《現人神の導べ》15 クラス格差

地獄のような學式が終わり、教室へと散る勇者達。

教室への移中、清家がぼそっと呟く。

「って言うか、學園なんか通ってる余裕あんのかね?」

「……通えってんだからあんじゃねぇの?」

「でもここ3年制だよね?」

「……まあ、召喚された初日に魔王倒す旅に出ろってならないだけマシじゃね?」

「確かに準備時間あるだけマシか……」

清家の呟きに反応した長嶺が話す中、し後ろでそれを聞いた宮武がシュテルに話しかける。

「実際どうなんだろう? 3年制とは言え卒業まで通う必要はないんだし……復活したら旅?」

「まあそうだろうな」

「復活まで學園で勉強かー」

「城にあった図書室の資料によれば、予兆が出てるとは言え、そこから復活までどのぐらいかは分からないらしいからな」

「そっかー」

そして教室に著いた時、勇者達に衝撃の事実が……。

「……え、何かすごくね?」

クラスで微妙に差があると言う衝撃の事実が……。特にAとそれ以外の差が結構あった。

どこの屋敷の部屋だ? というレベルのAクラス。

Bもそれなりに豪華だが、機とかがいい素材かな? ぐらいである。

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Cからは多の差はあれど教室と言えるじだった。

そして『Aクラスずるい!』とぶーたれる勇者達である。

他の奴らは學試験の績順に割り振られるが、勇者達はそんな事していないのである。

勇者達を放置し、そそくさと中へするシュテル。

機は勿論良いで、貴族の執務室で使われるような。それに合わせ椅子も立派。

それに加え、クラス共用だが簡易キッチンまで付いているので、軽食ぐらいなら作れるだろう。他のクラスに比べ、執事や侍の待機數も多い。

クラスは績で変する。Aクラスを維持したければ頑張らないと落とされる。

Aクラスの設備に憧れるなら頑張れば行ける可能がある。

元々この學園に通っている者自が優秀な者達だ。故に実は言うほど差はない。よって、學から卒業までに結構なクラス変がある。

でも悲しきかな。勇者は勇者で別枠だ。でもシュテルがいる時點でAクラスは絶的である。

「うごごごご……」

敗因は前の世界の學校と學園が同じと考えた事だろうか。

「おらー、席に著けー」

先生が來たことにより解散し、各クラスで擔任から今後の話を聞く。

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Aクラスの擔任はおっちゃんだった。

「―――ってのが明日からの予定になる。既に見たかもしれないが、Aクラスは設備が他とは格段に違う。この設備を堪能したければ引きずり落とされないように頑張ることだ。授業中の飲食もこのクラスは許可されている。基本的にダメなことは無い。甘い訳じゃなく、全てお前達の自己責任だ。お菓子だ何だとうつつを抜かせば當然Aクラスから落ちる。々頑張れよ。他のクラスの者はこの設備を狙っているからな」

Aクラスは設備が良い。そして、決まりも緩い。それは頑張ったご褒であってご褒ではない。に負ければすぐにAクラスから引きずり落とされるのだ。

やる時にやり、休む時は休む。その切り替えができないとすぐに落ちる。

設備のを全て斷ち、勉學に勵むならそれもよかろう。ただ、に負け、勉學を疎かにすれば落とされる。

Aクラスはある意味常に試練だ。設備が良い分そこらにがある。中々考えられている。他のクラスはこの楽園目指して頑張るのだ。

「こんなところか……。よし、じゃあ今日は解散だ。明日から本格的に始める」

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そう言って擔任が教室から出ていった。

あの擔任、勇者関して特にれなかったな。貴族だろうと勇者だろうと生徒として見ているため特に言う必要がないか。中々好のもてる教師だ。

擔任は當たりだな。

とりあえずあれだ、ベアテにクッション作ってもらおう。サイズが合ってない。

悲しきかな、シュテルのデフォルト長は平均より低い。

次の日お城から登校する勇者一行。

その中でふと、清家が口を開く。

「思ったんだけどさ、Aクラスって授業中でも飲食可能って言ってたじゃん? それって飯テロじゃない? 部屋には変わりないんだし、匂いはするよね」

「確かに。集中できる気がしない」

「あ、妾飲食する気満々だから、よろしく」

「「やめてくれー」」

「まあ基本飲みだけだ。安心しろ」

「鼻が良くなったから効くんだよなぁ……」

「「どんまい」」

生のみ為らず、在校生も登校する本日。勇者一行は凄い視線を集めていた。

明らかに見られ居心地の悪い中、変わらず堂々と歩くシュテルとヒルデである。

「2人の度が羨ましい……」

しい妾に視線が集まるのは當然のこと!」

「…………言い返せない」

「おっと? 冗談のつもりだったが」

「冗談だとしても実際綺麗だから突っ込めない……」

「……まあ、妾達の場合慣れてるだけだ。見られるのも仕事だからな」

特にスピードを変えることもなく、堂々といつも通りに歩いて行く。

2人にとって子供達の視線など大した事はない。それこそ國中の視線が集まり、王侯貴族に見られるのが普通なのだから。

教室へと著いたら真っ直ぐ席に向かい、ヒルデが椅子を引き、クッションを置いたら座る。ヒルデの席は右隣だが、席には付かずキッチンのある方へと消える。

席に著き、空間収納から取り出すのは教科書やノート……ではなく、書類である。

早速書類のチェックを始めたシュテルの席に、戻ってきたヒルデがそっと飲みを音もなく置く。まだ席に座らずし後ろに待機。時間になり教師でも來ない限り、ヒルデは座らないだろう。世話するのが生き甲斐のようなだから特に何も言わない。別に困る訳でもないし。

Aクラスの一箇所だけ……シュテルの場所だけ明らかに他と雰囲気が違う。

書類処理のため、完全にお仕事モードなのだ。

広い機の上はティーカップと山積みの書類、更にペンと水晶でできた丸い平べったいに持ちての付いたが置かれている。

その水晶でできたものを紙に押し付けると一瞬り、紙に絵が定著する。

アトランティス帝國の國璽こくじである。

アトランティス帝國、神都アクロポリスの大神殿中庭に生えている天を覆う神木……神霊樹と霊達の描かれたカラフルな國璽だ。

ペンも特殊でインクなどは不要。魔力でかける魔法ペンである。ちなみに自分専用で売りではない。ペンというのはインクという消耗品があってこそ數が売れるのだ。よって、流通はさせていない。

なお、椅子に敷いたクッションはどちらかと言うとぬいぐるみに近く、大きなペンギンをL字に置きお腹に座るじである。ペンギンの手が肘掛けに置かれている。

座ってる本人は真顔で、背筋を真っ直ぐに書類に向かっているのだが、何分可くデフォルメされたペンギンの上である。

他から見た絵面がだいぶシュールであった。

パット見は和むけど、醸し出す雰囲気は近寄りがたいという奇妙な狀態。邪魔すんな近づくなオーラがバシバシ出ている。

たまにカップを傾けつつ、サラサラと何か書き、空間収納へ。

そして突然、がくっとし……半笑いで1枚の紙を見ていた。珍しかったので不思議そうにヒルデが問いかける。

「いかがなさいました?」

「いや、フィーナの悪戯がな」

渡された紙をヒルデが見ると、白紙の紙に全て手書きで請求書を真似し、容が『お小遣い』になっていた。

「…………手書きのお小遣い請求書ですか」

これにはヒルデも苦笑である。

6歳の時に両親が殺され、奴隷商に拉致られ、ドナドナされている最中にシュテルが転移してきて連れ去り、そのまま娘として育てた古代種。

ハイエルフのセラフィーナである。

エルフとハイエルフは全くの別で、ハイエルフ自は既に絶滅しているが、たまにエルフ同士の子供としてハイエルフが生まれてくる可能がある。

エルフとハイエルフの一番の違いは壽命である。ハイエルフとハイドワーフは非常に霊に近く、不老種である。死にはするので不死ではない。

常に全盛期の18歳ほどで長が止まり、何らかの理由……自殺か他殺などで死なない限り存在し続ける。

拾った時は可だったが、今じゃすっかり人に長している。小さい頃から神と眷屬騎士が訓練相手だったので、ぶっ飛んだ実力を持つ。

が、育ての親であるシュテルに似たのか、案外やんちゃ。

容姿は金髪にエメラルドグリーンの綺麗な瞳で白い。まさにエルフといった外見をしている。大165センチで、は並。

そもそもフィーナは既に冒険者として自分で稼いでいるのだ。お小遣いは不要である。しかも真似て書いているとは言え、使っている紙がそもそも違う。これは一目で分かるようにわざとだろう。

完全にただの悪戯だ。親子の戯れ。

我が國は私の獨裁。最終判斷を下すのは私であり、書類の処理は全て私がしていると知っているのだ。他の者は書類を作り、仕分けて私のところに持ってくる。

つまり、そこに紛れ込ませれば確実に私が見るわけだ。

「……これは書類に紛れ込ませたフィーナを褒めるべきか? 大神殿の警備を見直した方が良いのか?」

「フィーナだからこそではないですか? SSランクですからねぇ……。しかも警備は顔パスですし」

「フィーナの悪戯も止めろは酷か」

「流石に々可哀想ですね」

「まあ、面白かったからいいや」

思わぬ悪戯があったが、書類処理を再開してしすると時間になり、擔任がってきた。

ってきた擔任がこっちを見てキョトンとしたが、特に何も言われなかったので、書類処理を継続しよう。

授業中、休み時間関係なく書類処理を継続。

勇者達が訓練中もぶっ続けで書類処理してたのを知ってるから、狐っ娘達は『またやってる』ぐらいの認識だが、初めて見る者達はびっくりだろう。

見た目的には自分達より小さい子がずっと書類を処理してるのだから。

それでも近寄るなオーラが出てるから近づくものはいないのだが。

そして所謂、社會の授業中での出來事。

「《魔導工學》に力をれ、開発を進めるのが王都エスカーテですが、魔法の開発、実験を行っている都市はどこでしょう……。そうですね、ではカエデさん」

「んん?? この國の東にあるエスカランテ王國は魔法に力をれており、その王都がエスカーテという事しか知りませんが?」

「おっと、そうでしたか」

突然指名された楓だが、これぐらいしかお城では教えられていないのだから、知るわけもない。

教師側もどれぐらい教えられているか把握していないので、試しに聞いてみたじなので特に表は変えていない。

が……、良い取っ掛かりでも見つけたのだろう。1人の年が口を出す。

「フン。こんな常識すら知らん獣がなぜここにいるんだか」

「なぜって城の奴に行けって言われたからだけど?」

ド正論である。別に勇者側が行きたいとは一言も言っていない。

そしてまさか言い返されるとも思っていなかったのか、年は顔を歪めている。

更に清家はド正論を返す。追い討ちである。本人は素だが。

「そもそもこっちの常識じゃエスカランテって國すら無かったからなー」

「「うんうん」」

それに思わず便乗する長嶺と宮武。

バカにされたと思った年はすっかりお顔真っ赤で、び出す。

「何だと獣の分際で! 貴様―――」

「うるせぇ小僧。授業中だ」

大聲なはずの年の聲を遮るように、の聲が聞こえた。

対して張り上げているわけでも無いはずなのに、不思議と全員に聞こえた言葉。

それは凄い冷ややかで冷淡だった。

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