《やっと封印が解けた大魔神は、正を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~》運命の再會(真)―3

それからコトネは《反を起こしうる分子》として、魔王城を追放された。

もともと孤児だった彼は、城の者に拾われ、奴隷として仕えてきただけなのであった。

それからコトネは、小さいながらも、必死にき回った。

――大好きな彼に會うため。

――そして、自分自の償いのために。

大魔神エルが封印された場所。

そこを求めて、各地をさまよい続けた。

殺されそうになったこともある。

また、コトネは男のいやすい見た目であるらしかった。

・人間を問わず、人気ひとけのない場所で男に襲われそうになったこともある。

「なに? 探してる魔がいるだァ?」

「見つかるわけねーだろバーカ。もう死んでるに決まってるだろうがよ」

を知らない者は冷たいものだった。コトネの心境などつゆ知らず、心ない言葉を突き刺してくる。

諦めかけたことも何度かあった。

ふてくされて、一日どこにもかない日もあった。

けれど、彼が時折見せた、楽しさと寂しさがじったような微笑を思い出すたび、コトネは心がぎゅっと締め付けられるのだった。

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さまざな波瀾萬丈はらんばんじょうを経てようやく、コトネにとって大きな幸運が訪れた。

現在の《両親》との出會いである。

人間に襲われ、瀕死で歩く彼を見つけたのが、あの人の良い夫婦だった……というわけだ。

そうして命の危機に曬されながらも、コトネは諦めなかった。大魔神エルの眠る場所を求め、各地を調べ続けた。

――お兄ちゃんは、命をかけて私を守ってくれた。だから私も、同じくらいのお返しをしないと――

人の良い夫婦に連れられ、コトネはニルヴァ市にやってきた。

ここがコトネの新しい《故郷》になった。

そして偶然の一致か、それとも運命が引き寄せたのか。

ニルヴァ市にごく近い窟に、大魔神エルは封印されていたのである。

コトネは喜んだ。

これでやっとお兄ちゃんに恩返しができる。

大好きな彼に會える……

コトネは嬉々とした足取りで、大魔神エルの封印場所に足を踏みれた。

――ここで、さらなる仕打ちが待ちけているとも知らずに。

エルはたしかにその場所にいた。

封印から長い年月が経ったとはいえ、見間違えるはずもなかった。

棺桶に眠る中的な顔をした男は、疑う余地もない、大好きな彼であった。

でも。

――エルくん。

――エルくん!

どんなに呼びかけても、エルは目を覚まさなかった。

棺桶のなかで、両手を組み合わせ、死んだように眠り続けているのみである。

コトネは彼の両肩を摑んだ。

想い人の名を呼び続けた。

お兄ちゃん。

エル。

エルガー。

アウセレーゼ。

しかし彼の目が覚めることはついぞなかった。

――なんで。どうして……

彼ののなかで、コトネはむせび泣いた。

自分のせいだ。

自分のせいで彼は永遠の眠りについてしまったのだ。

何時間、エルので泣き続けたかわからない。涙が枯れ、悲しみというを忘れてしまうまで、ひたすらエルのなかにいた。

それからコトネは人が変わった。

ほぼ毎日、ニルヴァ窟に足を運ぶようになった。

定期的に聲を投げかけていれば、いつか彼が目覚めてくれるかもしれない――そんな願を抱いて。

いつの頃からか、コトネは花も持參するようになった。

彼に想いが通じますように……そんなまじないを、ふんだんにかけた花である。

わかっている。

こんなものは気休めだ。

だが、そうと知っていても、なにもせずにはいられなかった。

コトネの容姿に引かれ、際を申し込んでくる魔も何かいた。

彼ら全員に、彼はいつも同じ文言で斷っていた。

――結婚を約束している彼がいるので、ごめんなさい――

いつしか、《封印の間》は花だらけになっていた。

ニルヴァ市の魔たちは、そんなコトネを不思議な目で見ていた。

けれど誰も彼を止めなかった。

の必死さを見て、なんらかの理由があるはずだと、づいていたから。

そしてついに、その日がやってきた。

「お、こんなところに手頃な魔がいるぜ。腕試しにはちょうどいいや。殺してみようぜ」

人間たちの《腕試し》により、コトネはの自由を失った。

人間に斬られ、薄れゆく意識のなかで、これが自分の罰なんだ、とコトネは思った。

私はお兄ちゃんを殺した魔

だから私が殺されるのも當然の罰なのだと……そう思った。

けれど。

現実はそう単純には進まなかった。

コトネは生きていた。

それも、植狀態という最悪の狀況で。

まわりの魔たちは、みなコトネを《意識不明》だという。

だがそれは事実に反する。

コトネは植狀態に違いないが、意識は鮮明にある。まわりの音を聞き取ることもできるし、れるものをじ取ることもできる。

けれど、それを外部に伝えることはできない。コトネはもう、口さえも自力でかせなくなっていたから。

似ているな、と思った。

封印されている彼と、そっくりだ。

だからこれは、私がれるべき罰なのだと……コトネは常日頃から、そう自分に言い聞かせていた。

けないコトネによりかかり、両親が泣いていた。

ニルヴァ市の友達が、コトネに面白い話をしてくれた。 

もちろん反応してあげたいけど、彼には表を変化させることさえできない。

苦しい毎日だった。

生きる意味さえわからなかった。

――コトネ! コトネ! お願い、目を覚まして、前みたいに話してよ!

そう懇願してくる両親の傍らで、コトネは無にこう思った。

きっと彼も同じ狀態だったのだろうか、と。

けないだけで私の聲は聞こえていたのかもしれない。

だったらいいな。彼に私の想いが伝わったなら、それ以上に嬉しいことはない。

……仮に再會できても、もう私はくことも話すこともできないけどね。

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