《現人神の導べ》10 だって、の子だもん

召喚されて一月が経とうとしていた。

『宮武』

『わわっ、念話か』

『清家が部屋のベッドで死んでるぞ。化粧箱持って行ってやれ』

『えっしん……化粧箱? ……まさか?』

『來たようだな』

『あっうん』

『ちなみに顔見ると笑えるぞ。さっさと行ってやれ。ベッドが大変な事になるぞ。"ピュリファイ"で綺麗になるけど』

『はーい』

宮武が左隣の清家の部屋へ行き、言われた通りに顔を見てみる……と言うか、視界にってきた。

「ふっ……なんつう顔を……ふふっ」

清家は仰向けで死んだ魚の……ような顔をしていた。死んだ魚の眼に加え半開きの口である。完全に魂が抜けている。

「笑い事じゃない……」

「どうせ嫌でもすぐ慣れるよ。嫌でも來るからね!」

「ぐぬぬぬ……」

れるのに抵抗あるのかタンポンではなくナプキンを選択。

教えてもらい裝著していた。

「そう言えば、生理を何とかする魔法って無いのかな? 聞いてみようかな……」

裝著し再びベッドの上でグデっと死んでいるので、部屋を移する宮武。

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目的は當然更に左隣、シュテルの部屋である。

「ユニエールさん、聞きたいことがあるんだけど……」

「どうぞ」

「おじゃましまーす」

ヒルデが中から扉を開け、宮武を招きれる。

シュテルの対面へと座った宮武に、紅茶が音もなく差し出される。細かい裝飾のされた見事なティーカップだ。無駄に張してきた宮武である。

「そんな張するな。例え割っても怒りはしない。故意だったらしばくが」

「…………めっちゃうまっ」

「ユニ様が飲んでると同じですからね」

「もしかしなくてもお高い?」

「と言うか、基本的には非売品。自家栽培してるのをたまに商人に卸すぐらいだ。まあ、當然ヒルデの腕も関係あるが……で、何用だ?」

「ああ、そうだそうだ。生理って魔法でどうにかできないのかなって思って」

「結論から言えば無理だ。そしてやめておけ。下手したら不妊になるぞ」

「えっ」

にとっては至って正常な事だ。それを下手に弄ることはお勧めしない。

例えできたとしても、戻せる保証がない。

「早いうちに座學で魔法について教えた方が良さそうだな。この世界の者は仕様が違うから役に立たなさそうだし……。近いうちに一度乗っ取るか」

休みの日を使うのもあれだしな。乗っ取った方が良さそうだ。

紅茶はまだあるようだし、し雑談と行こうか。

「勇者生活は慣れたか?」

「うーん……まだ分からないなぁ……」

「ふむ、まだ準備段階だしな。本番は魔と対峙してからか」

「魔なんでしょ? ちょっとねぇ……後盜賊もかぁ……」

「その辺りは……なるようにしかならんな。人間には得意不得意がある。無理な者は無理だからな。敢えてアドバイスするなら、命を奪うことに慣れろとは言わん。ただ、必要なことだと割り切れ」

「できないと旅なんか無理だよね……」

「無理だな。別に素直に勇者してやる必要もないんだ。一度やって無理ならやめりゃいい」

「でも……」

「正直今すぐ全員が城を追い出されても、何の問題もない。子供27人ぐらい我々だけでも育てることは可能だ。住むところが無けりゃ作ればいい。食事も最悪10番世界から空間収納経由すればいいしな」

「……どうしてそこまで? こういうのもあれだけど、クラスメイトどころか出世界が違うのに……」

「ふむ、理由か…………特に無いな」

「えっ……」

「逆に問おう。目の前で見ず知らずの者が事故り、自分に助ける力があったとしたら、お前はどうする? ちなみに助けられるだけの力があると、確定している」

「それは……助けるけど……」

「理由なんか説明できんだろう。強いて言うなら夢見が悪いとかか?」

「…………」

ぽかんとされても理由なんて無いのだ。

正直助けても何の利點もない無いだろう。だが、利點がなければならない理由もまたない。神として、年長者として……子供達を見守るのは変なことだろうか。

頑張る者達に手を差しべるのは、悪いことだろうか。

ああ、最初から答えなんかあったな。

「妾はやりたいと思ったことをやるだけだ。邪魔をするなら薙ぎ払うのみ。今までそうしてきたし、これからもそうするだろう。今回は丁度、お前達が目に止まっただけだろうな」

「つまり……気紛れ?」

「そうだな」

全ては気紛れだな。

神だからと全てに手を差しべては埒が明かん。

そもそも神々からしたら人類は世界に存在するでしかない。

祈るのは勝手だが、こちらからすれば助ける義理もない。願をさも當然のように押し付けられても困る。

我が國、アトランティス帝國は私が霊や妖達と暮らす為に作った家だ。

家に手出してくる馬鹿共を排除しているだけ。人類が住むことを許可しているのはダンジョンの活用や流通のため。お菓子とか作ったりするし。

弱者にんげんが強者まものに食われるのも、弱者まものが強者にんげんに食われるのも世界の理である。

それにいちいち神として干渉なんてしない。しても帝としてだろう。

例え人間が滅ぼうとも、エルフやドワーフが滅ぼうとも、それは世界の生達による生存戦略に負けただけである。

神としては基本的にこのスタンスでいる。

後は神関係なく、『直接喧嘩を売ってきた者』は、ムツ○ロウさんよーしよしよしの後、ボロ雑巾になってる。

誰だって絡まれたらあしらうし、自分の周りを蟲が飛び回ってたらはたき落とすだろう。

それはともかくだ。

「なあ……宮武、真面目なところ悪いが……」

「はい?」

「清家が飛び起きてワタワタ不思議な踴りを踴っているぞ?」

「は? あ……? もしかしてれた……? 寢てたしあり得る……」

飲みきった宮武はバタバタと、隣の狐っ娘がいる部屋へと突撃していった。

ご苦労なことだな……。

白い尾の一部が赤く染まった模様。

"ピュリファイ"あってよかったな。

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