リーザのを溫かいお茶が通り過ぎると、彼は気だるげに息を吐いた。

なんてことは無い日、なんてことはない晝下がり。

リリーナは買いに出かけ、リズは外で友達と遊んでいる。

簡単に言うと、リーザは暇していた。

とは言え、こうして一人きりでゆっくりする時間と言うのは、常にリリーナが傍に居る今の生活では非常に貴重で。

今しか出來ないことをやろう、と思い立って早一時間。

「はぁ……リリーナ、早く帰ってこないかしら」

リーザは憂鬱げな吐息をらす。

結局、1人の寂しさの方が勝ってしまい、何も出來なかった。

何気なく自分の目の前に左手をかざし、薬指を飾る指を見つめる。

2年ほど前、リリーナがくれたペアリング。

現在、この世界に結婚という制度は存在しないが、しかし”ツガイ”と呼ばれる夫婦に近い関係はある。

リーザと、その実の娘であるリリーナは、現在そのツガイとなっていた。

彼の薬指につけられた指は、それを示す証なのだ。

かつては夫との結婚指が付けられていた場所だが、リリーナとの関係を結んだ時に捨てて以降、もはやどこに行ったのかも覚えていない。

興味もない。

「一緒に行けば良かったわ、そしたらこんなに寂しい思いをすることも無かったのに。ねえ、リリーナ？」

右手の指先でおしく指にれると、頬が紅し、目が潤んでいく。

指を眺め、おしい人の表を思い浮かべるだけで陶酔してしまうほど、リーザはリリーナに溺れきっていた。

実の娘であるというのに――いや、実の娘だからこそ、の繋がりが彼の思いをさらに深いものにしているのだろうか。

「ただいまー！」

玄関から聞こえてくる聲。

リーザのは高鳴った。

彼は、まるで新婚の妻が仕事から帰ってきた夫を迎えるかのように、小走りでリリーナの元に向かう。

そして袋いっぱいに野菜を詰めた娘を強く抱きしめるた。

「おかえりなさい、待ってたわっ」

「ママ、ちょっと苦しいよぉ」

「我慢出來なかったのよ。離れ離れになるのがこんなに辛いだなんて想像もしてなかった」

まるで子供のように甘えたことを言う母親に、苦笑いを浮かべるリリーナ。

元・夫の前ではここまで子供っぽい姿を見せることは無かったのだが。

しかし、どうやら元より心の奧底には好きな相手の前で甘えたがる気質が眠っていたようで。

それが”人”と”娘”という2つのが乗算した存在であるリリーナを前にしたことで、呈するようになってしまったらしい。

「ほんのちょっとの時間なのに。もう、ほんとママは私のことが大好きだね」

「當然よ。あなたが子宮に居た頃から今まで、一度だって好きじゃなかった瞬間なんて無いもの。リリーナさえ居れば、他には何もいらないの」

とは言え、ここまで言われてリリーナも悪い気はしない。

自然と手はリーザの頭へとび、固く抱き合いながら優しくでる。

そのまま2人はしばし著したまま、の再會を満喫したのだった。

◇◇◇

彼たちが家族3人で暮らしていた家には、今も家族3人で暮らしている。

1人居なくなって1人増えたわけだが、以前誰がここに居たのか、もう彼たちは思い出すことすらない。

「ふうぅっ、んっ……ちゅぱっ、ちゅ……える、ん、ちゅうぅ……っ」

そんなことより・・・・・・・遙かに大事ながあまりに多すぎるのだ。

だから過去に死んだ人間のことなど思い出す余地などないし、目の前の現実は必死で貪り盡くす。

「リリーナぁ……にゅ、むちゅ……にちゃ……はぷっ、ん、んむ……れるっ」

リーザは椅子に座り、その膝の上に向かい合ってリリーナが座る。

そして娘は母に向かって顎までびた長い舌をでろんと差し出し、母は娘の舌を隅から隅まで舐めしゃぶり、味わう。

仲睦まじい母娘のスキンシップと言うには過剰すぎる、あまりに能的なわり。

それは今や、2人にとっての日常に過ぎなかった。

離れているよりもれ合っている時間の方が、乾いているよりもっている時間の方が遙かに長い。

致し方ないことである。

ただの親よりも、ただの人よりも、さらに深く結びついた2人の心は、常に激しいに燃えている。

自分の胎で生まれ、育ててきたこの世で最もおしい娘が、自分のことを求めてくれる。

ただそう思うだけで愉悅と背徳でリーザのは熱く滾った。

自分を産み落とし、を注いでくれたこの世で最もおしい母が、自分のことを今も狂おしく求めてくれる。

ただそうじるだけで満たされ、リリーナの脳はけ茹だった。

整然とした理屈もある、理由不問の獣もある、ならばわらぬ道理は一厘も存在しない。

リーザのらかなが敏な覚を優しく食み、そして同じ剝き出しのが優しく表面をする。

舌の郭を尖らせた先端でなぞったかと思うと、今度はまとわりついた唾をすくい上げ自らの口に運び、次は自分の唾を絡め塗りたくる。

粘り気のある母の涎を転がし味わってから、癖のある甘みを満喫して、飲み込む。

毎日欠かさず、數え切れないほど摂取してきた伴のは、慣れはしても飽きはしなかった。

むしろ中毒に陥れるようにに馴染んでいって、日々薬としての効果を高めていっている。

リーザの唾が食道を通り胃袋へと落ちていく覚に、リリーナは軽く「んっ」とぎを震わせた。

全がかぁっと熱くなる。

準備はとっくに出來ている、だからキスよりももっと先のことをしてくれてもいいのだけれど――母は口づけに夢中のようで、まだまだ前戯は続きそうだ。

ペースを合わせることは苦痛ではない。

むしろ、自分の舌に必死でする母の姿を見ているだけで、おしさが破裂しそうな程に膨らむ。

そのらしい姿は、きっと一生眺めているだけでも飽きはしないだろう。

ご褒でも與えたくなってくる。

リリーナがひときわ多めの唾をリーザへと送り込むと、彼は悅んでそれを飲み干し、「んふうううぅ……っ」と甘い聲を出しながら、を震わせ、娘を抱きしめる両手に力を込めた。

がさらに強く著する。

さらに年不相応に満に長したリリーナのが、母の大きな膨らみとぶつかりあい、ひしゃげた。

「ちゅぱ……はふ、んふぅ……ん、ごめんね、ママばっかり気持ちよくなって」

「いいよ、ママがきもちいいのを見てると、私もきもちいいから」

「優しい子。誰に似たのかしら」

「ママしかいないよ。私を産んだのは、ママたった1人なんだから」

伝子も記憶も流れるも、リリーナが意識するのはいつだってリーザのことだけだ。

それだけ誇りに思い、他に混ざっていた何かなんてこれっぽっちも考えない。

不要なだから、捨ててしまった。

2人はその後、見つめ合い、口づけ、見つめ合い、口づけを何度も繰り返した。

そうこうしているうちに、外で遊んでいたリズが帰ってくる。

玄関を開け、ドタバタと元気に廊下を走りリビングへと駆け込むと――

「あーっ！　ママとお母さん、また2人で始めてるー！」

2人の座る椅子を指差して、大聲でそう言い放った。

部屋に満ちていた靡な雰囲気が、一気に吹き飛ぶ。

リリーナとリーザは見つめ合いながら微笑むと、立ち上がってリズの元へと近づいた。

「おかえり、リズ」

「ただいま、お母さん！」

そう言って、リズとリリーナが同士、子供同士のキスをわす。

「おかえりなさい」

「ただいま、ママ！」

同じくリズとリーザも口づけをした。

リズは、リリーナのことを”お母さん”と呼び、リーザのことを”ママ”と呼んでいた。

最初はどちらもママと呼ぼうとしていたのだが、どちらが呼ばれたかわからなくなるので、使い分けるよう躾けたのだ。

それがリズが1歳の頃だった。

つまり今の彼は3歳で――その割には、リリーナと2,3歳離れた妹のようにしか見えない。

半吸鬼デミヴァンプの胎児の長が早かったように、半吸鬼デミヴァンプから生まれた子供も長が早かったのだろう。

「リズを仲間外れにしないでって言ったばっかりなのにぃ……むぅ」

「仲間はずれになんてしてないよ、リズも一緒にやろ？」

「お母さん、ほんとに？　リズも仲間にれてくれる？」

「もちろんよ、さあ寢室に行きましょうか」

「うん、ママっ！　あ……でも、友達と遊んできたからちょっと汗かいてるかも」

「あら……言ったでしょう、リズ」

リーザは腰をかがめ、リズの耳元に口を寄せて言った。

「そっちの方が私たちの好みよ、って」

リズの頬が赤らむ。

そして彼は無言で、こくりと頷いた。

リーザは満足げに微笑むと、リズの手を取る。

リリーナももう一方の手を握り、3人は寢室へ向かうのだった。

◇◇◇

寢室にるなり、リズはベッドの上に押し倒される。

リリーナとリーザはその両端に寢そべり、2人は手際よくリズの服をがせていった。

い彼は、またたく間にキャミソール姿になってしまう。

さすがにまだ年が年だからか、の凹凸はあまりない。

それでも、年の割にはらしさをじさせるつきではあった。

「むぅ、またリズだけ……」

リズは1人だけがされて不満だったのか、を尖らせた。

リリーナとリーザは、ひとまず彼をひたすらにでるつもりだったのだが、そうもいかないようだ。

仕方なしに、2人も纏っているをぎ、ランジェリー姿になる。

れ合う素のらかなに、リズは今度こそ満足気に笑った。

「それじゃバンザイしてー」

リーザの子を諭すような指示に従って、リズが両腕を上げる。

半吸鬼デミヴァンプという種は、人間に比べると甘い雌の匂いが強くなる傾向にあるが、彼の匂いもその影響なのだろうか。

蒸れた腋から、むわっとした空気が広がり、2人の母親の鼻腔をくすぐった。

そして、その甘酸っぱい匂いにわれるようにリリーナとリーザの顔が腋に近づいていく。

「すうぅぅぅ……」

リリーナはそこに顔をうずめると、思い切り鼻で息を吸い込む。

「ん、ふうぅ……っ」

すると直後にぎ聲と共に吐息をらし、太ももをもじもじとこすり合わせた。

一方リーザは腋に口を近づけると、そこに舌を這わせた。

「あっ、あうぅ……んひっ、ひうぅっ！」

たっぷり舌に唾を纏わせてから、娘の恥部を舐めあげる母。

自らのとリズの汗とが混じり合って更に濃くなる匂いに、リリーナ同様、足をかしながらも舐め続ける。

「ぺちゃ、ぺちゃ……ちゅううぅぅ……ちゅっ、にちゅ、ぷちゅぅ……っ」

「はっ、ママぁっ、ママあぁぁっ！」

リーザばかりが呼ばれるのに嫉妬したのか、ここでリリーナもリズの腋に口を近づけた。

――と、その前に、最後にもう一度鼻を近づけて、思い切り息を吸い込む。

そして十分に蒸れた匂いを堪能した後で、舌をばした。

もちろん母を真似て、舌をでてらつかせながら。

「んちゅっ、ちゅ、ちゅるぅっ……ん、ぁ、えれ……れるぅ……っ」

「んにゃっ、にゃあうぅんっ！　お母さんっ、おかあさぁんっ！」

両サイドから腋を舐め上げられるリズ。

腰をくねらせ、背中をのけぞらせ、足の指にピンと力を込めながら、2人を呼びぐ。

実を言うと、リリーナもリーザも腋が相當に弱い。

おそらくは、両側から舐められれば今のリズと同じような反応を見せるだろう。

やがて2人は気づいた。

これは伝であり、自分たちの娘であるリズにもけ継がれているのではないか、と。

そして実際に試してみると、見事その予想は當たっていた。

それでも最初はくすぐったさの延長線上にある覚のようだったが、毎日のように舐められていくうちに目覚めてしまったようだ。

香る匂いも、最初は今ほど強くはなかった。

リリーナとリーザ好みに合わせて変わっているのかもしれない。

リズはそんな自分のを、誇らしくじていた。

誰よりも、世界で一番大好きな両親を喜ばせるために、自分を捧げることが出來るのだから。

「はっ、はひゃっ、リズっ、リズぅっ、もう……だ、だめっ、なのぉ……！」

そろそろ限界が近いようだ。

2人はラストスパートをかける。

リーザはひときわり気のある唾で舌を塗れさせ、強く押し付けるように、にゅるりにゅるりと腋に円を描く。

リリーナも同様に、リズの甘酸っぱい腋の味と匂いに息を荒くしながら、舌を削るように押し付ける。

「んあっ、あ、おぉっ、ほおぉっ！　んっ、ひううぅぅぅううううっ！」

リズはひときわ大きな、年に見合わない下品な聲をあげると、をえび反りさせ、その制のままビクビクと震えた。

上にあがった手は強くシーツを摑み、目は自然と上を向き、歯を強く噛みしめる。

「ん、んうぅっ！」としばらくを絞ったような聲をらしていたが、それもしずつ収まっていき――

ぼふん、とをベッドに投げ出した。

リズは口を半開きにして、を上下にしながらに酸素を取り込んでいく。

その開いたにリーザは口を近づけ、呼吸を整えていることなどお構いなしに舌をねじこんだ。

「むちゅっ、んううぅ、ぐっ、はふ、ふうぅ……んっ、ママ……えぅ、じゅるっ、ちゅぱぁ……っ」

最初は目を見開き、抵抗していたリズだったが、やがてけれ自ら舌を絡めていく。

リーザが顔を離す。

2人の間を唾の銀の糸が繋ぐ。

すると間髪いれずにリリーナがを落とし、また舌でリズの粘をかきした。

自分の腹を痛めて産んだ娘2人が、目の前で激しく舌を絡めあっている。

その様を見て、母が興を抑えきれるはずもなく。

リーザは太ももに指先を這わせながら、再び腋に顔を埋め、吸い付き始めた。

リズは口と、両親にすっかり開発されてしまった腋を刺激されて、さらに激しく腰をくねらせ、甘い聲をあげる。

じきに母の手によってリリーナの聲も響きはじめ、それに対抗した娘の手によってリーザも啼かされ。

その日、レングランド家からは夜が更けるまで――いや、夜が明けてもなお、3人のぎ聲が聞こえ続けていたのだという。

もっとも、実の母娘がし合っていようが、関係を持とうが、その関係を格子もせず大っぴらにしていようが、そんなは今の世界・・・・にとってはただの日常に過ぎない。

ご近所さんに「レングランドさんの家は仲がいいわねえ」と言われる程度の出來事だ。

それは今日も明日も変わらない。

1年後も、10年後も、100年後だって、きっと彼たちの幸福は永遠に続く。

なぜならここは、完された世界なのだから。