《悪魔の証明 R2》第157話 092 アカギ・エフ・セイレイ(2)

クロミサへと目を移した。

現在、彼は僕とクレアスの後ろの席に座って、ぼんやりと窓の外を眺めている。

てっきり鉄橋の上でお別れをすると思っていたのだが、クロミサはそのまま僕たちと一緒に私設警察の列車に乗り込んできた。

が僕に告げた條件がその通りだとすると、空を飛んだりして移できるわけではなく、すり抜けることや明であること以外はほとんど僕たち人間と同じであるはずで、帰路に著くため列車に乗ること自は特に不自然さをじなかった。

「クロミサ、ちょっといいかな」

クロミサに向け、そう呼びかけた。

突然僕がひとりで話し始めたように思ったのか、クレアスが何事かと眉を顰める。彼にはクロミサが見えていないのだから、ある意味當然の反応といえるのかもしれない。

「お話があります、クレアスさん」

今度は、クレアスに聲をかけた。

し迷ったが、クロミサの存在をクレアスに伝えることにした。

僕とエリシナの論戦を知っているクレアスは、後でいろいろな疑問を持つだろうから、今教えておく必要があると判斷したからだ。

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「ああ、それはいいけど。きみはいったい誰に話しかけているんだ? そういえば、六號車でもそんなことが……」

クレアスが怪訝な口調で尋ねてきた。

「クレアスさん。僕がなぜエリシナさんやアルフレッドとあのようなやりとりをできたのか、今から説明することでわかって頂けるかと思います」

回答する前に、そう斷りをれた。

「自分で考えたんじゃなかったのか?」

すぐにクレアスが確認してくる。

「ええ、半分くらいは。それで、クロミサは……」

とそれに呼応するかのように、クロミサの説明を始めようとした。

だが、どのように伝えようかとすぐに頭を悩ませることになった。

下手をすると、僕がテロ事件に巻き込まれたショックで頭がおかしくなったと勘違いされてしまう。

それでなくても、超常現象詐欺が世に蔓延る中で、証拠もなしにそのような存在がいるというような発言をすると、クレアスにどう思われるかわからない。

結局、クレアスの訝る目が僕に向く最中思いついた唯一の方法は、クロミサにそれを実演させることだった。

何か新興宗教の手先のようなやり口で多分に気が引けたが、この際仕方がない。

の説明を始めた當初、クレアスはまったく信じるような素振りは見せなかった。

その後、僕の指示通りにクロミサがマグカップなどのかしたりしたが、クレアスにはただいているように見えているだけだったこともあったせいか、それは手品だろうと力なく笑うだけ。

「クレアスさん。狀況をよく考えてください。僕がそのようなことをやる理由はありませんよね」

注意するような言葉が、思わず口をついた。

これに対し彼が見せた反応は、失笑を口かららしつつ肩をすくめるだけだった。

エリシナの死がよほど堪えているのだろうか。正常な判斷能力を若干失っているのかもしれない。

その様子を見た僕は、そう思った。

明らかに理的に不可能なことが彼の目の前で起こっており、通常の狀態であれば手品やマジックの類ではないことはわかるはずだ。

「仕方がありませんね。では、もうし派手にやってもらいます」

そう宣言してから、クロミサにさらに到底超能力や手品では目にかかれないような現象を起こすよう要請した。

クロミサはすぐに部屋中のあらゆるかし始める。

これを見たクレアスの表は、一変した。

それからクロミサは何度もそのような現象を起こすと、やがてクレアスはクロミサの存在を完全に信じるようになった。

「アカギ君。それではこれを……」

僕を通して、クロミサに々な振る舞いを行うよう依頼してくる。

クロミサが言われた通りのことを行うと、彼はその都度驚きの聲を上げた。

しばらく質問なども含めそのようなやりとりをクロミサと続けていたが、やがて疲れがきたのかクレアスはし休憩するといって黙り込んでしまった。

テロ事件のことがあった上でのこのクロミサの存在。彼にも頭を整理する時間が必要であるということなのだろう。

その後、特にクロミサも話しかけてこなかったので、駅に到著するまで僕はスピキオの手帳を読み込んだ。

スピキオの手帳には、トゥルーマン教団、ARK、ラインハルト社について、そしてこのトライアングルの関係についての報が詳細に書き込まれていた。

他にはARKがトゥルーマン教団によって造られた実在しない組織であること、エリシナやフリッツのようなテロリストがどのようにして架空テロ組織にい込まれるのかということなどトゥルーマン教団青年活部の活実態も記載されていた。

その手帳の中にはスピキオの見解も多數書かれており、そのほとんどがもっとも問題である――パイプラインのトゥルーマン教団をどうにかしないとテロは撲滅できないといったじのことだった。

結局、書かれている容があまりにも膨大だったので、トウキョウ駅に到著するまでに手帳のすべては読み切れなかった。

ようやく列車はトウキョウ駅のプラットホームに停車した。

「著きましたね、クレアスさん」

僕は背もたれにを沈めていたクレアスにそう聲をかけた。

「ああ、そうだな。用意をしよう」

クレアスはそう言葉を返してくると、支度を始めた。

そして、僕が手帳を鞄にしまい込んだタイミングで、

「クレアスさん、アカギ君。行くぞ」

と言いながら、ナスルが車両にってきた。

そのまま僕たちを連れ立って、列車の出口へと向かう。

ドアが開くと、ひんやりとした空気が頬に吹きつけてきた。

その風をじた僕は、ようやく通常の世界に戻ってきたことを実した。

こうして、僕たちは久々に日本の地へと降り立った。

プラットホームには事件を嗅ぎ付けたのであろうマスコミが大挙して押し寄せていたが、僕たちは一呼吸の間もなく、ナスルたちにより駅員室へと隔離された。

駅員室からそのまま関係者用の出り口から外へ通り抜けたので、僕たちがインタビューなどに答えることはなかった。

トウキョウ駅の広々としたエントランスを出ると、すぐ近くにあったロータリーにラインハルト社私設警察仕様のパトカーが止まっていた。

ナスルにそのパトカーに搭乗するよう促されて、僕とクレアスのふたりは車へと乗り込んだ。

パトカーはすぐに発進して、駅の敷地から國道へとっていった。

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