魔王ロニン。

彼の後ろ姿を見送りながら、僕は深い思索に耽った。 

すさまじい魔力を備えた魔だった。

外見そのものはひ弱なの子に過ぎないが、その実、多くの死線を抜けてきたに違いない。そう思わせるだけの圧倒的な圧力が、彼にはあった。

そんな魔王が、なぜ、ワイズなんかと…… 

「ねえ」

ふいに、コトネがじろりと僕を睨んできた。

「あの子のこと、考えてるでしょ」

謎の威圧に戸いながらも、僕は邪悪なる大魔神として、

「ああ、そうだよ」

と素直に答えておいた。

瞬間、コトネは今までに見たことのないくらいに頬を膨らませ、

「ばかっ」

と言って僕の腕を小突いた。

ん？　ん？

まったく意味がわからず、僕としては目を白黒させる他ない。

あれほどの強者を目にしたのだ、々な考察を巡らせてしまう僕はどこか間違っているのか。

あるいは、魔王ロニンも《神の力》を手にれたであるため、コトネにはその魔力が知できず、単に悔しいだけなのかもしれない。

うん、きっとそうだ。

そこまで考えた僕は、コトネの心の傷を癒すべく、最大限言葉を選んで言った。

「落ち込むことはないさ。君だって修行すれば、彼みたいな魔になれるよ」

「……ばかっ！」

「いたっ！」

しかしながら、その発言はコトネをさらなる怒りに追い込んだらしい。もう一度、今度は強めに腕を叩かれ、僕は首を傾げざるをえなかった。

さて。

散歩の最中、僕は気になるものを見つけていた。

ときおりすれ違う、制服姿の魔たちだ。思い返せば、アリオスも同じ格好をしていた気がする。

たぶん、彼らは警備隊の一員と思われるのだが――それにしても數が多い。魔王の居座る城下町だから、警備してもしすぎということはなかろうが、それを鑑かんがみても異常な數だ。

三分に一度は警備隊にすれ違っているような気がする。

ということで、僕たちはまず警備隊の本部に向かうことにした。

だって気になるからね。絶対、なにか裏がある。

コトネは嫌がると思われたが、「エルくんが行くなら」ということで、一緒に行くことになった。

まったく可い奴である。