気づけばキシリーはベッドの上で眠っていた。

目を覚ますと、すでに窓から見える景は茜に染まっている。

さっきまで午前中だったはずなのに――晝寢にしては長すぎたか。

「おはようございます、キシリー」

隣にはラライラライが添い寢していた。

キシリーの小さなは彼の腕の中にすっぽりと収まり、そのぬくもりに全を包まれている。

「（あれ……自分の部屋に戻ったはずなのに、なんでラライラライが。いや……違う、ここは……彼の、部屋。私は、そっか、そうだった。リリィと別れたあと、この部屋に來て……）」

「あら、まだ寢ぼけているのかしら。あなたがどうしてもと言うから、手も出さずに添い寢していたというのに」

「……ごめん、ラライラライ」

「いいのよ、とても可い寢顔を見ることが出來たのですから」

寢顔はばっちり観察されていたらしい。

”可い”と言われたことと相まって、無に恥ずかしくなって、キシリーは彼のに顔を埋めた。

すると頭をぎゅっと抱きしめられ、暴力的とも言えるほどの満なの塊が顔を包囲する。

「むぐ……」

「ふふふ、素直なキシリーは本當に可らしいですわ。それに、あなただってこちらの方がずっと幸せでしょう？」

「……？」

ラライラライが何を言っているのかわからない。

キシリーが彼の元から上目遣いで顔を見ると、ラライラライは目を細め、うっとりとした表で両腕の力を緩めた。

くちゃ。

脳で音がする。

キシリーは、彼がキスを求めているのだと本能的に察し、顔を近づけた。

すると、薔薇の花弁のように赤い舌が口の中に挿される。

……覚はない、味も。

ただ、キスは求行であるという事は知っていたから、神的な面で興が高まり、溫は上昇している。

それにラライラライは気持ちよさそうだ。

だから、キシリーは自分が何もじていなかったとしても、満足だった。

口が離れる。

唾が糸を引き、2人を繋ぐ。

それはキシリーとラライラライが合していた証。

そう思うと、ただのがやけにエロティックに思えた。

「これでも、何もじていないと言うのでしょう？　とても悲しいことですわ」

「別に……私は、ラライラライが気持ちよくなってくれればそれでいい」

「獻的ですのね。ああ、だからこそ嘆くのです。あなたほど自己犠牲的な人間が、なぜ幸せになれないのか、と」

ラライラライが憐れみ、頭をでる。

くちゅり。

すると、再びキシリーの脳で粘著質な音が鳴り、彼は――正気に戻った。

「っ……！？　な、なに……なんで、私はここに……それに、今の……あんなことっ……」

口に殘る、ラライラライの。

キシリーは口を手で抑え、何度も首を橫に振った。

「ママと話し合ったのです、どうするべきか、と。今のままではうまく魅了も出來ませんし、かと言って不癥を放置しておくのはあまりに可哀想ですから」

「何を……するつもりなの？」

「あなたのを、わたくし好みに作り変えます」

ニイィ、とラライラライの口角が釣り上がる。

それは、狂気だ。斷じてなどではない。

キシリーは彼のを突き飛ばすと、のバネだけでベッドから飛び降り、床に著地した。

「逃げられませんよ、今のあなたでは」

舌を噛んで死ぬのがベストだが、やはり思うようにはかない。

まずはこの部屋からの出を試みる。

ラライラライは悠長に、ゆっくりとしたきでベッドを降りた。

その間に、キシリーはドアに近づく。

そしてドアノブを回そうとするが――くちゅ、という音がしたかと思うと、手から力が抜けてしまった。

「（また、あれだ。私のは、もう支配されてるの？）」

実力差云々の問題ではない、自分の意思と関係なく勝手にがくのだ。

もはや死を選ぶことも出來ない。

それに今――ほら、目の前で微笑むラライラライを見ていると、脳がこう囁く。

”しい”、”綺麗”、”素敵”、”してる”、”あの人のに飛び込みたい”、”私も一緒になりたい”。

気づけば、は勝手に彼に向かって歩きはじめていた。

抗う気持ちも湧いてこない。

ふらふらと、まるでアンデッドのように前進すると、ぽふっとそのままに飛び込んだ。

そんなキシリーの頬にラライラライは両手でれると、自分の顔の方を向かせた。

またキスをするつもりらしい。

求められている、そう思うとキシリーはとにかく嬉しくて、どこまでも舞い上がって、頬を染めて、自ら口を開いて舌を見せつけた。

ラライラライも同じように舌を出し、彼の舌とぴたりとくっつける。

やがて2人の舌はゆっくりとき始め、獨立した生きのように絡みついた。

「んご……ふっ……！？」

さらにラライラライは顔を傾け、口を開き、食らいつくように深く口を口を重ねる。

そして、キシリーのに”影”を注ぎ込んだ。

「ごっ……んぐっ、くっ……んふうぅっ、ぐ……っ、んくっ……んうぅ……っ」

完全に脳をられているキシリーは、注ぎ込まれるそれを嬉々としてけれた。

口いっぱいのそれを自ら嚥下する。

に侵したそれは、胃袋まで到達すると、怪しく蠢き、じわじわと全へと染み込んでいった。

「んっく……ぷはぁっ……へっ……へえぇ……んへぇ……っ」

口を離しても、キシリーは舌をだらんと出したままで、瞳を潤ませながらしい人を見つめている。

「今の、何をしたかわかりますか？」

「頭の中、みたいなの……が、全に……回って」

「その通りです。脳を作り変えるのは昨晩やりましたから、今日はを作り変えて、2人一緒に気持ちよくなれるようにしようかと思いまして」

2人は言葉をわしながらベッドに座り、そしてキシリーだけが橫になった。

もはや逃げようという気は全く殘っていない。

「細く、薄く、腕にすっぽりと収まってしまうというのも魅力的ですが、やはりらしくが付いている方がわたくしは好みですから」

ラライラライはそう言うと、キシリーの素足に手を當てた。

すると足の指先からふくらはぎにかけて、側から押し出すように何かが膨らみだす。

キシリーは、ゾクゾクとした甘く不可思議な覚に、布団をきゅっと握りながら、聲を出すのを耐えているようだ。

そうこうしている間にも、足の変形は進んでいく。

しずつ、に負擔をかけすぎないようにふくらはぎは膨らんでいき、折れそうなほどか細かった足は、らしく艶めかしい、のある部位へと変わってゆく。

それ以外の部分の変形はまだ終わっていないせいか、太ももと比べるとやけにアンバランスだった。

「さあ、どんな合でしょうか」

ラライラライがふくらはぎに手をばし、指先をに沈ませると――

「ひゃうんっ！？」

キシリーは可らしい聲で鳴いた。

「いまのは……もしかして」

「そう、覚をね、作り変えて繋ぎ変えて呼び起こしたのです。とても気持ちよかったでしょう？」

その問いかけに、キシリーは恥ずかしそうにうつむきながらも、無言で頷く。

「それなら、今度はもうし上に行きましょうか」

ラライラライの指先が、足のラインをなぞるようにつぅ――と登っていき、布越しの太ももにれた。

どくん。

すると、変形が始まる。

先程よりも脳に近いからか、ゾクゾクとした覚はさらに大きく、はっきりとしていた。

「ぁ……ぅ」

キシリーもその覚に耐えきれず、思わず聲がれる。

それでも我慢する彼の姿を、ラライラライは心底おしそうに見つめていた。

変形は進行する。

太ももは側から膨らんでいき、むっちりとした、れがいのあるかなへと変貌する。

「んふふふ、とても魅力的なになっていますよ、キシリー」

「ふあぁっ！　あっ、あぅ……んぁっ……」

ラライラライの手が太ももをみしだくと、キシリーから甘い聲がれた。

生まれて初めての”他者かられられる覚”は、今のラライラライを心の底からしている彼には、々刺激が強すぎたようだ。

ぐちゅ。

意識を切り替える。

本音のリアクション見たさに、ラライラライは意地悪く、彼を正気に戻す。

そのまま続けて、太ももをみ続けた。

「ひぅっ、ううぅ……いや、だ……私の、がぁっ……」

「どうしたのですかキシリー、さっきまで気持ちよさそうにいでいたではないですか」

「違うっ、違うぅ、今のは……あれはぁっ……！」

ぐちゃ。

再び脳のスイッチが切り替わり、キシリーの目はとろんとけた。

「んぁっ、あんっ……ラライラライ、とっても気持ちいい……もっと、もっとってしいっ」

「ふふふふっ」

ラライラライの指先は、今度は腹部に當てられた。

きゅっと締まり、筋が浮き上がっていた腹は、が摘めそうなしだらしない形狀へと。

枝のように細かった腕は、思わずみたくなってしまうような、の揺れる有様へと。

そして――

「あっ、あぁっ、あ、あひっ……ひううぅうっ……！」

「あら、心臓に近いから負擔が大きいのかしら。でもあとしよ、頑張って、キシリー！」

「んぁっ、ああぁぁぁぁあぁああああっ！」

慎ましやかだったは、いにはあまりに不釣り合いな、満な膨らみへと。

それぞれが、ラライラライの思うがままに改造されていった。

そして、全的に丸みを帯びた彼のを見てを堪えきれなくなったラライラライは、覆いかぶさるようにキシリーのを抱きしめた。

満なとがれ合い、ひしゃげる。

太ももとふくらはぎのとが、ふにゅりと絡み合う。

先程までのか細いの抱き心地とは明らかに違う、理想的な、いつまでも抱いていたがそこにはあった。

キシリーもラライラライの背中に腕を回し、変わってしまった自分のを誇るように、相手に押し付ける。

「へっ、えへへっ、ん、んへっ、ひぅっ……あ、はぁっ……すごいっ、って……ん、こんなに、れ合うだけで……気持ちいい、ものだったんだぁ……っ」

「そうですよ、これを今まで知らなかっただなんて本當にもったいない。ですが実は、まだ仕上げが殘っているんです」

「まだ……すごいのが、あるの？　それ、してっ！　早くちょうだいっ！」

「そう慌てなくともすぐにあげますわ、ほら」

ラライラライは、キシリーの頬に手を當てた。

すると顔の側で影が蠢き、再びラライラライの理想を実現する。

今度は見た目の変化はない。

だが、嗅覚はラライラライたちの匂いをより鋭敏に知することが出來るようになっているし、口は普通の人間よりも遙かに敏になっている。

そして、前回のリベンジと言わんばかりにを重ねると、キシリーの舌を丁寧に舐め、でた。

「はふぅ、ぷちゅ……んっ、くぅ……にちゃ……ちゅ、ふ、んっ……」

本日三度目のキスにして初めて、キシリーはその快楽を知ることとなった。

粘同士が絡み合う覚。

それは、抱き合い、をれ合わせる心地よさとは比べにならない。

混ざり合い、1つになっているのでは無いかと錯覚してしまうほどの一。

そして、より濃くじられるラライラライの雌の匂いに、甘い――あまりに甘い、彼の唾。

キシリーはそれらを必死で自らのに取り込み、吸収させた。

「（好き、好き、好きぃっ、ラライラライ大好きぃっ！　なんで私、こんなに素敵なこと、嫌がってたんだろ……！）」

鼻息を荒くしながら、しでもこの想いが屆きますように、と必死で抱きつくキシリー。

ぐちゅ。

だがその時、ラライラライの悪戯心が殘酷に彼の正気を目覚めさせた。

また、である。

「（いや、いや、いやぁっ！　なんで、私……こんなのやだ、こんな気持ち悪いのに、気持ちいいの、やだぁっ……！）」

だが今度は々様子が違った。

キシリーの腕は強くラライラライの背中に回されたまま、離れる様子はない。

の興が最高に高まっている今、いくら今更理を取り戻した所で、抗えるものではないのだ。

頭ではいけないことだと理解しているのに、がそれを求めている。

甘い唾は、自分の口の中に注ぎ込まれる度に、自然と舌の上で転がして、じっくり味わった上で飲み込んでしまうし。

われると、気づけば自らの意思でラライラライの口をしているし。

でもわるように、ぴたりと著させたをくねらせ、こすらせていた。

「んっ、んんんっ！　ぷはっ……は、ちゅっ、んぷっ……ちゅ、ぱ、むちゅ……ぅっ、んううぅっ………！」

2人の事は、半吸鬼デミヴァンプとなり、底なしとなったラライラライのが収まるまで続けられた。

最後の方は、ぐったりとしたキシリーが一方的に襲われているだけだったが、それでも、彼のに刻み込まれた記憶は消えない。

もっとも、いくら姿形を変えようとも、キシリーのに施された魔法に対する耐は消えては居ない。

まだ、魅了の魔法はまったく進行していないのだ。

いっそ早くに墮ちてしまえれば、楽になれたというのに。

彼はまだ正気を失えないまま、2人に弄ばれ続ける――