《現人神の導べ》03 謁見の間
「よく來た、勇者達よ。儂の名はルーラント・フェルリンデン。この國の國王だ」
この國の王は凄い上から目線だった。
『何故ちょっと楽しそうなのですか……』
『いやぁ、新鮮だな……と。最近無かっただろう? 妾にあの態度取るやつ』
『……ああ、まぁ確かにそうですが』
『冒険者達も最近は絡んでくれんからなぁ。うんうん、許す。許しちゃうぞぉ』
パット見だけならシュテルは小學校高學年ぐらいである。
ただ、大きい翼とる眼を持っている。一発で見分けがつくので、元の世界では絡んでくる者がすっかりいなくなった。
だからこういう者は數百年単位で久々なのだ。楽しくもなってくる。
暴れるなんてことはしない。みっともないにも程がある。
「勇者達には魔王の討伐をお願いしたい。戦う技やこの世界の事は教える者を付ける。必要なものは出來る限り用意しよう」
ちなみに、當然帰る事は不可能だ。召喚裝置の仕様的に無理だろう。
泣いてる者もいるが、當然だろう。拐された挙句に命のやり取りしてこいだからな。テンション上がっている方が頭おかしいのだ。
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時空神の力で返す事は可能だが、良くも悪くも基本的に干渉しない。
そもそも帰ったところでどうやって言い訳するつもりか。
『勇者として召喚されて戦ってました』とか言っても『は?』だろ。
召喚されてから日が経つほど厳しくなるだろう。
後は覚えてないで貫くしかないだろうな。
まあ、戻ることは不可能なのだが。
頑張りたまえ若者達。君達は遙かに幸運と言えるぞ。中には別変わってるのいるんだからな。ハハハハ。……本人あんま気にしてなさそうだけど。
終始上から目線の王の隣で、申し訳無さそうな第一王子である。
苦労人か、第一王子。
王は可もなく不可もなく。無能ではないが有能でもない。極普通の王だな。ただ、問題があるとすれば……。
「それで、勇者達の世界には獣人がいるのか?」
「え? そんなのいないけど……」
狐っ娘の耳と尾がぴくっと反応した。
この王、分に拘るようだ。まあ、悪いこととは言わんが……獣人の社會的地位が低いのが問題だな。
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「ではそこにいる狐の獣人は?」
全員の視線が集中しびくっとするが、中々肝が據わっているらしい。
逆に聞き返した。
「いや、むしろこっちが聞きたい。何で狐の耳と尾が生えた挙句に、別変わってる? そんな意味分からない召喚なの?」
「貴様! 無禮だろうが!」
「聞いてきたのはそっちだろうに……」
「何だと! 獣人の分際で!」
「なりたくてなった訳じゃない! と言うかお前達のせいだろう!」
謁見の間には當然王だけじゃなく、第一王子や護衛の近衛騎士。更に貴族達もいる。その貴族の1人が口を挾み、何故か言い爭いを始めていた。
やれやれだ。話が進まん。こちらも口を出すか。
「謁見の間で騒がしいぞ」
「全くです。程度がしれますね」
斜め後ろに待機しているヒルデも追撃をする。
視線がこちらに向くがガン無視である。我々は見られるのも仕事。
「清家、気持ちは分からんでもないが、ここで騒いでもは戻らんぞ」
「むむぅ……」
『って、清家なのか!?』
「うん。まあは割りとどうでもいいんだけど……」
転換し狐の獣人になった事はともかく、純粋に口を挾んだ貴族が気にらない訳だな。は割りとどうでもいいと言い切るのは凄いが。
「ふんっ。獣人の分際で口答えするからそうなる」
「だから召喚前は人間だって言ってる……」
「だから言ったろ清家、ああいうのに何言っても無意味だ。時間の無駄でしかないから放っておけ。妾の発言が自分の味方したとしか思っていない。自分に都合の良い言葉しか聞こえない素晴らしい耳と脳をお持ちなのだ」
「はぁ……分かるけど言われっぱなしもムカつく……」
「では、世界は違うが召喚された仲間としてお前達に1つ、報をやろう。第一王子を見ろ、そして思い出せ。王子の表をな」
突然話を振られた王子はキョトンとするが、すぐに取り繕いキリッとした。
流石王子様である。だが今みたい顔はそれじゃない。
「ここまで案してきた王子と似たような表をしている奴とそうじゃないやつ。周りを見てすぐに覚えろ」
お、學生組何人か言いたいことが分かったようで、周りを見始めたぞ。有能だな。
「そして、これを聞きすぐに演技にった奴は要注意だ。貴族の質は我々の世界の方が高いな。おかげで分かりやすくていい」
まだ分からない者達が多いが、13歳だし仕方ないか。では訳を教えよう。
「いいか? 第一王子と同じような顔をしていた者は『自分達がしたことを理解している者達』であり、理解者だ。味方とも言える。そうじゃなかったやつは『自分達がしたことを理解していない者達』だ。無能か無関心かのどちらかでもある。どちらであったとしても我々にとっては何の役にも立たない」
これはゲームでは無く、現実である。そうなるとゲームでは描寫されない部分も絡んでくるだろう。人間関係という非常に厄介なものが。
更に権力爭いにまで発展する。
ならば先に若者達を導こうではないか。それもまた年長者の役目だろう。
「ゲームではなく、現実だ。勇者は優れた武力を持つだろう。誰のために力を振るうか考えろ。今言った『自分達がしたことを理解していない者達』は自分のに忠実な奴らだ。力を持ったお前達を取り込もうとしてくるだろう。良く見極めろよ」
おっと、それともう1つ……。
「そして今妾を忌々しい目で見ている者は害しかない者だ。話しかけられてもガン無視しろ。実力行使で來たら殺してしまえ。利用することしか考えていない者だ。ちなみに無能でもある。この狀況でそんな目で見たら自己主張してる事に気づいていないバカだからな。くっくっく……」
瞳を隠すため常に目は閉じているが、口元は歪んでいる事だろう。
ただの子供だと思わないことだ。これでも貴様らより何倍も生きて、王をしているのだからな。
容姿の整いようと雰囲気からかなり不気味に見える事だろうよ。
これで狐っ娘からも注目が薄れるだろう。
確実に妾を警戒するだろうからな。むしろこれでしない方が困る。
バカほど扱いづらい者はないという事だ。
頭が良ければある程度予測ができる。シミュレートが可能だ。だが、世界には想像を絶するバカがいるのもまた確かである。
あいつらはほんと困る。行予想ができんのだ。
『何故そこでその行をする!?』というのが何度あることか。
バカを相手する時は行き當たりばったりが一番だと學んだ。
「まあ、覚えるのは流石に無理だろうから、後で教えてやる。安心しろ」
覚えさせる魔法を使用すれば問題はないからな。
その後ひとまず解散となり、部屋に案される。
そして、各部屋を周りちゃんと教えておく。後はこいつらがどうするかなので、それ以上の面倒は見れん。
明日から早速能力テストやら勉強を始めるらしい。
午前は座學、午後が実技だな。
特にすることもないので、部屋でのんびりしていようか。
次元の壁の修復は常にしているんだけどね。
「……ふむ、自前の方が味しいな」
「そうですね……ユニ様の好みとも外れていますし、自前の使いますか? それとも一通り貰ってきましょうか」
「自前のでいいだろう。見覚えのないのはなさそうだしな」
「ではいつものように」
「うむ」
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