《やっと封印が解けた大魔神は、正を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~》細かいことは気にしない

サクヤ。

それがの名前だった。

ギルドにて付嬢を務めており、よって首都サクセンドリア近辺の裏事にも詳しいのだという。

ならば、これは好機だといえるだろう。

ならば、コトネを襲った《赤ローブ》についてもなんらかの報を摑んでいるかもしれない。

互いの自己紹介を済ませたあと、僕たちはギルドのテーブルでお話することにした。もちろん、僕が大魔神であることは隠してある。面倒なことになりそうだしね。

ちなみに、六人の冒険者たちは、むすっとした顔のまま壁際の椅子に座っている。サクヤに手を出したら承知しねえぞ――みたいな顔で。

「で」

サクヤはテーブルにを乗りだし、頬杖をついた。

「その魔さんたちが、ギルドに何の用だい? そもそも――」

護衛していたはずの兵士はどこにいった。

そう呟いたサクヤに向けて、僕は扉の外を指さした。

「かるーい魔法をかけててね。文字通り、眠ってもらってるよ」

「眠る……? はっ、案外とんでもねえ奴みてえだな」

目をぱちくりさせたサクヤは、次いでコトネを見やった。

「あんたからも途方もねえ魔力をじる……。なんだよ、魔界の貴族ってのは強いモンなのかい?」

「わ、私たちは貴族じゃありません。その、々と事があって……」

「へーぇ。々とねぇ。ま、詳しいことは追求しねえから安心しな」

聞く限り、サクヤはかなり奔放な格のようだ。言い換えれば、細かいことは気にしない――

僕はちらりと、殺気のこもった視線を向けてくる男たちを見た。

――なるほど。

ギルドの付嬢でもあるサクヤは、冒険者たちの《憧れの的》であるらしい。スタイルも抜群だし、大きなの大部分を惜しげもなく出している。まさに、冒険者たちが好きになりそうなタイプである。

サクヤはくくくっと笑うと、両手を後頭部にまわし、椅子の上に胡座をかいた。なんというか、際どいアングルである。

「ま、せっかくだ。できる範囲で質問に答えてやろう。なにか知りたいことがあるんだろ?」

「へえ。隨分気前がいいじゃないか。僕たちは魔なのに――いいのかい?」

「細けえことはいいんだよ。気にしねえでなんでも聞きな」

そういうことなら非常に助かる。

僕はコトネと目配せをすると、まずは基本的な容から聞くことにした。

「……それなら、このギルドってのがどういう組織なのか、簡単に教えてほしい」

「なんだ、そっからかよ。ま、別にいいんだけどよ」

サクヤは肩を竦めると、右手をかし、とある一點を手差しした。その先には件(くだん)の掲示板がある。

「まぁ、基本的には兵士の手がまわらねェ仕事をやってるじだな。田舎に現れた魔だったり野黨だったりを始末していくのが主な仕事だ」

「……じゃあ、依頼主はだいたい國なのかい?」

「そうだな。首都近辺のイザコザは八割がた兵士が対処してる。殘った余りモンを俺たちが処理してるってわけだ」

「……なるほどね」

ということは、力関係でいえば兵士のほうが上なのか。

周囲の男たちはともかく、サクヤはあの護衛の兵士よりも遙かに強く見えるのだが。

そんなことを頭の片隅で考えながら、僕は核心に迫ることにした。

「……じゃあ、ニルヴァ市への攻撃を依頼したのも國なのかい?」

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