《やっと封印が解けた大魔神は、正を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~》大魔神の大魔神たる理由

僕は思い出した。

學試験の面接において、相當に疲れ果てていた魔王ワイズを。

その疲労を癒すためか、警備隊ぐるみで拐事件を起こし、生徒を思うがままにしようとしている。

僕は思い出した。

姉を連れ去られ、さりとて誰にも助けてもらえず、泣き寢りしていた子生徒を。

が混濁こんだくし、まともに喋れなくなってしまったリノを。

そしていまも、魔王はコトネをも連れ去ろうとしている。

十年前のあの日、コトネの人生を棒に振るったにも関わらず、またしてもあいつは……!

「許さない……!」

知らず知らずのうちに俺は呟いていた。

「魔王ワイズ……目にものを見せてやるよ……!」

「……おまえ、まさか……魔王様と喧嘩しにいくつもりなのか……?」

かすれ聲を発するアリオスに、俺は毅然きぜんと言い放った。

「喧嘩じゃない――殺しにいく」

「……本気か。あの魔王様を相手に」

「駄目か? 止めるならおまえとて殺すまでだ」

「……いや」

アリオスは首を橫に振った。

「俺だって魔王のやり方に疑問を持っていた。犯人が魔王なのであれば……いくら魔界のトップといえど見捨ててはおけぬ」

「……そうか」

なら話は早い。二人で魔王をぶっ殺しにいくまでだ。

俺はゆっくり目を閉じ、ふうと息を吐くと、遠くに屹立する魔王城を見據えた。

「だが、派手な襲撃はしないつもりだ。もし魔王の崩ほうぎょが人間側に知られたら、それはそれで厄介事を引き起こすからな」

魔王の奴も言っていたが、人間の國王――ナイゼルは相當に狡猾こうかつな男だ。弱みを握られないためにも、ここは慎重に、かつ靜かに魔王の首を狙いたい。

俺の言葉の意図を察したか、アリオスは力強く頷いた。

「なるほど。承知した」

そして椅子から立ち上がり、俺を見下ろす。

「しかし、大魔神か……。いま、その所以ゆえんがわかった気がするな」

「……託ごたくはいい。いくぞ」

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