《悪魔の証明 R2》第156話 092 アカギ・エフ・セイレイ(1)

クレアスと僕、そしてクロミサは列車にそれぞれを揺られていた。

僕たちが乗る列車はラインハルト社私設警察の所有で、スカイブリッジ上での事故の処理をするためのものであるそうだ。

列車の仕様自が軍用に近いものであるらしいが、テロ事件を防ぐにしては、その機はスカイブリッジライナーと比べにならないほど末なもので、それに乗り対応に來た人數がふたりだけと心許なく、また、車両にはほとんど武らしきものは積まれていなかった。

當然僕は列車に乗り込んだ當初、これらのことを不自然に思った。

だが、同じ車両に乗り込んでいた私設警察のひとりナスルが、自分たちの派遣は名目上救出を目的としているように世間では思われているが、その目的は列車の仕様と同じく事故処理で、主に生存者をトウキョウ駅のプラットホームに連れ帰るためだけのものであるらしく、ナスルたちは僕たちを助けたが、本來であればそれらのことは一切考慮しないという話を教えてくれた。

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なぜそのようなことになっているのかは不思議だったが、おそらく人件費の関係、さらに起ってしまったことを元に戻すことは不可能であるという消極的な理由から造られた組織の決め事でそのような狀態になってしまっていることが、彼の言葉の節々からじ取れた。

列車に乗り込んでからすぐそのナスルから、本部に連絡が必要だからテロ事件の報を知る限り教えてしいという申し出があった。

だが、クレアスと僕は、一連の犯行を発生ベースで証言することしかしなかった。

ナスルたちに何か含みがあるわけではなく、列車に乗り込む前に私設警察へ伝えることをあらかじめ僕たちは取捨選択しており、基本的に起った事実のみを彼らに教え、スピキオの手帳の件については容はおろかその存在自も伏せることにしていた。

トゥルーマン教団、ラインハルト社などの関係まで報を持っていることを私設警察上層部に知られると、テロリストたちの家族に余計な被害が及ぶことや、自分たちも詮索の対象とされ、が危険に曬される可能があるとクレアスが判斷したからだ。

そのように告白することは、黒幕のトゥルーマン教団の思に乗るようで癪にったが、クレアスの想定はもっともだったこともあり、そのような欠落した報しか彼らに渡すことはできなかった。

僕たちから事件の大枠のみを聞かされたナスルは、特に怪しむことやさらに詳細を尋ねてくることもなく、それを本部に通達すると言い殘し、相棒のサニーが待つ列車の機関室へとまた戻っていった。

また、これはナスルが去るし前の話になるが、ナスルとサニーがクレアスの顔見知りであったことが判明した。

お互いに相手を思い出すことに時間がかかったが、ラインハルト社私設警察署で何度か顔を合わせたことがあるようだ。

ただ、會話自わしたことはなく、ナスルとはお互い顔を認識しているだけだという。

會話の最中、彼らは同僚だからといって特に親しみを込めるような素振りもなかったので、大人の世界とは冷たいものだと、彼らのやりとりを観察した僕は思った。

ナスルの去った後、クレアスにもうひとりのサニーとは仲がいいのかと尋ねたのだが、組織での遊関係の気薄さを証明するかのように、しだけしか知らないとの一言だけが返ってきた。

クレアスと彼らの関係はこのように必ずしも良好というわけではなかったが、実はこのふたりの私設警察たちが予定より早く來ていなかったら、もしかすると僕たちの命はなかった可能があった。

僕たちがナスルたちに連れられて外に出た後、どこかに仕掛けられていた弾により六號車は寢臺車もろとも破された。後し六號車を後にするタイミングがずれていたら、もちろん幽霊もどきであるクロミサは除くが、僕とクレアスは発に巻き込まれていたことだろう。

そして、すべての車両が破されたことにより、ARKが犯行を実行したという証拠は、僕たちの証言、ショットガンとショットガン男の死、さらに鉄橋に存在する死以外何も存在しなくなった。

エリシナの死、アルフレッドの死。フリッツ、シャノンの死も、テロリストたちの拳銃も、それに付著した指紋も。おそらく存在していたと思われるテロに関する計畫書も、その風の中へと消えた。

テロリストであるショットガン男の死が殘っていることが唯一の救いとはいえるかもしれないが、そこから事件の真相にたどり著くことは難しいように思える。

おそらくスカイブリッジライナーを破したのはフリッツたちで、殘りの車両を葬り去った理由は証拠を隠滅するために他ならないはずだ。

そのために彼らは用意周到に準備をしてきたはずで、それを鑑みればショットガン男が証拠のようなものをにつけているとはとても思えない。

このような何もかもが不十分な狀態から、政府や私設警察はARKの実態に近づくことはできるのだろうか。

煙立ち昇る車両の殘骸を眺めながら、その時の僕はそう訝った。

そして、現場から離れある程度冷靜になった今となっては、それはほぼ不可能であろうと確信に近い心境となっている。

僕たちが例えスピキオの手帳の報を教えたところで、おそらく何も解決しない。

そもそも、政府は頼りなく、もう片方の私設警察はARKと関係の深いラインハルト社の傘下組織だ。

本気で行を起こすのかという疑問もあるし、例え調査に挑んだとしても、政府を始めとした関係各所に有益な報を共有する可能は低いように思える

今回のテロがARKの犯行であると世間に周知されはするだろうが、今後その実態が解明されることは永遠にないはずだ。

つまり、テロはそう遠くない未來にまた発生し、同じような悲劇が繰り返されるということになる。

そう考えると、六號車で僕とクロミサが暴いたすべてが灰燼と化したじがして、鬱とした気分になった。

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