《現人神の導べ》48 第4番世界 魔法

「ここでしばらくお別れかー」

「だなぁ。こっちはユニエールさんいるけど、そっち気をつけろよー」

「まあなんとかするさー」

王都エスカーテ行きと、魔導開発都市ランテース行きの分かれ道で立ち止まり、一時の別れの挨拶をする勇者一行。

一緒に異世界召喚され既に1年近い。一緒に戦闘もし、覚としては友達とかではなく戦友である。背中を守り守られした仲。厚い男の友

手を振りながら遂に本來の1パーティーへと別れた。

それはつまり……。

「……遂に男一人か。肩が狹い」

「おう、頑張れよ」

「かえでぇ……」

「楓はすっかりこっち側だから……」

「でしょう?」

「くそう……」

1人嘆く長嶺を放置し、歩いてランテースを目指す。

ずっと歩いて旅をしているわけだが《強化》しているため、速度自は中々のものである。

たまにシュテルから『先に行って歩いてるから、そこまで走って來るように』とかで度々訓練している。どうしても戦闘は力勝負だからだ。

実は《強化》での走り込み、良い訓練になる。走ることによる力は勿論、《強化》による魔力消費や強化合の調整練習になる。

考える時間なんか戦闘中は無いのだから、日頃から無意識に、反的に調整できるよう慣れる必要がある。

疲れすぎないよう、適度に繰り返しさせる時間を作ってやるのだ。後は寢る前などに軽く模擬戦をしたり。シュテルがいる限り見張りは不要。じっくり寢れるのが分かっているので、寢る間にかしてから寢る。まさに継続は力なり。

「お、あれがランテース?」

「そうね」

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エスカランテ王國で王都の次に栄える都市、魔導開発都市ランテース。

外から見たじはそれほど他の街との違いはじられないが、魔の侵を防ぐための壁はかなり立派だ。それと、この世界にしては背の高い建などが目にる。

ただ、上にでかい建は日本人からしたら高層ビルがあるので別に……と言うじである。よって、それには目もくれない勇者3人であった。むしろ立派な壁の方がするのだ。

街の中へとると、魔法使い! と言ったじのローブを著た者達が大量にいる。ギョッとする程度には沢山いる……。勇者3人ちょっと引き気味である。

理由は至って簡単。

魔法先進國のエスカランテ王國にある、魔導開発都市だ。魔法を教える學園もあるのだから、世界中から魔法使いが集まってくるのだ。

當然全員が開発に攜われるわけもないが、魔法を開発するなら、魔法使いが使う魔法などの研究も當然行うだろう。それらを買い求めに來たりもするわけだ。

だからそこらにローブを著た魔法使い達が大量にいる。

「宮武にはもうし良い杖がしいところね」

「これでも特に困ってはないけど……」

「それしか知らないでしょう? 魔法は合わせないと逆に効率下がったりするのよ。実力があればあるほど、オーダーメイド品を持つものよ」

今の魔法は王妃が用意した何種類かの中からシュテルが持ち手に合わせて選んだだが、ベストとは言い難い。無いものは選べないのだから。

魔力濃度や魔力量、得意屬に実力などで持つべき魔法は変わる。

魔法は長いほど魔力作を助け、短いほど魔力増幅を助ける。

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その為見習いほど長く、ベテランは短くと言われている。

だが、當然そんな単純な事もなく。

使い手の《魔力作》や魔力濃度、魔力量によく使う屬で杖の素材やら長さに左右される。

よって、杖の長さで実力を図るのはお勧めしないが、どういうスタイルかはある程度分かる。長い杖なら燃費重視、短い杖なら威力重視だ。

まあ、シュテルからしたら燃費重視一択なのだが。魔力切れで戦えませんでは話にならんのだ。杖での強化合は々1.1倍から1.3倍ほどしかない。攻撃し続けられる方が良いだろう。しかも魔力切れは調不良にも繋がる。戦闘中にそんなんなられたら邪魔でしか無い。

魔法薬ポーションでマナポーションがあるから大丈夫とは言え、買いまくれる程安いとは言い難い。

作るのに手順があり、全て手作りだ。素材も森などに採りに行く必要がある。

魔法薬屋が採りに行けるわけもなく、冒険者達への依頼になるので依頼料がかかるし、そんなこんなでどうしても魔法薬の値段は上がる。

魔法薬ポーションの飲み過ぎもよろしくない。

一時的に『ポーション中毒』というが発生し、吐き気や目眩に襲われる。

魔法使いにとって、魔法……杖は非常に重要なだ。

見た目は木の棒だが武には変わりない。剣などと同じく拘った方が良い。

剣も杖もオーダーメイドは當然高い。店に置いてある杖で自分に合うのがあるかは運次第だ。合うのがあったら実に幸運と言える。

「有名な魔法の店は……サイズ的にあれかしらねぇ……」

「魔法って魔裝じゃないの?」

「んー……魔裝って戦闘に使う魔道だから、魔法とは別ね。杖に魔法が仕込まれていたりするなら魔裝とも言えるわ」

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「あくまで補助をしているだけだから違うのか」

「そうね。それに魔法を使う魔導開発都市の方が魔法のテストもできるから、王都ではなくこちらにあった方が々便利なのよ」

「そっか、魔法のテスト環境にもなるのか」

話しながら他よりも明らかに大きい建へとやってくる。

のサイズ的に有名な店だろう。魔法以外にも魔道や魔裝が並ぶマジックアイテム専門店的な事になっている。

ちなみに魔道、魔裝、魔法を纏めてマジックアイテムと言う。

魔法関係の総稱だ。

「いらっしゃいませー」

魔道の燃料となる加工済みの魔石がサイズ別、屬別に並んでおり、それぞれ違う値段が付いている。

「やっぱ屬でも値段差出るんだ」

「取りやすい屬とかあるからね」

「水の魔石が思ったより高い……」

「水屬の魔は當然水辺にいる。人間には戦いづらくリスクが高い。でも水の魔石は水を出す魔道などと相がいいため需要はある」

「結果、値段は上がると……」

「そういう事」

火屬の赤い魔石を使用して水の魔道を使うと効率が悪い。それはつまり魔石の消費が早いのと同義である。それは當然お金がかかる。

火はコンロなど、水は水筒など、風は扇風機など、土は農などに使われる。

勿論それら魔道もお店に並んでいる。

「コンロはちょっと惹かれる」

「木集めるのも面倒だしなぁ」

「水筒って……これいる?」

「私も思ったけど、保有魔力が低い者は重寶するらしいわよ」

「へぇー……」

「後あれ、お城勤めの者とかね」

「……何でお城?」

「下手に魔法使う訳にはいかないところとか、そもそもアンチ結界で使用できない場所で使用するらしい」

「そっか、"魔封結界アンチマジーアフィールド"か。持っといた方が良いかな? 3つ買う余裕ぐらいあったよね」

『らしい』とか言ってる時點でお察しである。當然シュテルはそんな気にしちゃいない。魔封結界は者より上の者を封じることは出來ないのだ。シュテルを封じれるのなんか創造神様ぐらいである。そもそも水飲まなくても死なないし。

魔法で魔法封じるの? は? とか思っても無駄だ。魔法法則にあるんだから仕方ない。そういうものだ、諦めろ。

結界の側にいる者を纏めて封じるなので、大お城の重要區畫などに魔法裝置として使用されている。

それ以外にも不法侵を防ぐための転移封じや、"理結界マテリアルシールド"に"魔法結界マジックシールド"などがられている。

つまり、実はお城で魔法を使われる時點で大事件だったりするのだ。

結界が効果を発揮していないという事は、結界を用意した者より上である。そして當然お城の結界を確認する者はその國の筆頭だ。

まあ、神様相手に張り合うだけ無駄。

「農はまあ……いらねぇか」

「農家じゃないからね」

「寢床整えるのにわんちゃん」

「無い……な、うん」

「今迷ったな?」

「うるせ」

の前でバカやってる長嶺と清家を放置して、宮武と魔法を見に行く。

「…………そう都合よく合うのは無いか」

「外れ?」

「そうね。わざわざ買ってまで変える程合うのは無いわね。としては悪くないのだけれど、魔法は合うかどうかが肝心」

「まあ、私はそこまで困ってないんだけど……」

「ふむ……丁度いいから験してみなさい」

まず今持っている……自分のやつに魔力を込めさせる。

その後、店ので宮武に合わないワンドを渡し魔力を込めさせる。

「なんだろう、違和がすごい」

「次はこれにやってみなさい」

更に店ので買って変える程じゃないけど、合っているを持たせる。

「おお、なるほど……確かに違う……」

「結構分かるでしょう?」

「うん…………これ杖2本持ちしたらどうなるの?」

「左右で違うから逆に難しくなるわね。木だから完全に同じは不可能よ」

「そっか……ユニエールさんがこれ持ったら壊れる?」

「それに限らずここにあるのは全部壊れるわね……と言うか―――」

「むむむ! それは聞き捨てなりませんなぁ。うちは品質が一番だと自負しておりますぞ」

と、背後から中年……40ぐらいの男がやって來た。

『うち』と言った通り店主である。

「この店の品質がどうのではなく、そもそも素材的に耐えられないのよ」

「またまたご冗談を。なんでしたらこれでやって見せて貰いましょう。本當でしたら魔法1本差し上げましょう」

「あら、それなら遠慮なく貰っていきましょうか」

店主が棚から取った一本をけ取る。

折角ただでくれると言うのだから、貰えるものは貰って行こうではないか。

け取った魔法は長いスタッフだ。長ければ長いほど《魔法制》を助ける……そして長い方が容量が大きく壊れづらいとされるのだが……。

パァン!

そんな事をガン無視して、魔力をし流した瞬間杖が割れ……るのではなく、部から木っ端微塵に弾け飛ぶ。

「なっ!?」

「うわっ」

割りと大きい音をさせてはじけ飛んだため、宮武と商人がびっくりするが……商人はどちらかと言うと音より木っ端微塵になったことに驚いていた。

普通魔法が壊れるにしても割れたりするぐらいである。

「ではありがたく貰うとしましょう」

杖は値段ではなく合うかどうか。

棚から宮武の長を考え、し先のを選んで渡す。

「さっきのより微妙に使いづらい気がするけど……?」

「さっきのは『今の貴』に、それは『し先の貴』に合わせた

「これが使えるようになれってことだね」

「そうね。でも特別な事をする必要はない。今まで通りで良いわ。近いうちに使えるようになる」

ちょっと気の毒そうにフリーズしてる商人を見る宮武も、貰えるはバッチリ貰う模様。自分の武だから尚更か。

自分から蒔いた種とは言え、1本吹き飛ばされた挙句に1本持ってかれるという狀況である。

そもそも言葉を遮らなければ『普通の木材じゃ無理』という言葉が聞けたのだ。

「これだけの店を持っているのだから、目と覚は確かなのでしょうね。私の偽裝を見抜けなかっただけで」

「偽裝……」

「私から魔力をじないからあれを渡したのでしょう? そうしている・・・・・・のだから、そう思われても別に怒ったりはしないわ」

「驚きの《魔力作》ですな……」

「品自は良いものよ。素材自が私の魔力濃度に耐えられないだけね」

「魔力濃度ですか……」

極端に言えば、『保有魔力量が極端になく、魔力濃度が極端に濃い』人と『保有魔力量が極端に多く、魔力濃度が極端に薄い』人が、実際に戦ってみると同じ……ということだ。勿論それ以外……保有魔力量と魔力濃度以外は同じ人間の場合。

保有魔力量が多くて魔力濃度が濃い人はかなり魔法使いとして有利だが、魔法の用意や《魔力作》の面で凄い苦労をすることになるだろう。

量の魔力で他の人より遙かに多いエネルギーが発生する。それはつまり魔力暴走に繋がり、魔法陣に危険と判斷され魔力を飲み込み自壊される。発しないのだ。

魔力濃度が高いと長い魔法……スタッフにするしか無い。濃度が濃いなら長い杖に逃しながら使用する。かと言ってしょぼい木だと耐えきれず壊れる。

魔力濃度は生まれつきと言えるが、保有魔力量は長し続ける。濃ければラッキーぐらいに思っておけば良いが、最初に苦労する。

まあつまり苦労するポイントが違うだけで、苦労することには変わらんのだ。

「武は見つかったのですかな?」

「ええ、結局最初から自分の力に馴染ませながら自作したわ」

「自作! 魔導技者でしたか!」

「ああ、そう言えば宮武」

「はい?」

「貴がこのまま頑張って、持つに相応しくなれたらなら、私のお古を貸してあげるわ。死ぬまで貴に預けましょう。この……月杖・エーレンベルクを」

最早自分でも使えなくなった……月神の模造の頃に使っていた月の神

シンプルな棒の先端に大きな青白い球が浮き、その球の周りを2つのリングが差するように回る、2メートル超えのスタッフ。

金屬の魔導であり、ルミナイトとルナクォーツでできている。

ルミナイトは黒く、魔力を流すと魔力のラインが走るサイバーチックな金屬だ。ミスリルを超える魔力適を持ち、強度も魔力次第ではアダマンタイトも超える。

ルナクォーツは他の寶石と違い、全ての屬に適を持つ月の寶石。

持たれてもいないのに宙に浮き、リングが回っているロングスタッフ。

「「ふおおおおお!」」

宮武と……商人までテンションが上がっていた。

「そう簡単には貸さないわよ。生半可じゃどうせ使いこなせないし」

「頑張る! 超頑張る!」

「そうね……既存の武じゃ武が足引っ張るレベルまで行ったら……私が作ってあげましょうか」

「「お、頑張ろう」」

これぐらいでやる気が出るなら安いものだろう。當然作ってあげるのは魔裝だ。流石に神はやらん。既にあるエーレンベルクを貸し出すぐらいだ。

「他の勇者達にも知らせておきましょうか。人間はに素直だし」

「え、勇者ですと?」

勇者に反応した商人に黙ってギルドのドッグタグを渡すシュテル。

そこには稱號に[異界の勇者]と書かれているから、見れば一発だ。論より証拠。

「おぉ……なんと。……そう言えば今回、勇者様は多いとか?」

「大30人いるわね。あの2人と同じ黒髪黒目が。エスカランテには私達の他にも4人パーティーが王都に向かったわ」

「なるほどなるほど……。正直なところ、実力はどんなもので?」

「大30人いるから幅あるけれど、私達以外は平均B……と言ったところね」

「私達以外は……?」

「そっちの3人は大Aあるかどうかぐらいね」

「ふむ……」

そっちの3人は……勿論長嶺、清家、宮武だ。

ならそれ以外の……貴達はどうなんだって目をしている。杖を木っ端微塵にして見せたし、気になるところだろう。月杖・エーレンベルクも目にしている。

「さて? 見た方が早いかも知れないわね」

そう言ってクスクス笑う。

さすが一流商人と言ったところか。シュテルの微笑み相手に持ちこたえる。

そして微笑みから一転、鋭くなる。

「悪魔が來てるのよね」

「「「えっ」」」

「はい?」

踵を返し店から出る。

その後を付いてくるヒルデ達と、ちょっと慌てて出てくる3人と商人。

シュテルは東の空を見つめる。

強化》して実際に來る悪魔達を見たフィーナが呟く。

「おー……、結構來るねー」

「ふむ、先に宿をとっておくんだったわ。下手したら野宿ね……やれやれ」

「辛うじてっ! 黒いのが見えるけどっ! 何か分からん」

「うん、分からん。報無しでぶっつけ本番かぁ」

「悪魔の報自無いし、結局ぶっつけ本番じゃない?」

「……確かにそうだ」

「何はともあれ、準備するか。街にまで被害が出たら非常に困る」

「じゃあギルドに連絡ね」

商人のおっちゃんを放置して勇者達はギルドへと向かう。

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