《現人神の導べ》39 第4番世界 國境の街

何個かの村や街を経由し、フェルリンデン王國最後の街へと向かう勇者一行。

街が近いのでマーナガルムは送還され、フィーナは普通に歩いている。

シュテルは変わらず書類処理。10番世界にいる分も今はそれなりに忙しい。

一番暇なのが6番世界の本だ。

「もうすぐ年末。つまりパーティー地獄だな。自國の新年祭と、毎度恒例ファーサイスの新年祭と、我が國の建國記念日も來るな。一度全員戻すか?」

つまり準備だ何だと書類が増える。浮かれたバカも増える。

「もうこっち來て1年近く経つのかぁ……」

「まだ生きてる……と言うか、これからが本番だよねぇ……」

「このになって1年近く経つのかぁ……」

「『…………』」

しんみりしたと思ったら清家の呟きにより全てが持ってかれた。

「……変わってみたいと思いませんか?」

「『思いません! 目がマジなんだけど!?』」

「チッ……」

とかやっていると、狐っ娘である清家が耳をピクピクさせて魔に気づく。

清家の見た方にはウルフが1匹だけ歩いており、それ目掛けて消えるように駆け出した。

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「ひゃっはー! ウルフは焼だー!」

「……完全に食獣」

「楓大丈夫かあれ。能上がった変わりに脳が退化してないか?」

「野生に目覚めちゃった?」

「いや、ありゃただ食い意地張ってるだけだ」

6番世界で焼はそれなりに値が張る。だがこの世界なら向こうほどいいでは無いにしろ、問題なく食えるが狩りで手にる。

今の清家なら2桁に屆く集団にならなきゃウルフは問題ない。空間収納にれておけばやりたい時に焼ができ、売ることもできる。

と言うか、焼してもウルフ一匹は食いきらん。余裕で余るのだから実にいい。

元中學男児、が好き。

問題があるとすれば、今の清家の見た目がちょっと向こうの平均に屆かない小柄で、和ロリを著た狐っ娘という事か。完全に食獣が獲を狙う目になっている。

キラキラした目? いやいや、ギラギラした目。

絵面がやばい。

倒したウルフを持ってきて、ヒルデに渡す。

されたを空間収納へとしまって街を目指し歩き始める。

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この世界、街は基本的に城郭都市だ。街を壁で囲まないと魔に襲われる。村は流石にそうも行かないので、木材で柵を作ったりする。無いよりはマシだろう。

フェルリンデン王國の東側最後の街は國境ということもあり、萬が一他國に攻められた場合に備え、他の街よりも立派な壁が存在する。

國境と言うのは良くも悪くも人が多い。

よって、王都ほどではないが規模はそれなりに大きく、辺境伯が治めている。

他國のものが一番にる場所だ。人はともかくを求めて人が集まる。

街へるために西側の門へと並ぶ。前には行商人や冒険者などが並んでいる。

「こういったところはどうしても治安が悪くなる。注意するように」

「『はーい』」

「なんか引率の先生になった気分だな……よし、たまにはでかくなるか」

シュテルがボンキュッボンのクール系へと変わる。168センチだ。

ちなみに服裝は星晶シリーズである。

「前々から思ってたんだけど……ヒルデさんって何センチあるんですか?」

「私は174センチですよ」

「はぁー……日本の男と同じぐらいあるんだ……」

「ああ……たわわに実った果実が更にたわわに……妬ましい……」

「これでも穣系だからな。地母神とも言える。慈? 知らない子ですね……」

「あ、なるほど……」

10番世界の者は平均長が高い。

【魔法】でどうにでもなるとは言え、魔と戦うにはあった方がいいだろう。

何だかんだで時間が過ぎ、冒険者の証であるドッグタグを見せる。その際ちゃっかり表示されている【稱號】を見てさっさと通して貰えた。

[異界の勇者]

  勇者として異世界から召喚された者に與えられる稱號。

実にシンプル。

やはり稱號はパット見で分かるじゃないと。

ちなみにシュテルは『時空と自然を司る神』になっていたので、勇者に変えた。

この冒険者の証であるドッグタグは創造神様に作られた特殊なだ。干渉できるのは同じ神のみ。誰一人として偽裝などは不可能なである。

よって、書いてある事は信じられてしまうので速攻で勇者に変えた。

面倒なのでフィーナとエルザとイザベルもである。

「いつも通りまずは宿だ。そしたらギルドで売り払い、補充するぞ」

「『はーい』」

早速観と行きたいところだろうが……特に寄り道することもなく、ぞろぞろと大通りを歩く。

勇者達はシュテルからまずは宿。そしたらギルドに行って素材を売る。その金で消耗したを補充。観するならその後だと言われている。

何故かと言うと、街だから絶対安全……とは言え無いからだ。いつ魔が來てバタバタするかも分からんこの世界。補充するなら早い方が良い。

時間の止まる空間収納"ストレージ"が使えるから尚更だ。

他にも理由はある……『王都の規模をめたじ』という想である。

つまりはしゃぐような街並みではないという事だ……。

國で一番栄えるのは王都だろう。同じ國だから建築方式が似て、材料も似るのは當たり前と言える。王都から來た勇者達からしたら、地方特有の部分しか見るところがない。

なんとかの産地! うちはなんたらに力れているんだ! という街ではないのだここは。ただの國境にある防衛寄りの街と言うぐらいである。

気になってしょうがないがこれと言って無いので、大人しくシュテルに付いて宿に向かう勇者達であった。シュテルの側が一番安全だし。

シュテルの空間把握により誰かに聞いたり、空いてるかどうかも心配する必要もなく真っ直ぐ宿へ向かう。

大通りからし外れた家族経営の宿にる。

「いらっしゃいませ!」

「12人だ、3日ほど泊まれるか?」

「はい! お部屋はどうしますか?」

「大部屋はあるか?」

「ありますよ!」

「ではそちらで構わん」

「分かりました! 大部屋の場合ご飯を付けると―――」

しかし相手からするとあれなので、ちゃんと會話はする。

付にいたのはだが、しっかりしており問題なく仕事をこなす。

「ではし出てくるぞ」

「はい! いってらっしゃいませ!」

元気なに見送られぞろぞろと宿を後にし、全ての視線を無視して冒険者ギルドへと向かう。

ギルドに到著して中にり、同じく集まる視線をガン無視してレート板へ。

「ふむ……」

「えっと……思ったより安くない……と言うか、悪くない?」

「獲ってくる冒険者が多くても、街がでかければ消費も多いからな。ここで手放すのはありだぞ」

「むむ……オークこの値段って悩むなぁ……」

「コケッコーも悪くないよ?」

シュテル一行を除いてパーティーで話し合いを始め、何をどれ位手放すか決めている。こういう時、シュテル達は口を出さない。失敗しても多損するぐらいだし、どうにでもできる問題だからだ。これも経験。

レート板からし離れて、通ってきた街のギルドでメモってきたレートも見ながら

相談してるを見守るシュテル一行。フィーナはレート板を眺めていた。

そして、弾を放り投げる。

「ん~……お母様、ワイバーンの売っていい?」

「自分で狩った奴でしょう? 好きになさい」

「1キロこの値段なら……2キロも売れば十分かな」

『買い取りお願いします』となんでもないかのように1キロブロックが2個、付に出された。しかも空間収納から。

改めていうが、この世界にとって空間収納はレアな魔法である。

「…………ほ、本のワイバーンのだ……」

「『まじかよ!』」

フィーナの発言で靜まり返ったロビーは、付嬢の一言により再び……いや、いつも以上に熱を持つ。

「しかも"ストレージ"か!? すげぇじゃん! うちのパーティー來いよ! エルフちゃんとかもう―――」

「親の前で娘をナンパとはいい度だな小僧」

「『ヒィッ!?』」

シュテルの威圧によって再び靜まり返るロビーであった……。正直他の奴らはとばっちりである。

そして、実に殘念そうな清家の聲が靜かなロビーに響く……。

「ワイバーンの売っちゃうのかー……」

「お母様いっぱい持ってるでしょ?」

「ワイバーンのなんてそんな無い」

「……そっか、中途半端過ぎるか」

「食材狙いならワイバーンなんてスルーして純正竜とか、アシェットキングクラブ……後はグロマグロとか狙うわ」

「お母様ならそうだよね~」

「『は?』」

竜種のとは言え、竜種にも種類がある訳で。

亜竜であるワイバーンは高級食材。純正竜は生最強種で最高級食材だ。

グロマグロは高級食材。アシェットキングクラブは最高級食材だ。

ワイバーンはB+で、純正竜はSSS。グロマグロがAでアシェットがA+になっている。

ワイバーンの見た目はよくある飛竜。純正竜はドラゴン。

グロマグロは……巨大なに小さい頭。小さい頭を隠すように手が大量にあり、捕らえて食べる。大型食マグロだ。

アシェットキングクラブは……足を広げると10メートルを超える超大型甲殻類。當然両手のハサミもでかく、非常にい。挾んだり叩いたりしてくる。

人類がこの中で普通に獲れるのはワイバーンぐらいだろう。純正竜は論外。

グロマグロとアシェットは海だ。非常に不利。特にアシェットキングクラブは海底にいるから姿すらろくに見れないだろう。

10番世界はアトランティスにある創造のダンジョンからシュテルが獲ってくるため、最高級食材とされているアシェットキングクラブと純正竜。

4番世界では幻と言って良いかもしれない。

「と、とりあえずこれが料金になります……。あの、気をつけて下さいね……」

「むしろ私を狙った人に同しますけどね……」

そう言ってお母様……シュテルを見るフィーナであった……。

當然、フィーナを狙った者を許すわけもなく。

「フフフフ……」

目が笑っていなかった。當然ヒルデやエルザ、イザベルも目が笑っていない。

お母様はシュテルだが、兄と姉ポジションに眷屬達がいるのだ。

フィーナとてSSの腕があるというのに、過保護な家族である。

が、基準が違うのだ。この家族からすればSSしか無いのだ。神と眷屬の戦闘力はぶっ飛んでいる。

そして、ある意味シュテルに慣れてる勇者達はこの間に話を纏めていた。

ギルドに売り払い、それなりの額を手にれた。

用がすんだので冒険者ギルドから撤退し、店を回って消耗品を補充。

付いた時には夕方近かったので、宿へ帰りのんびり過ごした。

勇者一行が出ていった後、ギルドはバタバタ大騒ぎになりワイバーンのをどうするか決めていたようだ。

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