんだけのことを思い、荷も持たずに、私は城を出た。

◆◆◆

「もう何も言わない、言える立場じゃないから。でもやっぱり……自分でもめんどくさいだって思うけど、嫉妬はしちゃうかな」

そう言って、エリスは禮拝堂から姿を消しました。

私は長椅子に座り――そして今日も、影先生が來るのを待っています。

昨晩、レイアに別れの言葉を伝えたばかりだというのに。

人間のというのは厄介なものです、未練がましく、往生際が悪い。

ですが、今日が終われば、本気で諦めるつもりでした。

しかし、そういう時に限って、決意というのは脆くも裏切られるもので。

じっと神像を見上げていた私の耳に、ギィ、という扉が開く音が聞こえたのです。

私のは期待に高鳴ります。

「ちーちゃん」

そんな懐かしい呼び方で私に語りかける彼の聲を聞いて、さらに心音がうるさくなるのがわかります。

私はに手を當てて、立ち上がり、振り返りました。

「みゃー姉」

自然と甘えるような聲が出てしまいます。

それを聞いたみゃー姉は嬉しそうに頬を緩めると、こちら近づき――自らの意志で、私を抱きしめたのです。

れ合った部分から、魔力が流れ込んでいきます。

魅了されている、そしてそれをみゃー姉は理解している。

理解した上で――私を、抱きしめた。

それが意味する所を、理解できない私ではありません。

「本當にいいんですか、みゃー姉はそれで」

「約束したじゃない」

「でも……取り返しは、つきませんよ？」

「知ってる。取り返しをつかせたくないから、私はここに來たの」

それなら、私も。

「部屋に、行きましょうか。そっちの方が、落ち著いてれ合えるでしょうから」

「ん……なんか変な気分、ちーちゃんとふたりきりなんて今まで通りなのに、こんなにドキドキするなんて」

「當たり前ですよ。これからみゃー姉と私は、いけないことをするんですから」

みゃー姉にそう笑いかけながら言うと、珍しく彼はたじろぎ、頬を赤くしながら目をそらしました。

「ちーちゃん、し見ない間に大人になったんだね」

「そうかもしれませんね、年上のみゃー姉にリードされない程度には」

「……お手らかにお願いします」

「善処します」

そして私たちは、誰の邪魔もらない、ふたりきりの部屋へとっていったのでした。

そこで何が行われるかなど、あえて言う必要も無いでしょう。

◇◇◇

私とみゃー姉はベッドの上に座ると、お互いの服に手をばしました。

「こ、これは……普通のこと、なの？」

私の修道服をがせながら、みゃー姉は顔を真っ赤にしています。

普通かと言われれば、何が普通なのか私にはよくわかりません。

今までも特に、服をがせるという行為にこだわった覚えはありませんからね。

「普通じゃないのかもしれません」

「いきなりそんなことやらされちゃうの！？」

「私は私がやりたいことをしているだけですから。それともみゃー姉は、私の服をがせたくはないですか？」

「いや……そういうわけじゃないし、がせるのは正直、ちょっと楽しいけど」

ならば何も問題は無いはずです。

そのまま私はみゃー姉にを任せ、修道服をぎ、下著姿になりました。

同じく私も、おそらく城で配給されたであろう制服らしきローブをがせ、お互いにを曬します。

私はみゃー姉の健康的なを見て思わず吐息をらすと、おへそのすぐそこに手をばしましました。

「ひゃんっ！？」

張のせいか敏になっているらしく、指先が當たるだけで彼はそんな聲をあげます。

本當に、誰にもれさせたことのないなのでしょう。

それが今から全て私のものになると思うと、喜びからゾクゾクしてしまいます。

「待ってちーちゃん、るなら前もって言って……ひうぅっ」

「たくさんるのに、いちいち言う暇なんてあるわけないじゃないですか」

「うぁ、顔……ちかっ……」

顔を寄せながら言うと、みゃー姉の顔はさらに真っ赤になりました。

まだれていないのに、その熱がでじられるほどです。

私がそのままを近づけると、みゃー姉は「待って」と言いながらも観念したのか、強く目を瞑りました。

まずはれるだけのキスを。

「っ……あ……ちーちゃんと、キス、しちゃった」

らかながれると、みゃー姉は油斷したのか薄っすらと目を開きながら言いました。

私は続けて、今度は強めにを押し付けます。

もちろん、開いた口から舌を挿し込むのも忘れずに。

「んっ、んんっ！？」

戸うみゃー姉はとても可らしい。

見ていると、どうしてもいじわるをしたくなってしまいます。

舌先でみゃー姉の舌裏をなぞりながら、その舌を絡め取っていくと――もっと混する姿が見られると思ったのです、が。

彼は思ったよりも早く適応し、むしろ反撃しようと自ら攻めてきたのです。

年上のプライドというやつなのかもしれません。

とは言え、慣れない行為でいきなり優位に立てるわけもなく、そのきはどこかぎこちないものでした。

しかし必死なみゃー姉もそれはそれで可いので、私はあえてから力を抜き、全てを任せることにします。

「ん、んふっ……ふうぅんっ……」

みゃー姉はぐいぐいとこちらを押し倒しながら、必死になってを押し付けてきます。

舌のきは拙く、がむしゃらにこちらの口の中をかき混ぜているだけです。

一見してリードしているような気分にさせながら、私は適時みゃー姉の舌をし、ぴくりと震える彼のを楽しんでいました。

「はちゅ……んっ、く、ぁ……れる……ぷ、ちゅぅ……っ」

必死なのはいいのですが、キスに夢中になるあまり、どうやら呼吸を忘れているようで。

みゃー姉の顔は次第に苦しそうな表に変わっていきます。

そして耐えきれなくなったのか、「ぷはぁっ！」と盛大に顔を離すと、肩で息を始めました。

その様を見ていると、思わずニヤニヤしてしまいます。

「ちーちゃんなんで笑ってるの？　リードしてるのは私の方なんだからねっ」

「そういう所が微笑ましいなと思いまして」

「へっ？」

私は馬乗りになっているみゃー姉の首に腕を回すと、引き寄せ、強引にを奪いました。

上になっていればリードしている、そんな単純な思考で事を判斷する彼に、現実を教えてあげようと思ったのです。

「ふもっ、もごっ……お、はふ……っ、ひ、ちゅ……ぷちゅ、んくうぅ……っ！」

とは言えキスだけで力を使い果たされても困りますから、私は丁寧に丁寧にみゃー姉の舌をしました。

ただ舌だけでは飽きてしまいますから、下を舐めてみたり、相手の舌をで挾んで舐めしゃぶってみたりと、んなパターンを試しながら彼の様子を見ます。

人によって好みは違うものですから。

しかし、みゃー姉の場合は、どこをっても反応が変わらないと言うか――とにかく、私であればどこをられても嬉しいようで。

試しに舌の付けあたりまで深めにしても、「んぐ、うぅ……」とし苦しそうな聲を出しながらも、艶かしくをくねらせました。

あまりの気持ちよさにから力が抜けてしまったのか、気づけばみゃー姉のは私の上に乗っかっていました。

ですが今は、その重みすら心地よい。

もっとそのを深くじたいと思った私は、太ももから部にかけて指を這わせました。

「んっ……」

するとみゃー姉のは、まるで私のにすりつけるようにきます。

そのきはまるで、私にもっとってほしいとねだるようで。

私がみゃー姉にれる行為には、快と、魅了の魔法という2つの意味があります。

つまり彼は、自ら、私のために人間をやめてしまいたいと願っているのです。

興しないわけがありません。

「んふぅー……ふ、んぐっ、ちゅ、ぁ、ん……ふあっ……」

みゃー姉は息も絶え絶え、と言った様子です。

やはり人間相手だと、他の子たちと同じようにとは行きませんね。

さすがに可哀想なので解放すると、彼は肩を上下させながら、私を半目で睨みつけました。

「はぁ……ううぅ、ものすごい……敗北」

「まだまだですねえ、おとなしく私にリードされてください」

「悔しいけど、そうするしかないみたい」

攻守代――2人でころんと転がって、今度は私が上に、みゃー姉が下になります。

雨のようにに繰り返しキスを降らし、そのキスは顎から首筋へとしずつ下がっていきました。

口づけが鎖骨から元まで降りてくると、がほんのりとり気を帯びてきました。

「背中、し上げてもらってもいいですか？」

「……うん」

私はみゃー姉の背中に腕を回すと、ブラのフックを外しました。

そのままをわにしようと手をかけると――ぼそりと、みゃー姉が呟きます。

「今更だけど……私、本當にしちゃうんだね。小さい頃から知ってる、妹みたいなちーちゃんと」

「信じられない、というのなら、異世界という荒唐無稽なこの場所もそうですし、吸鬼になって生きながらえた自分自もです。今更みゃー姉とし合った所でどうということはありません」

「ちーちゃんは狀況に適応しすぎなの。でも……そうだね、深く考えたって仕方ないか。今は、ちーちゃんとこういう関係になれたことを、素直に喜ぶことにする」

張していたみゃー姉のからようやく力が抜ける。

そして私は彼の素を隠していた布を全て取り払うと、そこに口付け――ぐ大切な人の聲を聞きながら、を火照らせるのだった。

◇◇◇

みゃー姉の首に印が現れたのは、疲れ果て一眠りしたあとの、翌日の朝のことでした。

どうやら彼は、私より一足先に目をさましていて、かれこれ30分ほど寢顔を観察していたようです。

悪趣味な。

「ん、ああぁぁぁっ！　な、なに、これぇっ……！」

仕返しに、と首にれるとみゃー姉はを仰け反らせながら悶ます。

私はそんな彼の耳に口を寄せ、印について語りました。

「吸鬼になる準備が済んだ証です」

みゃー姉のがぴくんと震えます。

「つ、つまり……魅了の魔法にかかって、私は、ちーちゃんの虜になったってことだよね？」

「そうなりますね」

「……あんまり変わらないんだけど」

平然と言い放つみゃー姉を前に、私の溫は一気に上がっていきます。

よくもまあ、あっさりと言えたものです。

「最初から虜だったということでしょう」

「あ、そっか。えへへ、先生失格だね」

「そんなのは今更です、まったく。じゃあ、もう噛みますからね」

「うん。私を、ちーちゃんと同じにしてください」

なんだかんだで、変わらないんですね。

みゃー姉は昔、私と一緒に遊んでいた頃と同じような笑顔を浮かべて、首に噛み付かれるのを待っています。

そして私は、今度こそ完全に人間を捨て去るのです。

あちら側においてきた最後の未練――みゃー姉を、こちら側へと引きずり込むことで。

熱を持ったみゃー姉の首に口づけをします。

「ぁ……」

小さなぎ。

その聲からじ取れるのは、躊躇いではなく、悅楽。

心の底から、私と同じ存在になれることをけれている証拠。

確信した私は、ゆっくりとに歯を付きたて――ぞぶりと、食い込ませていきます。

ぷつりというを裂く。

「ぅ、あ……」

みゃー姉のから苦しそうな聲がれました。

大丈夫です、すぐに気持ちよくなりますから。

さらに牙を食い込ませ、に開いたを広げ、を貫通していきます。

じわりと溢れ出すは――やはり、処に比べると若干の臭みがありました。

しかし問題ありません。

むしろ、その汚らわしいをみゃー姉のから吸い上げられることを誇りに思います。

もう彼のには、あの時――教室であまりに醜くおぞましい姿を見せつけてきたあの男どもの伝子は殘っていない――

代わりに注ぎ込むのは、吸鬼の魂、私の一部。

「あ……ああぁ、わかる……わかるよぉ、ちーちゃんが、ってくる……のぉっ……」

伝わっている、嬉しい。

もっと、もっともっと注ぎ込まないと、もっとじてもらわないと。

自分のの中に流れ込んでくる、私のを。

「んあああぁぁっ！　あ、はぁっ……ちーちゃん、ちーちゃぁん……っ、一緒、だよ……ずっと……」

うん、うん、一緒。今度こそ、ずっと。

絶対に離しませんから、吸鬼の命は盡きません、だから永遠に。

約束はもう……何があっても、破られることは、無い。

「ぁ……あぁ……は……」

みゃー姉の反応が次第に薄れていき、そしてついに、ぐったりとしたままかなくなってしまいます。

は白く、まるで姉妹のように私とれた時のが似ていました。

匂いも――に顔を埋めて思い切り吸い込むと、昨日し合ったときよりももっと濃なみゃー姉の匂いでいっぱいになるんです。

「ぅ……うぅ……」

目覚めの時。

ゆっくりと上ってゆくまぶたを私はじっと見つめていました。

その奧から現れる、ルビーのそれを心待ちにして。

「私……は……」

瞳が、こちらを見ています。

目の前に居る誰かが私なのだと理解すると、私とおそろいの赤い瞳は潤み、みゃー姉は私の頬に手をばしました。

今度こそ本當にリードしてくれそうな、大人っぽい表を浮かべながら。

「吸鬼に、なれた？」

「ええ、私と同じ、これでみゃー姉は、半吸鬼デミヴァンプです」

「デミヴァンプ……ふふ、ちーちゃんと、一緒」

私とみゃー姉は、そのままを重ね、押し付け合うようにを食みました。

さっきよりも冷たい溫が、私の支配満たしていきます。

「それではみゃー姉、行きましょうか」

「どこに？」

「隣の部屋ですよ、他の仲間が待っていますから。今日からは、みゃー姉も一員です」

「それって、もしかして……」

「はい、今日はみゃー姉の歓迎會です」

自分がどうなってしまうのか想像したみゃー姉は、自分の頬に両手を當てると――嬉しそうに、恍惚とした笑みを浮かべました。

そんな、すっかり染まった彼を見て、私はもう戻れないのだと、改めて確信するのでした。