《現人神の導べ》54 第4番世界 障害……?
シュテルは走らないという事を知っている勇者達3人はし先行し、あっちにフラフラこっちにフラフラと店や店に突撃しながらギルドへと向かっていく。
置いていく事もなく、置いていかれる事もなく絶妙な距離を保ちつつ、新たに來た街を見ながら進んでいた。
シュテルの歩く速度が一定なのもあるだろう。容姿や格好、存在のせいで他の人達が避け、道ができるのも速度が変わらない理由でもある。
そしてそのままギルドへと突撃していった。
敵の討伐はアーティファクトであるギルドの証が勝手にカウントしてくれるので、付嬢はそれをチェックしながら一覧にある金額を渡していく。
ない順にシュテル、長嶺、宮武、清家、エルザ、イザベル、フィーナとなった。
ヒルデは元より何もしてない。
勇者達の中ではこの順位だが、冒険者達の中で見るとトップに並んでいる。
シュテルは後ろに抜けた數匹しか倒していないから下だが。
清家に宮武は予め対悪魔用のポンポン砲を開発していたため、討伐數を稼げた。
長嶺は降りてきた悪魔を盾で防ぎつつ倒していたので、2人とは討伐數にそこそこ差が出ている。
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エルザとイザベルは個人飛行が可能なので空中戦で稼げる。
フィーナは固定砲臺として範囲魔法で薙ぎ払っていたためぶっちぎりだ。
「うん、良い臨時収」
「相手が空だと、俺はいまいちだなぁ」
「じゃあパーティー分抜いて……三等分ね」
ギルドロビーの隅にある機を占領し、金勘定をする勇者3名。
その隣の席で優雅に紅茶を飲み始めたシュテル。
「貰っても使い道がないんだけど……どうしよう?」
「我々は使いませんからねぇ……」
「そこで金勘定してる3人にでもあげればいいわ」
『あげるー』とたんまりった袋が機に置かれ、『ではこちらもどうぞ』と眷屬騎士2人の袋も置かれる。
「「ええっ!?」」
「おほっ……大金……。と言っても、こっちもそんなお金使ってないんだよね」
「そう言えば長嶺が盾しいって言ってたよね」
「あー、カイトシールド辺りがしいねぇ」
「じゃあこのお金で買って、殘りはパーティー用ね」
「「おっけー」」
「……でも本當に良いの?」
「我々は既に最強裝備と言えるから、変える必要はない。萬が一お金が足りなくなっても、空間収納の中にある素材売れば十分なのよ。裝備は基本消耗品よ。お金は持っておきなさい」
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シュテル一行の持つ裝備は4番世界にはそもそも素材がない。しかもシュテル以外に直せる者はいないだろう。素材的にも魔導技的にもだ。
と言うか武は魔力の刀と魔力の盾なので、個人の魔力で修復される。
防もアダマンタイトを超えるマナタイトクォーツに星魔布だ。そもそもそこらの敵に遅れを取る事はないので、防は無傷。
シュテルが持っているのは神なので、欠けることすらあり得ない。萬が一欠けても、植型の生兵と言えるので自然神の力で直る。
それに比べ勇者達3人は普通にミスリルとの合金だ。魔力を流すことによる強化でかなりの耐久を誇るとは言え、常識的と言える金屬だ。耐久は技量に依存するので折れる時は折れるし、欠ける事もある。
裝備に気を使わない者は間違いなく早死にする。ゲームみたいに『この裝備じゃ無理だ、撤退!』とかそうもいかない。撤退(あの世)になるだろう。
高ランクの魔になるとミスリル程度簡単に貫いて來るが……その辺りになると、そもそも當たったら死ぬと思え狀態なので、また別の話だ。
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「昨日活躍した勇者達は來たかな?」
と言いながら、服に魔導開発機関の証がった服を著た1人の男がギルドにってくる。魔導開発は國営であり、偽裝は法によって罰せられる。
魔道の発達している國なので証自が特殊であり、偽裝してもすぐバレる。
この男を目撃した冒険者達の反応は微妙である。実に何とも言えない顔だ。
それは昨日の襲撃時の魔導開発組の指揮だった男だからである。
「何か用かしら」
「見たことのない魔法に、見たことのない裝備。とても気になってな。特にその剣にそっちの娘が持っていた弓、我々が預かろうじゃないか。なに、解析後に返す」
「こいつ、私の嫌いなタイプだわ」
「私もー」
「……このタイプが好きな者がいるのですか?」
「「いないでしょう」」
典型的なゴミ貴族の思考である。
発せられる言葉は全て命令形であり、拒否権はない。言うこと聞くのが當たり前。言うこと聞かなければ逆上し権力に言わせて……という思考だ。
まさか勇者と言えど冒険者に斷られるとは思って無かったのか、見る見る顔が赤くなる。
しかも勇者一行、長嶺を除き皆である。男の小さなプライドも刺激する。
「侯爵であり魔導開発の責任者の1人である私の渉を斷ると……?」
「渉をされた覚えは無いわねぇ……」
「飲むのぐらい止めたらどうだ!」
「貴方に払う禮儀は持ち合わせていないわ」
シュテルは紅茶飲み継続どころか、顔すら見ていない。完全に眼中に無いというレベルである。
勇者3人はと言うと、『こうしゃくって……どっちだ?』とヒソヒソしていた。
召喚の影響により言葉が自変換されるため、日本語では漢字の違いになる。
上から2番目……王族の下であり、王族のが混じっている可能もある公爵と、その公爵の下になる侯爵。この差は地味に大きいだろう。
「権力だろうが武力だろうが、『力や影響力』を持つ者がバカで無能なのは大嫌いなのよ。権力を持つバカも武力を持つバカも苦労するのは全て回り。持っていると自覚するのは最重要だけれど、自覚した力を悪用してどうする」
シュテルは當然『力』を持つ者である。
それどころか正真正銘一柱であり、最高の権力者である國王すらも凌駕する『力』の持ち主だ。
國王の影響力は表の1つまで周囲が気にするレベルである。當然一柱のシュテルもそれに該當し、國王より気にされるのだ。機嫌を損ねたら損ねた個人が死ぬだけならまだしも、國にまで行く可能があるのだから。
とは言え、周囲4大國の王や自國民達はシュテルの格を知っているのでそこまで気にしてはいない。
しかし、そうは言ってもいきなり目の前に総理が來たら張もするし、気になるだろう。かれたら抗いようがないのだから。
『力や影響力を持つ者』が言った事は全て命令に等しい。貴族が言った時點で平民からしたら命令である。
神が言った場合は……言える事は『はいかYes』だ。『聞き返す』『躊躇う』ことすら許されないレベルの命令である。
まあ、中には『神様に指示された』と喜ぶ特殊な者達もいるが……そいつらは置いておこう。
以上の理由からシュテルはかなり気を遣っている。言は勿論表にもだ。作は優雅に、言葉は誤解の無いように、表は穏やかに。
人間は同じ言葉でも人によってけ取り方が変わる非常に厄介な生きだ。相手の思考を読みつつ、誤解の無いように言い理解させる。これを怠ると後々面倒になるのが分かりきっているので手が抜けないのだ。面倒だが重要である。
何かを決める時も曖昧にせず、出來る限りはっきり分けるようにしている。
好き勝手やっているが、その場合はどっちでもいいかどうでもいい場合だ。
売られた喧嘩は喜んで買う神であり、真面目な時と遊んでる時の落差が酷い神でもある。
そして今まさに喧嘩を売られ、どうでもいい案件である。
「ばっ……下手に出たらいい気になりおって!」
「いつ下手に出たのよ」
「ええい! 黙って差し出せ!」
「いやよ。そもそも冒険者相手に武を置いてけとか誰が置いてくのよ」
「後悔させてやるぞ小娘……!」
「誰が小娘か。叩き出しなさい」
「ふん、この私を叩き出……何をっああああぁぁぁぁぁ!」
『この私を叩き出せる者はいない!』とか言いたかったんだろうが、エルザが襟首を摑んで出り口に向かってゴミを捨てるように投げ捨てた。
「どう考えても人選ミスでしょう……あれは」
「魔法開発以外の能力は死滅してるのかしら?」
間違いなく判斷能力は死滅してるだろう。悪魔達を簡単に捻った我々は明らかに強いと思うはずなのだ。にも関わらずあの態度……普通はしないと思う。
「まあ、大ああいうのは何かしらの実績しさでしょう」
「実績がしいのに喧嘩売りに來るんですから、未だにあの人種は理解できませんね。侯爵風が……危うく叩き切りそうでしたよ」
「そう言えば……イザベルも生まれは侯爵家だったわね?」
「ええまあ、末っ子なので近衛になったのですが……そこに侯爵令嬢で侍に走った者もいますしね」
「私の時代は子沢山でしたからねぇ……好きにさせてもらえましたよ」
「そもそも當主とかゴメンですし、優秀な兄がいて良かったと心底思いましたね」
「私も夫人とかゴメンですよ。新人教育している方が有意義です。侍従科は実に良い息抜きです」
「本當に貴はよくやりますね……。2日ユニ様に付いて、1日の休みで侍従科に行って新人教育とは……」
「貴達だって対して変わらないじゃない。代で護衛に立って、休みは訓練場でしょう? 冒険者達を鍛えているのは知っているんですよ」
「それは私だけじゃなく他もそうですよ。どうせなら違う者と模擬戦した方が良い刺激になりますからねぇ……ついでに教えれば復習にもなりますし?」
「私からしたらどっちもどっちよ。休みがあるのに行くのは訓練場と侍従科。ジェシカとエブリンも休みは治療院でしょう?」
「あそこはまぁ……ダンジョン側がたまに修羅場になりますからね……」
すっかり魔導開発のおっさんは忘れ去られ、雑談へと移行していた。
「治療院は病院として……じじゅうか?」
「10歳から15歳が通う學園にある執事と侍を育てる學科ね」
「おぉー……メイドさん育學校があるんだ」
「立派な職業だもの。10から15の學園は専門學校よ。お城や貴族の家で働く文を育てる経済法科。騎士や冒険者を目指す者が通う戦闘科。生産スキル系統を學ぶ職業科ね。侍従科も《奉仕學》があるし職業科。5年間徹底的にほぼ実戦で學ぶからかなりの練度ね」
「學園は1個だけ?」
「6から10が通う學園もあるわ。読み書き計算、更に歴史や地理、周辺國家の國際勢も軽くね。後は10から通う専門の見學もできる」
學園は一応年齢が決っているが、絶対ではない。大人でも通うことは可能である。
呑気に雑談中だか、こいつら貴族を投げ飛ばしている。その場にいる冒険者達からすれば『何でそんな余裕なの!?』である。
そこにやって來たのが支部長だ。
「お前達……早く國を出た方が良いんじゃないか?」
「え? 嫌よ。障害は全部なぎ倒していくから気にしないで良いわよ」
「『…………』」
言葉もない冒険者達であった。
リターン・トゥ・テラ
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