《現人神の導べ》23 実地訓練 4
フェルリンデン王國の王都から北側の領地。
その領地の北は森となっており、防衛拠點にもなっている。よって、そこそこ立派な壁に囲まれた街が存在する。
今回の目的地である街だ。ここを拠點に數日森へり、王都へと帰る事になる。
「おー……結構大きい街だね」
「北に森がある分、逆に発展したのだろう。恵みがあるということだからな」
「果実や薬草、更になどの魔素材ですね」
「なるほどー」
「まあ、治安はあまり良くなさそうだがな」
「「「えー……」」」
「冒険者達にとって稼ぎどころでもあるからな」
街はそれなりの賑わいを見せている。
武裝している者がかなりの數歩いており、冒険者達の多さが目立つ。たまに怒聲や毆り合いの音が聞こえるのは気のせいだ。
學園の生徒全員で同じ宿を取り、馬と馬車を預ける。
今はおやつぐらいの時間だ。森へは明日の朝から向かうので、今日はフリーである。パーティーごとに行し、明日の準備をするように……とのことだ。
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「明日の準備と言ってもよ、何がいるんだ?」
「それを考えて用意しろって事じゃないの?」
「保存食は分けて持ったしー……水は魔法でいい。武もメインとサブあるし」
「魔法薬ポーションも持ったしな」
「と言うか、基本全部空間収納の中にってるんだよね……」
「ユニエールさん達は……聞くまでもないか」
「そうな。空間収納に全部あるし、仮に無しで逸れても転移なり空に上がるなりすれば良いからな」
「よし、とりあえず街見て回るか。見れば忘れてるのあるかもしれねーし? あったら買おう」
「そうするかー」
長嶺、清家、宮武の話は纏まったようで、とりあえず観。目についたを確認しながら回る……と。強いて言うなら來る間に消費したを補充するぐらいだろう。
街へ繰り出すシュテル一行と騎士2人。
シュテルは布の寶石……レースたっぷりドレス。ヒルデはいつもの侍服。
長嶺は駆け出し冒険者的な魔の革裝備。宮武は魔法使い的なシンプルローブ。
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清家は和ロリである。
この集団が目立たない訳がない。
シュテルとヒルデ、騎士2人なら別におかしくはない。ご令嬢一行だろう。
長嶺と宮武もこの世界では一般的だ。問題はないだろう。冒険者だ。
清家は明らかにおかしい。
「めっちゃ見られててるんですけどー……」
「むしろ見られないとでも思ったのか? この面子で?」
格好もそうだが容姿も問題といえる。
パット見、く人形レベルの整いすぎたシュテルとクール系のヒルデ。
清家も可い系の白と珍しい狐っ娘。
長嶺は……イケメン? という微妙なライン。
宮武は可いというよりは人系で、比較的整っていると言える。
そして男1人の4人、ペット1匹である。
つまり目立つ要素しか無いのだ。容姿も目を引き、組み合わせも謎。
しかも騎士達はそれなりに距離がある。勇者達にとっては王都以外も初めてである。彼らにとっては街もある意味実地訓練なのだ。はじめてのおつかい……ではないが、近いと言えば近い。その為騎士達はわざとし離れて付いてくる。
ちなみに……護衛の騎士2人も実は形。
そしてここは冒険者達……荒くれ者が多い。
「おいおいすげぇな。姉ちゃん達そんな頼りない奴じゃなくて俺らと組もうぜ?」
「中心はその男ではなく妾だ。勝手に勘違いするな三下」
シュテルの発言によりピシッと空気が固まる。宮武は『なんで煽った!?』という顔でシュテルをガン見である。
「冒険者の常識だ。新しく來た街で絡んでくる冒険者はさっさと理的に黙らせる。そうすれば最初にしばき倒した者より弱いと自覚してる奴らは來なくなる。結果的に時間短となるわけだ。コツは下手に手加減せずボロ雑巾にする事だ。『あいつはやべぇ』と思わせたら勝ち。腕っ節の世界だからな。脳筋には語るより見せるか験させた方が早い」
「『…………』」
まさかの言いに周囲も絶句である。
このドレスの、見かけによらず兇暴である。
シュテルの國には神殿と言える見た目の冒険者ギルド本部がある。そこではシュテルを見た目で判斷し絡むバカを周囲の冒険者達とゲラゲラするのがお決まりだ。
何が質悪いって姿を微妙に変えて彷徨く遊びをしているのだ。共通なのは長が同じぐらいのでドレス姿。常連は逆に警戒しまくるから絡むことはない。
たまに酔った常連が絡んで後日頭抱えるのも案外ある話だ。當然周囲はゲラゲラしている。
そして復活した三下が頬をヒクヒクさせながら……やっぱり絡む。
「お、おう嬢ちゃん言うじゃねぇか……三下だぁ?」
「その魔力量に《魔力作》、更に立ち姿やのこなし……々Dだろう?」
「なっ……これでもCだ!」
「ほう? それでCあるのか。どう思うヒルデ」
「私も々そのぐらいだろうと思いましたが、我々の世界とは違いそうですね」
「我々の覚のズレではなく、基準の違いと見て良さそうか」
「まだ報が足りませんが、1つか2つ程ズレてそうですね」
「ま、三下に変わりあるまいが」
「我々と比べるのは酷でしょう」
「好き放題言いやがってこの野郎!」
三下と言われる男が真っ直ぐシュテルへと向かい、正面から毆りかかる。
當然當たるわけもなく懐にり、毆るために突き出された右腕を左手で下に引っ張る。同時に右手は男の腹に添えると……持ち上げられるようになり、丁度右手が真上になる時、魔法で吹っ飛ばすと同時に左手を離す。
すると……。
「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」
男が真上にふっ飛ばされて行き、び聲が木霊する……。
ふっ飛ばした本人はと言うと、上を眺めながら『えー……この辺りか』と地面に氷の槍を……當然天に向けてそそり立たせる。
もう、察してしまった周囲が止めにろうにも上から聲が聞こえてくる。
「―――ぁぁぁぁぁぁあああああ!? ささ、ささるううううううう!」
丁度男の腹に突き刺さる位置であり、皆が未來を想像して視線を逸らす中、氷の槍のギリギリで止まり、失神した男はポイッと捨てられる。
「普通に考えて殺すわけなかろう全く。それにそいつでも十分対処可能な氷にしてやったと言うのに……バカ正直に腹から落ちてくるやつがあるか。急時の対処に難あり」
「一般人ならまだしも、冒険者としては頼りないと言えますね」
「急時の判斷がそのまま生死に繋がる……それが冒険者だからな」
「いやいや、あんな真上に吹っ飛ぶ事早々無いんじゃ!?」
「まだまだ認識が甘いな宮武。その一回の判斷ミスで死ぬと言っているんだ。確かに真上にふっ飛ばされる確率はかなり低いだろう。だが、変わりに真橫に吹っ飛ぶ可能の方が高い。どちらが安全かというと真上だ。滯空時間があるからな。真橫だとすぐに何かに當たってぺしゃんことかザラだぞ? 真上ぐらい対処できんでどうする」
「でもあんな數メートル飛んだ時點で死ぬんじゃ……?」
「それは6番世界の常識。魔法や《強化》が使えるこの世界じゃあの程度無傷で降りれるぞ。今度ふっ飛ばされた場合の対処法と、そもそも飛ばされない方法を教えておくか」
「「「ええっ」」」
「その方が良いでしょう。大型相手なら簡単に人は飛びますからねぇ」
「そうだな。……さて、お前達は思いつかなかったようだから教えておこう。新しい街に來たらまず冒険者ギルドに寄れ。そして周囲について尋ねろ。という事で、ギルド行くぞ」
「「「あっはい」」」
余計なことを言ったせいでふっ飛ばされる事が決定した3人を連れ、愕然とする周囲の冒険者達を放置し、冒険者ギルドへと向かう。
騎士2人もちょっと慌てて付いてきた。
「ようこそ冒険者ギルドへ、ご用件は?」
「學園から來たものだ。明日行く森について訪ねたい」
「えっ?」
「……あ?」
やって來たのは冒険者ギルド。
街が街だけに、周囲に比べるとギルドは結構な大きさを持っている石造りだ。
中は付のいる複數のカウンターと依頼が張り出された依頼板が存在している。
正直役所だ。結構な數の冒険者達がいる模様。
ガン見してくる冒険者達をガン無視し、付へ直行。
別におかしな質問をした訳ではないのになぜ驚かれるのか。
「學園と言うと……実地訓練ですよね……?」
「そうだが?」
「なぜ今? 王都のギルドに連絡はれたはずですが……」
困している付嬢であった。
面倒事、いらっしゃい。
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