《やっと封印が解けた大魔神は、正を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~》大魔神には古代竜すら敵いません

「殺せ、殺せー!」

「に、人間だー! 逃げろォー!」

耳をつんざくような喧噪で、僕は目を覚ました。

「…………?」

なんだ。かない。

ふと視線を下向ける。

紅に錆びた太い鎖が、僕の手足を頑丈に縛りつけていた。

それだけじゃない。

視界すら真っ暗だ。

どうやら僕はどこかに閉じこめられ、その上で監されているらしい。

いったいどうなってる……?

そもそもここはどこだ……?

「うっ……」

思わず僕はき聲を発した。

脳が拒否反応を起こしている。

過去のことを思い出そうとすると、強烈な頭痛が襲ってくるのだ。

僕は誰だ。

なぜこんな暗闇に封じられているというのだ。

なぜ――

僕はなんの考えもなしに、両手を振り下ろしてみた。

パキッ。

「……は?」

思わず素っ頓狂な聲を発してしまう。

頑丈そうに見えた鎖は、いとも簡単にぶっ壊れた。

両足をかしてみると、こちらも同様、パキッパキッと簡単に折れた。

「…………」

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思わぬ形で自由のとなった僕は、右手を前方に突き出してみた。

「うっ――」

思わず顔をしかめてしまう。

急に視界が開け、多量の視覚的報が目に飛び込んできたからだ。

どうやら窟の部らしい。

そこかしこに松明が掛けられており、ごつごつとせり上がった巖壁がんぺきを薄く照らし出している。

薄暗くてまだ全景を見通すことはできないが、かなり広い場所のようだ。あたりを見回しても、出口らしきものは見あたらない。

「……ふう」

ため息をつき、一歩前に進み出る。

どうやら、さっきまで棺桶かんおけの中に監されていたらしい。

さっき右手を突き出したことによって、蓋ふたを外してしまったようだ。

「…………」

ここは一どこなのか。

なぜ僕はこんな場所にいるのか。

詳しいことはなにもわからない。

わからないが、いつまでもこんなシケた所に突っ立っているのも嫌である。

とりあえず出口を探そう。

話はそれからだ。

そうして歩き出そうとしたとき、僕は気づいた。

さっきぶっ飛ばした棺桶の蓋に、張り紙がってあったのだ。

――最古級ノ大魔神、ココ二封ズ。決シテ開ケルべカラズ――

「…………」

最古級の大魔神……ってまさか、僕のことかしらん?

いやいやまさか。

ありえない。 

過去のことは全然思い出せないが、これだけは覚えている。

僕はたしかぼっちであり、貞であり、そのことについて真剣に悩んでいて、つまりそんな奴が大魔神だなんて……

瞬間。

大音量の警報音が、ぶおーん、ぶおーん、と鳴り響き、僕はを竦ませた。続いて、室が赤く點滅する。

「非常事態デス、非常事態デス。大魔神ガ走シタモヨウ」 

いったいどんな仕掛けがあるというのか、機械的なの聲が室に反響する。

「防衛魔法ヲ発シマス。伝説ノ古代竜リュザークヲ召還シマス」

――な、なんだなんだ?

呆気に取られていると、僕の眼前に、新緑に輝く幾何學模様が発生した。

強い魔力をじる。

おそらく魔法を用いてなにかを召還させようとしているのだろうが、古代竜ってまさか。

直後。

幾何學模様からの柱が出現し。

その輝きが薄れたときには、僕の數十倍はあろう巨大な竜が姿を現していた。

表は紺碧こんぺきの鱗に覆われている。 

見上げんばかりの巨大な翼は、無數の棘によって包まれており、れたが最後、大きなダメージをけることは必須だろう。

――古代竜リュザーク。

なぜだろう。僕は奴の名を知っている。そして、魔においてトップクラスの実力を誇っていることも。 

古代竜は四つん這いに俺を見下ろすと、こちらも紺碧の雙眸そうぼうで僕を見下ろした。大きな口から、兇悪な牙が垣間見える。

「殺す……大魔神。殺すべき敵……」

「うっ」

僕は思わず顔をしかめた。

「ありえない。君、口臭くちくさすぎだね」 

「ウゴォォォォォォオ!」

冗談めかした僕の発言にもまったく聞く耳を持たず、古代竜は雄びを発する。

そのままぎょろりと僕を睨むや、數秒だけきを止め――こちらに突進してきた。

さすがは巨というだけあって、奴が走ればそれだけで地響きが発生する。ゴゴゴゴゴ……という轟音が、に響き渡る。

「…………」

正直、僕は自分が誰だかよくわかっていない。

だが、なんとなく理解しつつある。

僕は大魔神……だかなんだか知らないが、通常ならざる存在らしい。

――こうして伝説の古代竜を前にしても、まったくじないほどに。

僕は最小限のきでサイドステップし、竜の突進をかわした。 

「……あのさ」

ため息をつきながら、竜の背中に問いかける。

「正直、お引き取り願いたいんだよね。戦う気が起きなくてさ」

「ウゴォォォォォオ!」

古代竜はまったく聞く耳を持たず、途中でを翻すと、再度、こちらへ向けて猛烈な突進をかましてくる。

「やれやれ……まったく」

ため息を吐き、僕は肩を竦めた。

これだから話の通じない奴は嫌いなのだ。

僕は古代竜へ向け、右手を突き出した。

大魔法だいまほう発

――インフェルノ・エクスプロージョン。

竜の周囲で大発が発生する。

ぱっと眩いばかりの閃があたりを照らしたあと、すさまじい衝撃音が響きわたる。並の者であれば、この音圧にすら耐えられないだろう。

「グアアアアアッ!」

地獄のビッグバンに呑み込まれ、竜は野太い悲鳴を轟かせる。

だが、それでも死ななかったのはさすがの耐久力だった。

手加減してやったとはいえ、だてに古代竜を語っていない。

竜は両足をふらつかせながらも、ギリギリのところで踏ん張ったようだ。ふらつきながらも立ち姿勢をキープする。

「め、盟主めいしゅ様……!」

ふいに、古代竜がそんなことを言った。

「私はどうすればいいのですか……! どうか、私に力を……」

――盟主様。

誰のことを言っているのか。

虛ろな記憶を手繰りよせるが、しかし聞き覚えはない。

「ふむ」

と僕は唸った。

「興味があるね。誰だいそれは」

「おまえに答える義理はない! 私は盟主様の意に沿い、貴様を監視・殺害すべく潛んでいたのだ!」

「あ、そう」

――盟主。

この場所に古代竜を潛ませていたということは、僕の封印に一役買っていたことは間違いない。

誰だ。いったいなんのために僕を封じ込めた……

「じゃあ、教えてもらおうか。――力づくでね」

僕はぽつりと呟くと、古代竜に向けて駆けだした。

……のだが。

々やりすぎてしまったらしい。

ちょっと本気を出して古代竜の顔面をぶん毆ったら、そのままかなくなってしまった。

見事に気絶してしまったようだ。

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