《現人神の導べ》22 実地訓練 3
「という事で、妾は手を出しません」
「「「あ、はい」」」
シュテル本人からしたら大した事無くても、他からしたら頭おかしいのだ。
自分でやるなら快適空間にするのが當たり前。別に疲れたりもする訳じゃないのだから尚更だ。結果としてああなる。
でもあれをすると今回の目的とはズレるので、何もしない。
どちらかと言うと、シュテル達も護衛の騎士達側である。勇者達の護衛として付いてきているのだ。
家などを片付け、そそくさ朝食を食べて出発する。
"リラクゼーション"をかけられたので馬も元気いっぱいである。
「マーナガルムー、走ろうぜー」
「良いぞ」
召喚されたマーナガルムがシュテルを乗せ、シュテルの頭にシロニャンが乗り、並んで進んでいる馬車の橫を疾走していった。
それを者席から目で追った宮武とヒルデである。
「行っちゃったけど……いいの?」
「ああいった行はいつものことですからね……。むしろストレス発散でしょう」
「あ、そうなんだ……」
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「あの程度で済んでるのなら安いものです。この世界では好き勝手できませんからね。ストレス溜まるのでしょう」
「結構好き勝手しているようにみえる……」
「これと言って迷かけているわけでもないのだから良いんですよ。変に行を制限して殺気振りまかれるより良いでしょう。普通の人間死にかねませんからね」
「うわぁ……」
「そもそも召喚したこの世界の者が悪いので、迷かけようが止めるつもりもありませんが」
まさにストレス溜めてる原因そのものに発散したところで問題もなかろう。自宅で平和にお仕事してたと言うのに。
のんびりと草原を進む中、どうしても暇になり宮武が隣に座っているヒルデに気になった事を聞いてみる。
「アトランティス帝國ってどういう國なんですか?」
「そうですねぇ……。簡単に言えば自然溢れる國……でしょうか」
「自然かかー……緑が多いのかな?」
「と言うか森を丸々制圧して國とし、森の中央を神都にしたのですよ。神都の南東には湖があり、その湖が川となり南に流れ、南の大國ファーサイスの王都である水の都……そこに使用されています」
「ほえー……じゃあかなり綺麗な水なんだ」
「そうですね。アトランティス帝國は霊や妖が住まう國です。自然はこの霊と妖達に管理されているため、我が國の伐採は制限され、水を故意に汚したら罰せられます。その代わり澄んだ水と安定した気候、季節の関係ない果実が採れます。當然霊や妖に手を出したら問答無用で重犯罪奴隷行きになります」
「重犯罪奴隷……」
「重犯罪奴隷は基本人権が無くなります。が、我が國では貴重な給料がいらない働き手として、他に比べればだいぶマシな扱いをされていますね」
「ひぇー……」
「我が國はそもそも霊と妖の為に作られた國です。制圧した森というのが聖域の森で、彼らにとっては最高の場所です。ダンジョンもあったため、人々が住み著きましたがあくまで人類はおまけですからね。霊や妖に手を出すのは法で止されています」
「あくまで霊さんと妖さんの國なんだね」
「そうなりますね。立地的にも我が國は4大國の中央に位置しています。その為易路としても機能していますし、天を覆う巨大な神霊樹と言われる神木が神都中央に存在しており、霊達の漂う非常に幻想的な國でもあります」
「何か……狙われそう……」
「約400……こちらに合わせれば800年ちょっとで一度だけ攻め込まれましたが、シロニャン様による一撃で6萬の敵軍が壊滅しています」
「一撃で6萬!?」
「我が國は軍を持ちません。持つ必要がないからです。世界最強と言われるユニ様と2番手のシロニャン様がいますからね」
「あれ……? 今2人こっちにいるんだけど……?」
「そうですねぇ。まあ、問題ありませんよ。霊様にボコられて終わりです」
ヒルデは『ふふふ』と笑っているが、笑えないのは聞いていた騎士2人である。
別世界の世界最強かつ、國の防衛を行う者を召喚したのだ。
「正確には世界最強の冒険者ですかね」
「そう言えば、冒険者登録してるって言ってたね」
「ランクはEXです」
「それって的にはどのぐらい?」
「そうですねぇ……分かりやすく言うと純正竜……分かりますか?」
「亜竜じゃない純粋なドラゴンってことだと思ってたんだけど?」
「ええ、それで良いでしょう。純正竜はドラゴンパピーから始まり、それぞれの環境に適した姿に下位竜、中位竜、上位竜へと進化します。亜竜最弱とされるワイバーンや各屬ドレイクがB+とされていますが、純正竜は下位竜の時點でSSSとされています」
「えっ?」
「まあつまり、人に彼らを測ることは不可能ということです。そして冒険者ランクEXと言うのは、その純正竜と1対1で戦うことが可能と言う事を指します」
「じゃあユニエールさんって……」
「はい、上位竜をお一人でしばき倒します。EXはユニ様のみですね」
「えっと……純正竜ってどのぐらい強いの?」
「純正竜は災厄と言われています。國が簡単に滅びますが、自分達の棲家から基本出てこないので、純正竜による被害より亜竜の方が圧倒的に多いですね」
「自然災害……的な?」
「基本過ぎるのを祈るのみでしょう。生最強種は伊達じゃありません」
「それに勝っちゃうユニエールさんって……」
「我々は生じゃないので」
「あ、そっか」
「まだこの世界の生が我々の世界に比べどんなものか分かってませんが」
チョロチョロ報を小出しにして遊ぶヒルデである。
これで騎士達に純正竜とタイマン張る存在だと言う報が與えられた。
そしてヒルデは草原し先の森から出て來る魔を知する。
「魔……ですか」
「えっ?」
冒険者ランクで言うとCのチャージングボアだ。
人の子供ぐらいのサイズのイノシシである。
「イノシシ?」
「チャージングボアのようですね。正直ただ突っ込んでくるだけのイノシシです」
魔は自然と《強化》を使用している。その力を使用した突進をするのがチャージングボアである。《強化》を使用している普通のイノシシである。
「あれが魔かー……でかくない?」
「この世界では知りませんが、我々の世界からしたら小さい方ですね」
チャージングボアは近くのいてるを狙う。つまり、近くを進んでいる學生達を狙う。馬車目掛けて真っ直ぐと突っ走るチャージングボア。
ヒルデからだいぶ遅れてそれに気づき、慌てて迎撃の準備を始める生徒達。
そこへ……。
「ひゃっはー! 魔は食料だー!」
グシャ!
「……マーナガルムや」
「……いや、すまん。力がりすぎた」
どこからともなく戻ってきたシュテルを乗せたマーナガルムが踏み潰した。正直食べれるような狀態ではない無殘な狀態である……。ちょっと地面も抉れている。
「まあ、良い。やってしまったは仕方あるまい」
潰れたから離れ馬車へ戻る最中、片は丸々焼かれ、凹んだ地面が戻された。
「お帰りなさいませ。楽しかったですか?」
「うむ。たまには地を駆けるのも悪くない」
「それはようございました」
「ではな、マーナガルム」
「うむ」
馬車と並走していたマーナガルムを送還し馬車へと戻る。
その後は特に何事もなく、目的地に到著した。
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